「私の身体は奥が深い」 ~整体指導者はウイルス問題をどう見ているか~

風邪にはどんなウイルスがある?

コロナウイルスという名前を今回初めて聞いた人も多いと思いますが、風邪の症状を引き起こすウイルスは数百種類以上あります。数あるウイルスの中で最も多いのがライノウイルスやコロナウイルスで、1960年代に初めて発見されたコロナウイルスだけでも多くの種類がすでに存在しています。

・コロナウイルス自体は昔から存在している。
・今回の新型も肺炎を起こしやすいのは高齢者。
・高齢者、基礎疾患のある人が風邪をこじらせて肺炎を起こすことは今回のウイルスに限ったことではない。
・感染力が高く年齢問わず辛い症状が出る、死者も多いインフルエンザの方がよっぽど脅威ではないか。

だから安心しましょうと言いたいわけではありませんし、SARSコロナウイルスのような危険なものに変異する可能性もあるのだから、今のうちに拡大を食い止めるため努力しているわけですが、「新しい未知のウイルス」という表現に過剰に怯え、どの情報が本当かわからず混乱している人には一旦横になってマスクを外し瞑目、ゆっくり深呼吸しましょうとお伝えしたいところです。

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(↑画像クリックでインタビュー記事に飛びます)
クルーズ船告発で話題になった岩田健太郎氏が風邪の疑問に答える企画で、以前旧ブログでも紹介したことがあるのですが、整体の風邪の考え方がすでに頭に入っている人は、このインタビューを読んでも頭がすっきりしないのではないでしょうか。結局風邪は何もしなくてもそのうち治る、しんどかったら休んで寝てなさいということですし、風邪の原因、対策の良し悪しについてわかっていないことも多い。
「まだまだわからないことが多いということを骨身に沁みてわかっている」のが専門家とも言えますが、風邪は「上気道がウイルス感染して炎症を起こすこと。」の一言で説明できるほど単純なものでしょうか?

感染者と同じ空間に居てももらう人、もらわない人がいる。あらゆる空間にウイルスは存在しているが、風邪をひくのはだいたい年1〜2回です。汚い話ですが人ごみの中に出掛けて、帰宅後に顔じゅう触ってその手を舐める、鼻をほじくってその指を舐めたら必ず何かに感染するのか?風邪、インフルエンザに感染しても無症状が一番多いのはなぜなのか?同じ条件でも感染する時、しない時がある理由がいまいちわからないのです。

整体の風邪の考え方

風邪は万病のもとという言葉に脅かされて自然に経過することを忘れ、治さねば治らぬもののように思い込んで、風邪を引くような体の偏りを正すのだということを無視してしまうことはよくない。体を正し、生活を改め、経過を待つべきである。このようにすれば、風邪が体の掃除になり、安全弁のはたらきをもっていることが判るだろう。(風邪の効用/野口晴哉)

整体では風邪を病気と捉えるのではなく、体の疲労を取ってリセットする働きがある、風邪を引くこと自体が自然の整体法であると考えます。体が敏感であり、上手に風邪を経過させると体の偏りが修正され、脱皮するようにサッパリする。逆に治療に工夫し過ぎるとさらに偏りはひどくなり、そもそも体が鈍っている人は風邪がひけない。
「無病だと威張っていたらポックリ重い病気にやられてしまったという人が風邪に鈍い。」(野口晴哉)

体のバランスが乱れる原因、風邪の原因には様々なものがあります。

生活習慣やもともとの疲労傾向(体癖)からくる風邪
・食べ過ぎ、飲み過ぎなど消化器の疲れ
・目の疲れ、頭の疲れ・緊張
・体の冷え
・呼吸器の疲れ
・腎臓、泌尿器の疲れ

季節の影響からくる風邪
・春の風邪(排泄が滞ると引いて大掃除。下痢も多い)
・梅雨の風邪(湿気による泌尿器、呼吸の疲労で引く)
・夏の風邪(汗を冷房で冷やして引く)
・秋の風邪(冷え、泌尿器への負担増で引く)
・冬の風邪(乾燥、食べ過ぎ等で引く)

心理的要因からくる風邪
・引いたかもしれない、体調が悪くなるかもしれないという不安で引く
・不平不満(注目してほしい、面倒みてほしい)が溜まって引く
・人生の大きな節目に引く

ざっと挙げるだけでもこれだけの原因があり、体の偏りを修正するための引き方もあれば、ネガティブな気持ちが引き起こすよくない風邪もあります。食べ過ぎても引くし、季節の変わり目に衣替えするようにも引く、「今年の冬は風邪が流行る・流行っている」というニュースを見ただけで引くなど、どれもエビデンスはありませんが飛沫感染や接触感染の一言では説明できないほど、風邪は奥深いものとして考えています。
心理的な風邪は特に証明のしようがありませんが、学校に行きたくない子どもの発熱、下痢は検査しても異常はないが症状はたしかにある。人生を左右する試験を受けた後の風邪や、大きな仕事を終えた後の風邪などは体験したことがある人も多いかと思います。私も過去にカウンセリングを受けて自分と両親の関係の歪さに気づいた時や、今仕事しているアパートを契約した夜に高熱を出して寝込んでいます。

どれだけ手洗い、うがい、消毒をして気をつけていても上記のような原因で風邪を引いて体を調整する必要があれば引くし、何も気をつけなくても引く必要がなければ引かない。上気道のウイルス感染という結果だけでなく、「生きている人間の体、習慣、思考」を見れば、風邪をひくという行為が人間にとって必要なものだと実感します。

ウイルス恐怖症だった頃

10代半ばから20代半ばまで、症状は重くありませんでしたが強迫性障害に悩まされた経験があります。最初は嘔吐恐怖で、バイト中に急に具合が悪くなり、今まで自分や家族が吐いた時の映像がフラッシュバックし、それ以来吐くという言葉も見れない、ドラマや映画で吐くシーンを見るのが怖いので見れない、お酒も吐く可能性があるので飲めない、外で具合が悪くなると困るので外食もできないという状態がしばらく続きました。風邪を引いても吐く可能性があるので今度は風邪ウイルスが怖い、つり革・ドアノブが触れない、手洗いうがいを何度も行う、玄関に張り紙をして家族にも予防を徹底させる始末でした。

今振り返ると、人に迷惑をかけてはいけないという極度の緊張が嘔吐恐怖に繋がり、自分がこの世界に存在している感覚が薄いとか、存在する価値があるという感覚が薄かったために、自分とウイルスを区別して必死に自分を守り、確認していたように思います。手を洗い、水に触れることで自分の体がここにあるとはっきり確認できる。自分自身の病ではなく自分と世界との関係性の病であったように思います。その後信頼できるカウンセラーに出会い、整体に出会い、体を変えるための稽古を続けていく中で様々な不安が消えていったというか、忘れられるようになりました。体を変えるのに夢中になって、技術の上達に夢中になって、何に悩んで勉強し始めたのか忘れるという感じです。

ウイルスと戦わなくて良い

整体の考え方は野口晴哉の本を読んだだけでは身につきません。風邪の捉え方にしても、本で読んだだけの知識を子どもで試すというのは非常に危険なことです。実際に自分が風邪を引いた時に経過のさせ方を実践して「脱皮する感覚・スッキリしたという感覚」を味わって初めて身につくもので、自分の体に対する信頼もそうした体験を通して獲得できます。風邪を上手に経過させて体を信頼する。このような体験や、生活習慣と体の関係、季節と体の関係の知識の無さが今の社会の混乱だけでなく自己肯定感や、他者に対する信頼感にも関わってくるのだと思います。

高齢者、基礎疾患のない人が不安を煽るニュース、信ぴょう性のないSNSを見て恐れる。「感染しているかもしれない」から検査をしてほしいと問い合わせる。マスクなしで咳をしている人を見て殺意を抱く。必要なものが買い占められる。他人も、頼りない政府も誰も信じられない。

自分の体を信頼する体験がないと、ウイルスも怖いしそれを運ぶ人も怖くなる。自分を取り巻く世界すべてが敵になる。
ウイルスと闘うとか、感染させた・させられた、勝った・負けたという単純な二元論で語る世界から降りて、体に対する信頼を深め、確認する生き方を選んで私は随分生きやすくなりました。闘病するとか、病魔に襲われるなんていう表現の仕方も考えものです。

すべての人に整体の考え方を取り入れてほしいとは思いませんし、押し付けもしません。ただ、今混乱の中にいる人はウイルスの存在も、顕微鏡で拡大された忌まわしいウイルスの画像も、一度忘れてください。免疫が低いとか、高めるためにあれやれこれやれも無視してください。好きなことをして、好きな物を食べてください。身の回りを好きな物だらけにしてください。

「面白い考え方するじゃん」「昔から風邪は病気じゃないと思ってた」という人は、今度は体を使ってその面白さを味わい、その想いを確かなものにしてください。

2009年の新型インフルエンザがその後季節性のインフルエンザ同様の扱いになったように、今回のウイルスも普通の風邪として扱われ、普段の生活に戻ることを願います。

風邪の上手に経過させるための準備、方法など(ツイッターにアップしたセルフケア動画まとめ)

Q、風邪の効用に書いてあることをそのままやって良いか?
 
熱が出たら後頭部を温めるのが基本ですが、今は体が鈍っている人も多く、昔のやり方をそのまま行うと危険な場合があります。最初は必ず指導を受けに行き、体の状態を確認してもらうと良いです。その上で、基本的な風邪の経過のさせ方をまとめます(私のやり方も含まれます)。

・お味噌汁を5、6杯飲む(寝ている間に汗をかき、塩分も出ていくため先に摂っておきます)
・後頭部を蒸しタオルで温める。頭の真裏にある出っ張った骨の辺りを、蒸しタオルをできるだけ小さく畳んで局所的に温める。タオルが冷めたら温め直す、冷めたら温め直すを40分ほど繰り返す。
・お風呂に入る。入り方は、
1、普段の入浴温度より1度熱いお湯を溜める。(41度なら42度)
2、コップ1杯のお水を飲んでおく。
3、口にお水を含み、ぐちゅぐちゅ口の中でうがいしながら3分ほど首まで浸かる(お水と唾液を絡め続ける)。
4、お水を吐き出し、足は浸けたまま浴槽に腰掛け上半身を拭く。拭いている間にお湯の温度をさらに1度上げる。
5、温度が上がったらもう一度口にお水を含み、うがいしながら3分ほど浸かる。お水を吐き出し、お風呂を出る。出た後に飲みたいだけお水を飲む)。
・寝る。上がってから1時間ほど経ってから、体の火照りが収まってから寝てください。汗でパジャマが濡れたらすぐに着替えます。寝ている間に大量の汗をかいて、翌朝には体温が下がりサッパリしています。

Q、上手に風邪を経過させるための体作りは何があるか?
風邪を引くことは良いことだと言っても、体が鈍った状態で風邪を引くとこじらせる場合もあります。上手に風邪が経過できる敏感な体の状態とは、
1、背骨にしなやかさ、弾力があること。
2、丹田が充実していること。
3、頭や首にこわばりがないこと。
4、胸骨、肋骨にこわばりがないこと(深い呼吸ができる)。
5、腰、骨盤にこわばりがないこと。

などがありますので、まずはこの状態を作っていくことが重要となります。

1、しなやかな背骨作り
中でも重要な背骨の弾力ですが、整体の活元運動をやったことがない方はヨガのキャット&ドッグや、禅密気功などで細かく動かしていくことから始めましょう。背骨の弾力は目の疲れや食生活の乱れなど生活習慣の影響も大きいので、スマホの使い過ぎをやめる、食べ過ぎをやめることが根本的な調整法です。禅密気功動画はこちら

2、丹田を充実させる
お臍から指3本ほど下の場所、丹田には生命力が現れます。指で押した時も力強さがあり、指を離した時もバイーンと跳ね返ってくる強さがあると良いです。整体の呼吸法である深息法を行うと丹田が充実します。
深息法の動画はこちら

3、頭、首の緊張を取る
頭や首の緊張は頭の使い過ぎだけでなく、目の疲れの影響も大きく受けます。目の疲れを取ると頭の緊張が和らぎます。
目の疲れを取る簡単な方法、動画はこちら

4、胸部の可動性を高める
胸の固さは肺炎とダイレクトに関連しますので、普段からよく胸を動かして肋骨の可動性を高めておくことが重要です。
動画は肩甲骨の運動として紹介していますが、肋骨を引っ張り上げるような気持ちで腕を回してください。腕回し、動画はこちら
鳩尾のこわばりを弛めて呼吸を深くする、邪気の吐出動画はこちら

5、腰に弾力をつける
腰、特に腰椎1番(頭の緊張とリンク)、3番(腎臓とリンク)が固いと風邪の経過を妨げます。また、腰は頭、腎臓だけでなく消化器や腕の疲れなどの影響でも固くなりますので、原因に応じた調整も必要となります。
腰の弾力回復に良い体操、動画はこちら(捻りの運動)とこちら(食べ過ぎ体操)

Q、マスク、手洗いうがいはした方が良いか?
マスクをすると呼吸が浅くなりますし、呼吸が浅くなったことやゴムの締め付けで頭痛がする人もいます。マスクをつけることで「私の周りにはウイルスで溢れている、常に身を脅かされている」という暗示をかけることにもなります。自分自身咳が出ている時はつけてください。手洗いうがいは先にも書いたようにウイルスの除去よりも体を整えること考えた方が良いです。整えていても引く時は引きますから、その時は風邪を利用して元気になろうくらいの気持ちでいると良いです。

整体は「自分の体はお医者さんに管理してほしい」と思う人には役に立ちません。「自分の足で立ちたい」と思う人にとっては宝の宝庫です。風邪、ウイルスについて考えるのをきっかけに、誰にも奪われることのない技術と知識を身につけていただければと思います。


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