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No.67  「HOYA』  経営者の魅力を語る

普段は見かけない親子連れが早朝の通勤電車に何組か乗っていた。きっと私立のお受験に向かうのだろう。「朝早くから大変だなあ」と、わたしも小学6年生の娘を持つにも関わらず他人事のように独りごちる。ウチの場合は始めから地元の中学校に進む予定なので実際に他人事だ。

HOYAの鈴木洋CEOは実に魅力的な経営者である。いつでもどこでも自然体。とにかく抜け感が半端ない。例えば、日本電産の永守会長が剛の人ならば、鈴木さんは間違いなく柔の人だ。しなやかでゆったりしている。威圧感や悲壮感は一切ない。終始ふざけているように見えて、四六時中HOYAの成長を考えている生真面目さも感じ取れるような不思議な人物だ。実際、経営者としての才覚も確かであることは言うまでもない。浮沈の激しい電機・精密業界のなかで、HOYAの経常利益は2010年3月期の578億円から2019年3月期1,447億円へ10年近くで2.5倍に成長した。

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経営のセンスはもちろん、笑いのセンスにも優れる。「いつも情報・通信事業の概況を説明する執行役の池田さんが、お子さんのお受験面接で今日はお休みなもんだから、すべての事業についてわたしから説明させてもらおうと思いますんで」。実際のところ、鈴木さんの話のほうが圧倒的に面白いので、むしろ投資家・アナリストも大歓迎といった雰囲気だ。

人気の理由は巧みな話術もあるが、何より事業の状況を詳しく説明してくれることにある。良いことも、悪いことも、ビジネスの実相をそれこそ自然体で話してくれるところがいい。あまりにぶっちゃけすぎるので、時には事務局が途中で制止することもあるほどだ。「中国のメーカーが有機ELの立ち上げに苦労してるんですよね。歩留まりがなかなか上がらないらしい。だから、FPD(フラットパネルディスプレイ)用マスク(回路を転写するための原板)がよく出る。生産性を上げるためにマスクをたくさん使ってくれるから」。「消費増税前の駆け込み需要の反動はコンタクトレンズでざっくり40億円くらいですかね。まあ、お客さんは半年から一年分くらいを買いだめした感じだからね。思ったよりもダラダラと影響が続いている感じです」。

みずからの事業に自信があるからこそ、おそらくすべてをさらけ出せるのだろう。情報開示に対するトップの姿勢がオープンだと、社内における部下から上司への報告もきっと風通しが良いのではないかと想像する。良い情報も悪い情報も、マネジメントの耳にちゃんと届く。だからこそ、正しい意思決定を迅速に下すことができ、他社に先んじてアクションを起こすこともできる。鈴木さんの自然体はHOYAの強さを体現していると感じた。

一方で、質問するアナリストのセンスのなさには参った。「今回の説明会での最大のサプライズは、執行役の池田さんに小さなお子さんがいらっしゃるとわかったことです」。会社と会場を笑わせるつもりが全力で思い切りスベっていた。「いやあ、ああ見えて意外に若いのよ、池田さんは」。鈴木さんの臨機応変な返しに救われる。会社側に気を遣わせるんじゃない。心の中で毒づいた。

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金融機関で企業を分析して22年。 性格的にはひきこもりの人見知り。 そんな私が考える企業のこと、人間のこと、みなさんに広く知っていただけたら幸いです。 よろしくお願いします。