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令和の「不登校」のサポート|教員として絶対にやってはいけないこと

【教育ニュース最前線vol.14-1】
日々報じられる教育関連情報から、教育業界への影響が大きいと思われる内容を、代ゼミ教育総研 研究員・編集チームが厳選してピックアップ。
それぞれの分析・私見を述べます。
教育・学校・入試について関心がある方々の、考えるヒントとなりましたら幸いです。

\\ ✨Vol.14は 2日連続投稿✨//
14-1:令和の「不登校」のサポート|教員として絶対にやってはいけないこと
14-2:学費問題のカラクリが高等教育の存在意義をも覆す⁈



令和の「不登校」の子どもたちに学校ができること、教員ができること

2021年度、不登校児童生徒数は小学校及び中学校で約24.5万人、高校を合わせると約30万人に上り、過去最高となりました。また、90日以上の不登校であるにもかかわらず、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小・中学生が約4.6万人に上ることも明らかになりました。

こうした状況を踏まえ、2023年(令和5年)3月31日、文部科学省から「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」が通知され、「不登校対策推進本部」が設置されました。

同年4月から2024年8月29日まで、4回の会議が開催されました。

▼誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部(第4回・8/29)安心して学べる魅力ある学校づくりの推進に向けた方向性等について議論(文科)

この間、2022年度の調査結果も示され(2024年3月公表)、不登校の人数はさらに増えています。小中学校で約30万人、全児童生徒の3.2%(中学校では6.0%)です。相談・指導等を受けていない児童生徒も5.9万人です。

不登校の理由の約半数が「無気力、不安」とされていますが、不登校に至る要因や実態は明らかになっていません。

COCOLOプランにおいて、3つの方向が示されています。

1 不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整える。不登校特例校、校内教育支援センター、教育支援センター、オンラインなど。

2 心の小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で支援する。端末による心や身体の不調・不安の把握、教育と福祉の連携など。

3 学校の風土の「見える化」を通して、学校を「みんなが安心して学べる」場所にする。

この実現のために、3つの取組を行います。

1 より適切に実態把握するための調査の実施
2 学校における働き方改革の推進
3 「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部」の設置

第4回会議では、進捗状況及び2025年度(令和7)に向けた予算請求を取りまとめています。

子どもたちは社会の宝です。質の高い教育を受けた若者たちが未来を創ります。

プランで示された取組が着実に実行され、ビジョンが実現していくことを願うばかりです。

 

💡研究員はこう考える

▷「登校拒否」から「不登校」へ

かつては「登校拒否」という言葉が使われていました。学校の体制に対する否定、異議申し立ての意味合いがありました。

その児童生徒の個人的な性向や主義主張ゆえに、登校を拒んでいると理解されていました。

しかし、三十数年前から「不登校」という言葉が使われ始め、現在ではすっかり置き換わりました。

不登校は個人の問題ではなく、学校や家庭、社会全体が関わる複合的な問題であると認識されるようになりました。

学校に「行かない」というよりは、「行けない」のであり、その背景や理由も多様です。

▷かつての「一斉」スタイルの学校

日本の場合、学校では一斉に同じことをしてきました。

心身がどのような状態であろうと、同じ時間に学校へ行きます。遅刻してはいけません。

「起立・気をつけ・礼」の号令に全員が従います。揃っていなければ、やり直しです。授業中は同じ方向を向かって座り、一緒に話を聞きます。私語は許されません。

先生が板書を終えれば、一斉にノートに書き写します。書くのが遅いと急かされ、書き終えると手持ち無沙汰です。

見学旅行では、奈良の大仏を見学するのに列をなし、間隔を空けないように気をつけながらゾロゾロと歩きます。自分のペースで歩くことも見ることも許されません。集団行動においては、同じことを同じペースでやらなければなりません。規律を守り、秩序を保つのです。


▷「多様性の尊重」の●●●●●が求められている

では昔の児童生徒は、こうした「一斉」が好きだったのか。

そんなことはありません。大多数が嫌だったのです。だから、学校が休みになると歓喜したのです。

「一斉」に行動していたからと言って、個性がなかったわけではありません。表面と中身は別です。やはり多様であり、それぞれにクセがありました。

「学校へ行かなければならない」という考えは今よりも強かったかもしれませんが、それで個性を捨てていたわけではありません。

個性の出し方が、昔と今で違うだけです。

「多様性の尊重」がよく言われますが、多様性はいつの時代にもあるので、その尊重の仕方の変化が求められているのだと私は思います。


▷組織が多様性を支える社会へ

昔は、人が勝手に多様だったのですが、今は組織が多様性を支えてあげなければなりません。

学校の教員組織も同様です。あくまで私の経験ということになりますが、個性や多様性を「尊重」されなくても、勝手に発揮していました。

意見を出し合い、よく討論・議論し、時に衝突し、何とか折り合いをつけながらやっていたのです。尊重も何も、気がつけば「個人主義」「ミーイズム」「自己中」などと言われていたのです。

しかし、私見ですが、世の中がどんどん便利になり、労せずとも、お金さえあれば簡単に手に入る、与えられるようになり、かつてあったたくましさが弱まってしまったように思います。あるいはたくましさ「格差」が大きくなったと思います。

自己主張して突破するよりは、離れる。
適当に合わせて、心の中で舌を出すよりは、離れる。
学校では我慢して、放課後、さらには卒業後、好きなようにやるよりは、学校から離れる。

たくましさが弱くなった現在では、多様性を支援し、個性を守ってあげる必要があるのです。

そのためには、学校自体を多様にするしかありません。そのための人とお金を投入する必要があります。

そして、学びについて、多様性を保証する必要があります。

▷本気で社会と学校教育を変えていく

私は、学校教育の目的は、単純に言えば、学力と社会性を伸長することだと思います。

学力とは、もちろん、学力の三要素のことです。
社会性は、よりよい社会を創るために自立し、共生できることです。

目的は一つですが、どのような学びや体験によって伸長するかは人それぞれです。

一斉授業が合っている子どももいれば、一人で教科者や端末を使って学ぶ方がよい子どももいます。完璧ではなくてもどんどん先へ進みたい子どももいれば、一歩一歩着実に歩んでいきたい子どももいます。

自分で読み書きすることで学ぶ子どももいれば、自然体験・社会体験で行為によって学ぶのが性に合っている子どももいます。

こうした違いを認めてあげましょう。様々なやり方があります。
彼ら彼女らが何も選ばないのではなく、選ぶよう、選ぶことができるよう、試行錯誤を恐れないよう、サポートしてあげましょう。

▷教員として絶対にやってはいけないこと

そう言うのは簡単ですが、実際に不登校の生徒が現れたとき、教員として、何ができるでしょうか。

残念ながら、正解はありません。
こうすれば必ずうまくいくという方法はありません。

結果的に、学校から離れ、より自分に合った学びができる場所へ行くことも少なくありません。通信制を選んだり、どこにも行かず、高等学校卒業程度認定試験の合格に向け自学をしたりする生徒が多いと思います。
そうした結果をコントロールすることはできません。

しかし、教員として絶対にやってはいけないことは明らかだと思います。

・この生徒はこうだと決めつけること。
・複数の教員で、当該生徒について情報交換・意見交換する場を持たないこと。
・学校が合わないなら、さっさと辞めればよいと思うこと。
・生徒や保護者とカウンセリング及びコーチング的な関わりを持つ時間を十分にとらないこと。
・生徒の思いや可能性を想像することなく、目に見える言動のみで判断すること。
・現在の高校生活を送ることの意義を語らないこと。
・この生徒に対して自分ができることはないと諦めてしまうこと。
・生徒が抱える悩みや困り感に徹底的に寄り添うという姿勢がないこと。

私が管理職になる前、担任をしていたとき、不登校になった5人の生徒のことを時々思い出します。結果的に全員卒業はしましたが、本当に難しかったです。悩みました。
今、同じ状況になったとして、うまくやれる自信はありません。

しかし、諦めたら終わりだということはわかっています。
正解はなくても、彼ら彼女らと関わりながら、思いつく、ありとあらゆる手を打つしかないということはわかっています。

心を込めて、そのプロセスをマネジメントするしかありません。

私はCOCOLOプランは正しいと思います。

しかし、プランはプランです。

不登校の子どもたちが、「学校に行けない」ことで自信を失い、無気力や不安(それを経験しない人間がどこかにいるでしょうか)によって学びの機会を奪われることがないような社会。

日本が、本気でそうした社会を目指しているかどうか。

大人が問われているのはそこです。


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