論文から学ぼう!疲れない生き方。心も体も健康な高齢者が実践している方法。
寝てもとれない疲れ
みなさんは疲れとどう付き合っていますか。わたしはひどく疲れているときには,はやく仕事を切り上げて寝てしまったり,次の朝もぎりぎりまで寝たりして,睡眠時間をとろうとしていますが,なかなか疲れはとれません。私のような疲れへの対処方法は効果がないのかもしれません。
みなさんはどうやって疲れと付き合っていますか?
シルバー人材センターで働く高齢者 224人を対象にした以下の研究が,その答えになるかもしれません。
森下・渡辺・長田 (2021) 論文で考えよう
森下・渡辺・長田 (2021) が日本公衆衛生雑誌に発表した論文「シルバー人材センター会員における屋外作業時の疲労対処行動:運動機能と認知機能の類型による比較」の内容を以下紹介していきます。
何を調べた?
今後も高齢者が働く機会が増えていくでしょう。その際,高齢者が安全に元気にはたらきつづけるためには,どのような日常の習慣や工夫が有効なのでしょうか。森下・渡辺・長田 (2021) たちはそのことを調べようと次のような調査を行いました。
どうやって調べた?
森下・渡辺・長田 (2021) たちはシルバー人材センターで働く高齢者224 人の運動機能や認知機能を測定しました。測定方法は自分で質問紙に記入するタイプのものです。例えば,運動機能を測定するための項目にはこんなものがあります。
階段をあがったり,降りたりできる
水がいっぱい入ったバケツを持ち運びできる
ものにつかまらないで,つま先立ちができる
歳をとってもこんなふうな機能がうしなわれないでいたらですね。みなさんはできますか?
また,認知機能を測定するための項目にはこんなのがあります。
貯金の出し入れや,家賃や公共料金の支払いは一人でできますか
一人で買い物に行けますか
バスや電車,自家用車等を使って一人でが既出できますか
自分で掃除機やほうきを使って掃除ができますか
これらもいつまでもできるようにしておきたいものです。
森下・渡辺・長田 (2021) は上の運動機能,認知機能の高低によって224 名を4つにわけました。運動機能が高く認知機能も高いグループ,運動機能は高いが認知機能は低いグループ,運動機能は低いが認知機能が高いグループ,運動機能も認知機能も低いグループの4つのグループです。
運動機能【高】ー認知機能【高】
運動機能【高】ー認知機能【低】
運動機能【低】ー認知機能【高】
運動機能【低】ー認知機能【低】
そして,それぞれのグループから10名づつお願いして,疲れに対して日頃している対処方法をインタビューしました。
何がわかった?
インタビューすることで,働く高齢者が日頃疲れたときにしている対処法が次のようにわかりました。
気温対策
睡眠
気分転換・リラックス
運動
作業負荷の軽減
痛みへの対処
休憩
栄養・食事
仕事との向き合いかた
どのグループも休憩することを疲れへの対処方法としてあげていました。例えば,運動機能も認知機能のひくいひとびとも,「仕事の前日は早く寝るようにしています」と休憩の大切さを述べています。運動機能の低いひとびとも休憩の大切さを述べています。特に睡眠の習慣について述べており,「熟睡するようにしていますね」と毎日の睡眠の質に気をつけているのがわかります。認知機能の低いひとびとも休憩の大切さを述べていて,特に仕事の後の昼寝を挙げています。「昼寝はしますね。それが疲労回復ですかね」という具合にです。3つのグループに共通しているのは,仕事の前後で疲れへの対処をしているという点です。
運動機能の認知機能も高いひとびと。彼らも休憩の大切さを述べていますが,それは上で述べた3つのグループのひとびとはすこしちがいます。なにがちがうかといえば,いつ疲れない工夫をしているかと言う点です。彼らは「定期的に休む」ことを大切にしていました。具体的な声として,「1.5時間に1回は必ず休憩をとっている」というものがありました。運動機能も認知機能も高い人々は疲れている疲れていないにかかわらずある時間,90分間間隔のように短いスパンで休むようにしているようです。疲れない工夫を仕事中にしていると言えます。一方,運動機能や認知機能のいずれかが低いひとびとは仕事の前後に疲れない工夫をしています。
まとめ
この論文からわかることは,仕事中,疲れる前にきちんと休憩をとり,疲れてしまわないようする仕組みを作っておくことが,結局は労働するわたしたちの運動機能や認知機能にもよい影響を与えるということです。
定年が70歳。70歳いや70歳をすぎてもはたらく時代になっています。いつまでも運動機能や認知機能を保って元気に働くためにも,わたしたちの働き方にひと工夫つけ加えてみませんか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?