スクリーンショット_2020-01-31_15

No.65  『カシオ』  G-SHOCK、おそるべし

1月30日、カシオが第3四半期(10-12月期)の決算を発表した。一言で印象を表せば、「G-SHOCK、おそるべし」。時計事業に思い切り振り切れてる感じがいい。

説明会資料を見てみよう。第3四半期の業績は、売上高737億円(前年比+1%)、営業利益86億円(同+12%)。第1四半期から第3四半期までの9ヶ月累計でも同様の増収増益である。「米中貿易摩擦による影響で」と手垢のついた外部要因で業績悪化を説明する他の電機メーカーとは一線を画す。

カシオの好調は完全に個社要因である。とにかく『G-SHOCK』がすごい。第3四半期における時計事業の売上高は482億円(前年比+2%)、営業利益率はなんと22%。全社の営業利益は全社費用の消去前で139億円。利益率から算出した時計事業の営業利益は106億円。つまり、全社利益の実に8割近くを時計事業で稼いでいる計算となる。稼ぎ頭はもちろんG-SHOCKであろう。

一見すると時計事業の増収率は小幅に感じるかもしれないが、為替の影響を除いた実質ベースでは前年比+6%と決して低い伸びではない。時計という成熟製品にしては、むしろ大健闘と言えるのではないだろうか。これから発表されるセイコーやシチズンの決算と比較すれば、カシオに対するポジティブな印象がさらに強まるように思う。

時計事業の戦略は明快だ。すなわち、G-SHOCKに全力で勝負を賭けること。従来のプラスチックタイプに加えて、付加価値の高いメタルタイプの製品ラインナップを拡充することにより、時計事業のプロダクトミックス効果を狙っている。木村拓哉の愛用で話題となった定番モデルの『GMW-B5000』が好調に推移しているほか、若者を主たるターゲットとして昨年9月に投入した『GM-5600』も会社側の目論見通りに売れているようだ。結果として、3Qにおける『Gメタル』の売上高は73億円(前年比+29%)の大幅増収。時計事業を力強く牽引している。

マーケティングも秀逸だ。時計事業の増収に大きく貢献している地域は中国。3Qの売上高は前年比+38%で他の地域を圧倒した。もともと中国市場の開拓は遅れていたが、4年ほど前から進めてきたSNSによる地道な普及活動がここにきて花開いている。また、地域ごとにブランド認知度を注意深くリサーチし、その地域に合った販売戦略をきめ細やかに練り上げている点もポジティブだ。新興国でのG-SHOCKの認知度はまだまだ低いとみられるだけに、中期的な成長余地もまだまだ大きい。

新たな収益の柱を育成する取り組みも進んでいる。健康の分野でアシックス、美容の分野でコーセー、医療の分野で信州大学。いずれも先行投資の段階ではあるが、成長が見込まれる分野において具体的なパートナーを定めて事業化を推進しているところがいい。他の電機メーカーはとかく抽象論にとどまりがちだ。

カシオの業績は好調である一方、G-SHOCKに過度に依存する収益構造をリスクと捉える向きも株式市場にはあるだろう。しかし、これだけ強力なプロダクトを持ち合わせている日本企業もそうはないはずだ。あとは新規事業の収益貢献を待てばいい。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

無名の文章を読んでいただきありがとうございます。面白いと感じてサポートいただけたらとても幸いです。書き続ける糧にもなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

無名の文章にスキをいただきありがとうございます。
34
証券アナリスト歴22年。調査・分析を生業としています。企業は<業績×経営者×人>生き物です。数字と数字の行間を読み解いてnoteで紹介。ビジネスに関わる全ての人にお届けできればと考えています。勤務先は丸の内の某信託銀行。好きなことは人物観察です。よろしくお願いします。

こちらでもピックアップされています

ゆういち@証券アナリストの『私的な企業分析』(1月号)
ゆういち@証券アナリストの『私的な企業分析』(1月号)
  • 33本
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。