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You can make it!! 時事英語【#032 過去形助動詞の用法】

◆このコーナーでは,英単語や熟語だけでなく文法に関する解説も時々行いました。今回のテーマは「過去形助動詞の用法」です。

▼過去形の助動詞用法の原則
・基本は「現実から遠い」⇒「可能性が低い・実現の見込みが比較的少ない」
[1] 時制の一致(過去から見た未来)
 ex) He said that he would go there alone.
 (彼はそこに一人で行くつもりだと言った。)
[2] 丁寧表現(控えめな表現)
 ex) Would you like some coffee?
 (コーヒーはいかがですか?)
[3] 仮定法(想像・空想・妄想の世界)
 ex) If I were bird, I would fly to you.
 (私が鳥ならば君のもとに飛んでいくのに。)
 ex) I’m so hungry that I could eat a horse.
 (私はとてもお腹がすいていて,馬一頭でも食べられるほどだ。)

◆過去形の助動詞の用法は非常に複雑で難しく,それぞれの助動詞によって用法も変わるために容易に一般化しづらいものですが,あえて原則を言えば「可能性が低い・実現の見込みが比較的少ない」と理解することができるでしょう。そもそも過去時制じたいが「現在からは遠く離れている」ことを表すため,そこから「現実と離れている」⇒「想念の世界(空想・妄想・想像)の話」を表すのに過去時制が使われていると考えることができます。

◆また,英語では,話者や筆者が「今,自分はどのような気持ちで述べて(書いて)いるのか」が,動詞にあらわれると考えられます。これを文法用語では「法(mood)」といいます。英語には,大きく分けて3つの法があります。

▼3つの「法」
[1] 直説法(叙実法)「私は今,事実を述べている」という気持ち
[2] 命令法「私は今,命令を述べている」という気持ち
[3] 仮定法(叙想法・仮想法)「私は今,事実と切り離した〈想い〉(想像・空想・妄想)を述べている」という気持ち
⇒時制を過去にずらすことで「現実味の無さ」を表す

◆たとえば,上の例文を見てみましょう。
ex) If I were bird, I would fly to you.
(私が鳥ならば君のもとに飛んでいくのに。)
⇒時制を過去にすることで,「事実・現実」ではない,満たされぬ「想い」を述べています。もしこれが "I will fly to you." だと「君のもとに飛んでいくよ」という「事実」を述べていることになってしまいます。

ex) I’m so hungry that I could eat a horse.
(私はとてもお腹がすいていて,馬一頭でも食べられるほどだ。)
⇒ "I'm so hungry"(お腹がすいている)のは事実ですから現在時制で表現されていますが,"I could eat a horse" は現実離れした「妄想」の話ですね。だから過去形の could が使われています。間違えて「(過去に)馬を一頭食べることができた」と訳さぬようにしてください。

◆「馬一頭」の話は,日本語で言えば「お腹がすいて死にそうだ」に相当すると言えるでしょう。「お腹がすいて死にそうだ」と言われた時,「お腹がすいている」のは「事実」だと受け止めますが,「死にそうだ」というのは事実ではない,と解釈するはずです。もし「死にそうだ」が事実ならすぐに救急車を呼ばねばなりません。日本語の場合,このようにして「ああ,これは事実だな。これは空想だな」と聞き手が解釈しなくてはなりませんが,英語の場合,送り手が過去形を使うことで現実・事実と空想・想像を区別して表していると言えます

◆また,「丁寧表現」で過去形の助動詞が用いられるのは,現在形を用いると表現がストレートすぎて相手に対して失礼に当たる可能性があるため,控えめにする(「可能性は低いかもしれませんが,もしよろしければ…」という感じ)ために過去形の助動詞が用いられている,と考えることができます(また,丁寧表現も「想い」を述べている,という点で仮定法の一種であると考えることができます)。

◆このように,過去形の助動詞を見た時にはそれが「時制の一致」によるものなのか,「想い(想像・空想・妄想)」を述べるためのものなのかを考える必要があります。

[032-1] A French judge announced in May 2009 that he would launch a landmark investigation into whether President Obiang and two other African leaders plundered state coffers to buy luxury homes and cars in France.
(オビアン大統領とアフリカの他の二人の指導者たちがフランスで豪華な家と車を買うために国のコーヒーを横領したかどうかについて重大な調査を行うと、あるフランス人の判事が2009年5月に発表した。)
[出典]http://www.bbc.com/news/world-africa-13317176
□□ judge 判事,裁判官
□□ announce that S + V~ SがV~だと発表する
□□ launch O Oを始める,Oを行う
□□ landmark 重大な,目印(となる)
□□ investigation into A Aに対する調査
□□ whether S + V~ SがV~かどうか
□□ plunder O Oを横領する
□□ luxury 贅沢(な),豪華(な)

⇒"he would launch a landmark investigation" の would は announced(発表した)という過去の時点から見た未来を表しています。これは「時制の一致」によるものです。

[032-2] Some 2,440 Chinese students taking a national exam have been caught using hightech cheating gear that wouldn't be out of place in a spy film.
(国家試験を受験していたおよそ2,440名の中国人の学生が、スパイ映画の中でなら場違いではないであろうハイテクのカンニング装置を使っていたところを捕えられた。)
[出典]http://edition.cnn.com/2014/10/28/world/asia/china-exam-cheats/
□□ catch O doing Oが~しているところを捕まえる
□□ cheating カンニング(の)
□□ gear 装置
□□ out of place 場違いな
□□ spy film スパイ映画

⇒ "hat wouldn't be out of place in a spy film" の wouldn't は「スパイ映画の中でならば場違いではないだろう」という筆者の「想像」を述べているものです。ですからこれは仮定法の wouldn't と言えます。

[032-3] Seventeen people go back in time to live life as it would have been in 1525 during the Tudor Era.
(17人の人々がテューダー朝時代の1525年にそうであったであろうような暮らしを送るために時代をさかのぼった。)
[出典]http://www.bbc.co.uk/programmes/p02b4zh3
□□ go back in time 時代をさかのぼる
□□ the Tudor Era テューダー朝時代
*テューダー朝は,イングランド王国(1485-1603)とアイルランド王国(1541-1603)の王朝。

⇒ "as it would have been in 1525 during the Tudor Era" の would も「テューダー朝時代だとしたらそれ(=暮らし)はこうであっただろう」という「想像」を述べています。よってこれも仮定法の would です。

▼032の解説は以上です。

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