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理学療法士が語る~痛みについて②~

こんにちは。今回は、前回の記事をもう少し詳しく解説していきます。痛みの経路を知り、痛みごとに発生場所が違うことがあるため「これは重要な痛みで受診をしなければならない!」「この痛みはそこまで重要でないかもしれない。」と不安を大きく抱かなくてもよいかもしれません。それでは、一緒に学んでいきましょう!


痛みの4段階

感覚的痛みの発生経路は、主に4つの段階を経て進行します。これらの段階を、「感覚的な痛みの発生機序」の図と「痛みの種類と発生場所」の図を参照しながら説明していきます。

1. 痛み刺激の受容(侵害受容)

「痛みの種類と発生場所」の図で示された赤い円(侵害受容性疼痛)の領域で主に発生します。皮膚、筋肉、関節などに分布する侵害受容器(何か痛みに関する刺激が入ってると検知する場所)が刺激を感知します。刺激の例:組織損傷、炎症、極端な温度、強い機械的刺激この段階は「感覚的な痛みの発生機序」の図の赤い円で表されています。

2. 痛み信号の伝導

侵害受容器(何か痛みに関する刺激が入ってると検知する場所)で感知された刺激は、その刺激が入ったことを脳に知らせるために神経線維(侵害受容器に付着する)を通じて信号として神経線維の中を伝わっていきます。主に2種類の神経線維が関与します: a) Aδ線維:有髄、速い伝導(鋭い痛み、最初の痛み) b) C線維:無髄、遅い伝導(鈍い痛み、二次的な痛み)この段階は「感覚的な痛みの発生機序」の図の青い四角で表されています。「痛みの種類と発生場所」の図では、青い長方形(神経障害性疼痛)の領域がこの伝導経路を表しています。

3. 痛み信号の伝達

神経線維を通じて伝導された痛み信号は、脊髄後角(身体の中心に存在する神経線維が出入りする場所です)に到達します。ここでシナプス伝達が行われ、神経伝達物質(神経細胞間で情報を伝える化学物質のことです。例えば、グルタミン酸やサブスタンスPなどがあります)が放出されます。二次ニューロン(最初の神経細胞から情報を受け取り、次の段階に伝える神経細胞のことです)が活性化され、信号は上行性伝導路(身体の中心での神経の走行は縦方向に走ってます。上行性伝導路は刺激を脳の方向に刺激を伝えます)を通じて脳に向かって伝達されます。この段階は「感覚的な痛みの発生機序」の図の緑の三角形で表されています。

4. 痛みの知覚

痛み信号は最終的に大脳皮質(脳の表面にある灰色の部分で、高度な思考や感覚処理を行う場所です)に到達し、ここで痛みとして知覚(何が身体で起こったか感じることです)されます。体性感覚野:痛みの強度や位置を処理します。例えば、「右手の人差し指が強く痛い」といった情報を認識する場所です。前帯状回:痛みの情動的側面を処理します。痛みに対する不快感や恐怖感などの感情的な反応を担当する部分です。島皮質:痛みの認知的側面を処理します。痛みの意味づけや重要性の判断など、痛みに対する理解や解釈を行う場所です。この段階は「感覚的な痛みの発生機序」の図のオレンジの楕円で表されています。「痛みの種類と発生場所」の図では、緑の円(心因性疼痛/ノーシプラスチック疼痛)が主にこの段階に関連しています。

痛みの調節システム

また、「感覚的な痛みの発生機序」の図に示されている紫の点線の矢印は下行性疼痛調節系を表しており、脳から脊髄に向かって痛みを調節する機構を示しています。この系統は、オピオイド(モルヒネのような鎮痛効果のある物質)やセロトニン(気分や睡眠に関わる神経伝達物質)などの神経伝達物質を介して痛みの知覚を調節します。

重要なポイント

重要なポイントとして、これらの段階は相互に影響し合い、複雑なフィードバックループを形成しています。例えば、慢性痛の場合、持続的な痛み信号により中枢神経系(脳と脊髄のこと)が過敏化(中枢性感作)を起こし、通常では痛みを感じない刺激でも痛みとして知覚されるようになることがあります。

痛みの種類と発生場所

「痛みの種類と発生場所」の図は、これらの経路が異なる種類の痛みでどのように関与するかを示しています:

侵害受容性疼痛は主に末梢での刺激受容から始まります。神経障害性疼痛は神経系の損傷や機能障害により、伝導路のどの段階でも発生する可能性があります。心因性疼痛は主に中枢神経系での痛み処理の変調によるものです。

まとめ

この包括的な理解は、効果的な痛み管理のために重要です。痛みの種類や発生場所、そして痛みの経路のどの段階が主に関与しているかを特定することで、より適切な治療アプローチを選択することができます。

いかがでしたか?痛みの発生経路について、少し理解が深まったでしょうか。

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