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香水ディスコースの改革 [NEZ 2022年10月26日]

NEZ Magazineのウェブ版を翻訳しています。

今回は、Reinventing perfumery discourseというテーマで3回にわたって特集されています。

記事が書かれた順番と前後して、先に第3回のクリストフのインタビューを翻訳しました。
今回は元に戻って第1回です。

■ 第1回(今回):香水ディスコースの改革
■ 第2回:ディスコースと現実の間の嗅覚的不協和
■ 第3回(翻訳済):クリストフ・ラウダミエル「香水の50%は盗作かリミックス、倫理規定を定めるべき時期が来た」

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香水ディスコースの改革


By Jeanne Doré, Jessica Mignot
2022年10月26日

神話、伝説、誤解を招く暴露、歪んだ現実。香水業界は常に自らを謎に包む傾向があり、秘密主義を助長し時には嘘を流布することさえある。確かに夢はあるが、それは現実とはかけ離れたものである。そのディスコースによって一般の人々の嗅覚に対する知識と教養がいつまで経っても向上しない。今こそ転換を図る時ではないだろうか。正確で正直なディスコースを導くための様々な問題点と可能性を概観する。

長い間知的領域の片隅に置かれてきた嗅覚の沈黙には注目が集まるが、現在の香水業界のパブリックメッセージについてはあまり言及されていない。このメッセージをよく観察してみると、繰り返し行われる断片的で不完全なアプローチを嘆くしかない。天然香料を中心とした体系的なアプローチは嗅覚のニュアンスを表現するための基礎となる唯一のものと称され、他のすべての原料を損なっている。私たちのほとんどが、天然の原料について何も知らない、あるいはほとんど知らないにもかかわらずこのような状況だ。近年は合成香料も持続可能な方法で開発されるよう努力されているが、大ヒットしたフレグランスのフォーミュラに多く使われている合成原料はプレスキットのお荷物として扱われることがあまりにも多い。私たちの社会では教育が不十分なために匂いについて話すことが難しいのは事実だが、匂いへのアクセスや本物であることを、さまざまな方法で証明することができた。

調香師はプレスやソーシャルメディアに定期的に登場するようになったが、悲しいことに彼らは依然としてブランドとその定型的なメッセージの背後に消えがちで、創造とそのアプローチについて個人的、実用的かつ有益な方法で話す機会がほとんどない。調香師、あるいはその役割を担うアーティスティック・ディレクターは、一見すると唯一のクリエイターであり、生産者から評価者まで生産チェーンに関わるすべての人の影に隠れ、クレジットにも登場しないのである。

香水ディスコースが業界の現実を反映し、香りの創造が透明化され、誰もが理解できるようになり、メッセージが有益で誤解を招かず、マーケティングに縛られず、創造の意図とプロセスに近くなるには、まだ長い道のりがある。

それでも、私たちは他に方法があることを心から願っている。私たちのボキャブラリーはバラの花びらや欲望にうめく加工された写真の女性たちよりももっとニュアンスに富み、もっと興味を引くようなイメージを思い浮かべるのに十分であることを。嗅覚は世界を観察し、経験し、理解するための精密な道具であり、粗悪なものを売って産業を潤すための欠陥品ではない。嗅覚を探求し、作品に取り入れている特定のアーティストが示すように、私たちを取り囲むものとの関わり方を変えることで世界との関係を再構築する原動力にさえなり得るのだ。

この特集では、香水や嗅覚の様々な問題、そしてそれを改善するための解決策を巡る多彩な旅にご招待みなさんをご招待する。

つづく

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原文はこちら

https://mag.bynez.com/en/reports/reinventing-perfumery-discourse/reinventing-perfumery-discourse/


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