見出し画像

今はただ悲しいだけ。

また私のところへ閉店のお知らせが届いた。

理由や原因がなんであれ続いていたものが

ふっと消える瞬間。

何度も経験しているけれど、悲しい。

そのお店は私がこちらに来てまだ友達がいない時、家の近くで見つけて一人でたまたま入ったお店。

まだオープンしたばかりのお店にはお客様も少なく、心地よい空間と食事を独り占めしている贅沢な時間を何度も過ごした。

そのお店に通っていた頃、

私はまだ10代で、自分の店を持つ事なんて少しも考えていなかった。

新しい暮らし、初めての仕事、日々の生活に追われながらも充実していて、ちょっとと疲れたら一人でそのお店へと足を運んだ。

こんなに素敵なお店はどうやったら作れるんだろう....漠然とした疑問を抱きつつも私には到底辿り着くことのない世界なんだろうなと憧れるばかりのお店。

友人が遊びに来たら素敵なお店を自慢したくて連れて行き、

喜んでくれる友人達の姿が見られるのがとても嬉しくて、この場所の持つ魅力に酔いしれた。

着実にお店はお客様の心を掴み、気が付けば人気店となっていました。

楽しそうに食事をする人達の声、うっすらと聴こえてくる店内の音楽。
沢山の人が居るそのお店の雰囲気もまた良く、
明るい店の雰囲気がそこに居る自分を少し素敵にしてくれる様な錯覚さえ感じることが出来た。

最初の頃に流れていた時間、窓から差し込む光や、ガランとした店内の静けさと心地よさはずっと私の中に残っていて、私はそれを大切にしたかった。

だからだんだんと人の声が増えていくお店へとは自然と足が遠のいていった。

働く店が変わったり、仕事を変えてみたりしていた20代。

その間も在り続けたそのお店はとても気高く益々憧れの存在へ。

私が自分の店を持ってからも、おすすめのお店を聞かれると必ずそのお店の名を挙げた。

自分からは行かないのに(笑)

遠目で見ながらも常に憧れの存在だったお店。

お酒が好きな友人達は私の店に来るよりもそちらのお店へ通った回数が多いんじゃないかな…。嫉妬なんて抱く余地もなく、やっぱり素敵なお店だよねと勝手に誇らしかった。

不思議なことに今年の彼岸入り。

お墓参りの後にふらりとその店へと行っていた私。ころな騒動が騒がしくなっていた頃です。

数年振りに心が動いて自然と足が動いた。

スタッフも変わり、でも店が温かく迎えてくれる心地よさは健在。たくさんの人に好かれるお店なのがよく分かった。

ずっと行かないでいたお店。

その日からほんの数か月。

行かないではなく行けなくなってしまった。

店が無くなってしまうんだから、行くも行かないも選べないじゃないか。

好きなお店や憧れのお店が無くなる事、

何度も何度も経験して、自分が働いていた店が無くなる経験もしているけれど、その度に感じるこの悲しみ。

ただ、悲しい。

この数日で閉店の張り紙を何枚か見た。

その度にぎゅっと心が締め付けられる。

どうしても私は悲しい気持ちが前にきてしまうけれど、しかし実際はどうか分からない。

辞めようと思っていてきっかけが出来た事で、そのお店の人達は清々しい気持ちで店を閉められるのかもしれない。

続けるって本当に奇跡みたいなものなんだなと、
改めて思います。

取り巻く環境や、自分の心や身体の健康、置かれている立場や、もちろんお金も。

色んな事が奇跡的に揃っているから今が在る。

今は本当にただ悲しいだけだけど、それだけでは終わらせない。

そこで見える当たり前の中にある学びをまた少しずつ感じていこう。

あーーーーでも今は本当に悲しい !

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?