見出し画像

The New Yorkerのある記事より

ある記事の紹介

▼"The New Yorker" 誌による次のような記事紹介のツイートがありました。

Across the city, Black and Latino New Yorkers are dying at the twice the rate of their white neighbors, partly due to the fact that most of the city’s essential workers are African-American and Latinos.
(ニューヨーク市のあちこちで,黒人やラテン系のニューヨーカーたちが白人の2倍の割合で亡くなりつつある。これは一つには,市のエッセンシャル・ワーカー[欠かすことができない労働者]の大半がアフリカ系アメリカ人やラテン系の人々であるという事実によるものである。)

▼紹介されている記事はこちらです。

▼確かに,3年前にマンハッタンを訪れた時,宿泊したホテルのフロントの従業員はみな白人でしたが,清掃係は全員が黒人かラテン系でした。また,ホテルの屋上のバーの従業員もラテン系でした。街の清掃員も同じでした。

マンハッタンでの体験

▼ちなみに,ホテルで清掃係の人にチップを渡す際,毎日,このようにうさまるの封筒に入れて,さらにうさまるのメモ用紙にメッセージを書いて部屋に置いていました(うさまる世界制覇を目指す布教活動w)。

画像1

▼これに対して,ある日,次のような返信のメモが置かれていました。

画像2

"jajajaja.... Very cute targets!! Thanks for the gift!!!"

▼"jajajaja"はスペイン語で笑い声(はははは)を表す表現です。そこからおそらくこの手紙の主はラテン系の人なのだろうと推測できるのですが,問題は "target" の意味でした。"Very cute targets" と述べていることから,おそらく,うさまるのことを指しているのだろうと思ったのですが,「目標」とか「的(まと)」ではしっくりきません。友人から,「"target" をスペイン語にすると "objetivo" となるから,そういう意味で使っているのではないか」とアドバイスをもらいました。

▼スペイン語の objetivo の日本語訳としては,「目標」「目当て」が多いと思いますが,object(対象物)の意味として用いているとしたら,"Very cute targets" は「とてもかわいい物だね」という意味なのかもしれません。

エッセンシャル・ワーカーとは

▼さて,冒頭のツイートの話に戻りますが,あのツイートの中に "essential workers" という表現がありました。これは,清掃,飲食,医療など,生活に欠かすことができない仕事に従事する人々を示す言葉で,"key worker" "critical worker" "frontline worker" とも呼ばれています。

▼この用語が示す職業は多岐に渡りますが,2001年3月21日付の "The Guardian" では,次のように述べられています。

And what defines a "key worker"? We know some politicians mean the police, nurses, possibly teachers and, on a good day, maybe even social workers. However, few, if any, would include heath care assistants, support workers, cleaners and the rest of the hidden staff who play a crucial role in the social care team and who really make the services tick.
(そして,「キー・ワーカー」を定義するものは何か。政治家の中には,警察官,看護し,おそらく教師,そして,機嫌のいい時には,ひよっとしたらソーシャルワーカーさえも意味しているものがいることを私たちは知っている。しかし,医療アシスタント,介護労働者,清掃員,そしてソーシャルケアチームの中で重要な役割を果たし,サービスを本当に時計のように動かしている隠れたスタッフの残りの人々を含めるであろう政治家は,たとえいるとしてもほとんどいないであろう。)
( https://www.theguardian.com/society/2001/mar/21/comment1 )

▼既に20年近く前にこうした問題提起がなされていましたが,今回,コロナウィルスのパンデミックによる外出自粛により,このカテゴライズが再び強く意識されるようになりました。外出することなく自宅でリモートワークできるホワイトカラー層に対して,現場で人と接して働かざるを得ないエッセンシャル・ワーカーの人々の間でコロナウイルスに感染する患者が増大したためです。

▼そして,冒頭の記事にあるように,エッセンシャル・ワーカーとして働く人の中に少なからぬ割合でアフリカ系・ラテン系の人々が含まれている,ということで,彼らの間でコロナに感染した人が増加している,という問題があります。

▼日本の場合,人種や民族について単一性があるように思えるため,こうした格差が問題となる場合,経済格差や地域格差がクローズアップされますが,アメリカのように多種多様な人種・民族が大勢を占める地域では,そうした人種・民族による格差がいっそう浮き彫りになるのでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?