[良い資料!]科学技術振興機「研究力強化のための大学・国研における研究システムの国際ベンチマーク(2019)」に涙。

これは日本と欧米の現状を理解するのにとても良い資料です。少し感じたことを抜粋とコメントとしてメモしておきます。イタリアの大学院に数ヶ月滞在している現状の経験と感覚ベースの、あくまでも個人的見解です。

欧米各国の研究環境概要

『欧米各国では、国籍を問わず、優秀な若手研究者を世界中から集め、手厚い研究サポートを施して卓越した研究成果を上げてもらう一方、多くの研究ポストを任期付きにすることで、積極的に人材を循環させ、研究ネットワークを構築するとともに組織をフレッシュに保つという戦略がある(1)。博士課程の学生へのサポートも手厚いため、優秀な博士課程の学生を集めることが、優秀な若手研究者を供給する基盤となっている(2)。』

▶  (1) イタリアは循環は弱いらしい。かなり閉鎖的な側面がある。ただし、それは分かっていて、そのことが国際的な評価を下げていると自覚していた。
▶ (2) イタリアでもこれはそう。サポートも手厚く、給料をもらっているため、プロフェッショナルな意識も博士課程のうちから育っているように思う。(正直、企業の新卒数年目の若手社員よりも、よっぽど優秀で仕事もできる人たちが多い印象。当然、イタリア人だけど全員流暢な英語ですべてをこなす。)

『博士課程の学生の募集は多くの場合、国を問わず、英語で募集が行われ、応募書類も英語であるため、世界中から該当研究テーマに意欲のある優秀な学生から応募がある。(3)』

▶ これは本当に同意。博士課程は、英語にしたほうがいい。すべて英語。英語以外の博士課程はなしにしていいのではないかと思うくらい。だって、博士課程の目的は『知識を生み出すこと』。そして、その知識は、世界的な知の体系に基づくもののハズであって、そうでない時点で、日本の知識社会はすでにグローバルな文脈からは鎖国していてガラパゴス化していくのでは。
▶ 日本の事情を研究するんだから、いいんですということならそれでも良いとは思います。でもイタリアのソーシャルサイエンスでさえ、数年前までは『イタリア語で本を出版すること』が最高のステータスだったのが、今では『英語でジャーナルに投稿すること』に変わっている。これが意味することは明らかですね。

日本の研究環境概要

『一方、日本は博士課程に在籍する学生への研究奨励金(給与)が極めて限定的であることに加え、博士課程修了後の就職の展望は極めて暗い。博士号を取得したものを受け入れる民間企業の数は極めて少なく、任期付きのポストドクターと呼ばれる研究員になるしかないが、そのポスドクのポスト数も十分ではないため、博士課程へ進学する学生は年々減少しており、十数年後には若手の日本人研究者がほとんどいなくなってもおかしくない状況である。』

▶ これ、日本は欧米との差が激しすぎる。むしろ、もはやこんな状況なのなら、博士課程自体をいっその事なくしちゃえばいいんじゃないか。育てる気がないんだったら。こんな状況で、博士課程に行きたい、研究者になりたいって思う人が増える訳がない。研究をそんなに軽視するなら、いっそのこと日本は、博士課程はやりませんって言い切ればいいのでは?

▶ そうじゃなかったら、ちゃんと育てる環境を整えたほうがよいよね。欧米と比べて恥ずかしいとか、そういう理由じゃない。真剣に、この状態で、研究者が育つとは思えない。そして、良い研究ができるとも思えない。世界に胸張って、日本の研究は素晴らしいんですって、そう言えますか?

ちょっと長い資料なので、このペースで涙してると書ききれないので、一旦ここまでにします。でも、本当にこういう資料があることは、少しでも救いがありそうな予感。前向きに議論が進むことを祈るばかりです。

Ciao Grazie!


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