美術部の部室には、いつも通り甘い香りが漂っていた。部屋に差すオレンジが白いキャンバスを彩る。「もう描けない」と、言い終わらないうちに、頬に鋭い痛みが走った。悲しみか、怒りか、不思議な表情で走り去った彼女が開けた扉から冷気が入る。凍えた体と、ひっぱたかれた頬に、ココアが良く染みた。

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