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No.110 『シャープ』 企業によるTwitter運営の好事例

シャープの公式Twitterがとても面白いことをご存知ですか?

(その1)マスクの販売を開始したとき
「あいにく家電は、売るほどたくさんあります」

(その2)マスクの抽選販売に約470万人の応募があったと発表したとき
「家電メーカーのシャープ、107年の歴史で最大のヒット商品がマスクになってしまいそうな感じ、複雑な気持ち」

(その3)Twitterのフォロワーが80万人を突破したとき
「80万フォロワーさんの瞬間を見逃したので、始末書を書きました」「原因は私の在宅勤務とステイホームです」「フォローしているからといって、シャープ製品を買う必要はありません」

コミュニケーション戦略としてTwitterを活用する企業が増えているなかで、シャープの公式Twitter「@SHARP_JP」は、抜きん出たエンゲージメントで独自の存在感を放っています。

いわゆる『中の人』は誰なのか、気になって調べてみると、シャープマーケティングジャパンのマーケティング統括部・デジタルマーケティング部に在籍する山本隆博さんという方です。いかにも電通や博報堂に勤めていそうな「柔らかい」イメージの男性ですが、ものづくり企業であるシャープの広告宣伝に長く関わってきた社員のようですね。2011年からTwitterで中の人を始めたというから歴史もかなり長いといえます。

80万人を超えるフォロワー数をシャープが獲得しているのは、ひとえに山本さんの才能と努力の掛け算にほかならないでしょう。シャープをこよなく愛しながらも、決して溺愛することなく適度な距離感を保ち、ともするとジメッとしがちな自虐ネタを爽やかなユーモアへ見事に昇華させています。山本さんが持つ生まれながらのセンスはもちろんですが、Twitterの大海のなかでユーザーとのコールアンドレスポンスを愚直に重ねてきた努力の結果ともいえるのではないでしょうか。

Twitterの成功がシャープのブランドイメージをどれだけ向上させたことでしょう。リストラ好きの経営者が「当社の財産は人である」と語れば偽善の匂いしかしませんが、大企業といえども企業価値を高めるのはやっぱり人なのだなと改めて感じました。

一方で、公式Twitterがイケていない企業はキリンビバレッジではないかと思います。「商品情報以外にもゆる〜くつぶやきます」とうたいながら、中身を見るとがっつり宣伝ツイートのオンパレード。とはいえ、キリンビバレッジのフォロワー数は91万人とシャープをやや上回っていますから、ユーザーからは意外に受け入れられているのかもしれません。実に不思議な話です。シャープのTwitterが信用経済の嚆矢ならば、キリンビバレッジのそれは貨幣経済の象徴とも感じました。

いずれにしても、Twitterを活用したコミュニケーション戦略の重要性は高まることはあっても低くなることはないでしょう。にもかかわらず、それを適切に運営できる人材は希少です。企業が発表する決算短信の『対処すべき課題』のなかに、「Twitterの運営人材の獲得によるブランディングの向上」が追加される日もそう遠くはないかもしれません。

社内に見当たらなければ、社外から求める手もあるでしょう。ZOZOの広報担当の執行役員を務めた田端信太郎さんは現在、トゥモローゲートやakippaなどスタートアップ企業のコミュニティーアドバイザーとして、Twitterの有効活用によるブランド力の向上などをサポートしています。コミュニケーション戦略のプロへのニーズは非常に強いといえます。

ところで、わたしが勤める会社の広報部はコミュニケーション戦略にどのように取り組んでいるのでしょう。「中の人」を求めているなら、ぜひ手を挙げたいと思っています。

無名の文章を読んでいただきありがとうございます。面白いと感じてサポートいただけたらとても幸いです。書き続ける糧にもなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。