思い上がって、終わる

帰りの田舎道、昼下がり。
少し穏やかになってきた暑気を浴びながら、成長しきった蓮の葉を眺めていた。
小学生から今に至るまで、ずっと見慣れてきた風景を見つつ考え事をしていた。

--帰る前、期間限定の商品を買いに立ち寄った駅前では、放課後の高校生集団に出会し
改札口では、ホームの行き先を間違えた。
うちの地元よりは都会だから、未だに慣れないことが多い。
普段とは違う方向から車窓に射す光を浴びて、少しの都会から片田舎へと乗り継いだ。


今週はじめ、同僚が心を病んで休職した。
きっと彼はしばらく職場に復帰できないだろう。
このまま退職する可能性だってある。
最悪のケースも、考えられる。

今はご時世の影響もあって、どちらかというと職場は暇な時期だ。
それに反して心というものは、日々絶えず変化をしていくのだろう。

なぜ自分は彼の変化に気付けなかったのか。
きっと自分がもっと、人の心情に敏感であれば
救うこともできたはずだ。
日頃インターネットでもその病気の悍ましさを認識していた分、なまじ侮れないとは思っていた。
しかし、実際に直面するとその前兆すら、ろくに察知できなかった。
自分の無力さを痛感した。
少なくとも、彼がこのまま退職するに至ったとしても
最悪のケースだけは免れてほしいと願うことしか、僕にはできない。

五月雨一つ 拾い切れないのに
君を救える気がしてる

いつからか僕自身、人をよく知った気でいたのかもしれない。

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