不登校変化グラフ

3 不登校に対してどうあるべきか 社会のこれから論 1

 この章では不登校をなくす為に社会や学校はどう変わるべきかを書いていきます。
 不登校にどう対応していくべきかということは、学校だけを考えても充分ではありません。学校教育を終えてから過ごす社会まで考える必要があります。なので、社会と学校、両方の根本的なシステムの改革案を書いていきます。
 ただ、斬新な改革案を書いただけでは夢見がちと思われるでしょうから、その第一歩となる小さな改善や既に実際に始まっている政策なども並行してあげていきます。
 「不登校をゼロに」というスローガンを掲げている学校がよく見られます。こういったスローガンは一部の方からとても批判的に見られますが、私の提唱する社会と学校の改革案は奇しくも、二つの意味での不登校ゼロなのです。

・社会はどう変わるべきか 不登校ゼロから不登校不安ゼロへ

生きるベースと正規雇用を切り離す

 2章で書いたように不登校に将来ちゃんとやっていけないかもしれない不安が大きく関係しているとしたら、その不安を軽減することで不登校は減少するはずです。
 安定して一人前でい続けることはバブル崩壊後の若者にとっては簡単なことではなくなりました。そういった日本の将来不安が正規雇用と非正規雇用の差や大企業と中小企業の差による部分が大きいことは2章でふれました。この差を埋める社会制度が必要です。
 正規雇用、できれば大企業で働いてる人が持っているような安定をなるべく全ての人に行き渡らせる制度が必要になります。
 実は日本ではある程度以上の時間働いている人だけが持っている特権があります。それは保険と年金です。日本の制度では働いている人は健康保険や年金の半分を雇い主が払ってもらっています。
 普通、正規雇用だと週五日で八時間、週四十時間の労働になります。その四分の三以上であれば、厚生年金や社会保険に入ることができます。
 また、正規雇用となると簡単にクビにできないなど雇用面で守られることになります。
 逆にいいますと、現在の日本ではある一定時間働けないとかなり損をすることになります。様々な理由でそんなには働けないという人はかなりの不利を被ることになります。また、現在では人を非正規で雇いたいという会社や公的機関が正社員の要件や社会保険の要件のギリギリの労働時間で人を雇うことも多くあります。
 もう一つ、雇用保険についてもふれましょう。失業した時の助けとなる雇用保険ですが、これも週二十時間以上の労働でなければ加入できません。さらに、一定期間以上加入してないと失業時に保険が降りません。
 日本の社会保障は一定時間以上働いていないと、そうでない人よりかなり不利になります。そして、それ以外の社会保障は一気にほぼ全く働けない人を対象とした生活保護しかありません。

 こういった正規雇用やそれに近い雇用と社会保障とを切り離す必要があります。
 それはどういうことか。年金や保険といったものを税金のみを財源としたものにして、全国民に同じに付与にするのです。
 今まで個人や雇用主が納めていた年金や保険を払う必要がなくなり、その代わり税金が上がることになります。

働かないと病院に行けない国を変える

 個別に改革案を述べていきましょう。まず国民健康保険です。
 医療費は今と同じで三割だけの支払いになり、残りは税金から支出されます。これによって無保険という人はなくなります。
もしくはもっと進んでイギリスのように全額税金負担というのもありかもしれません。少なくとも難病指定などの制度はもっと整備する必要があるでしょう。治療に大変なお金のかかる難病等では補助を出すことも必要です。

 これは突飛なように思えるかもしれませんが、多くの自治体で既に子どもの医療費の無償化が行われています。
 国民健康保険と社会保険を一元化し、財源を全て税金で賄うのはそれほと難しいことではないはずです。健康保険として払っていたお金を所得税や法人税として取るだけです。現在でも約四割が国庫負担金(つまり税金です)なので、段階的に保険額を減額し国庫負担金を上げていくような措置も可能でしょう。もちろんそれは他の増税とセットになります。
 何より保険証を持たない無保険者を出さないことが第一です。病院に行けないということは死活問題なのです。

未来に必要な出費を賄う

 今現在、非正規で働いている人達は年々給料が上がっていく昇給もなく、将来どうなってしまうのかという不安にさいなまれている人が多いことでしょう。私もそうです。子どもが生まれれば子どもを育てていくお金がかかります。年をとって働けなくなっても、一部の正規雇用しか退職金はもらえません。
 こういった安定の流れに乗れなかった人への対策も考えなければなりません。
 年金は健康保険と同じく税金を財源として全ての人がもらえるようににします。介護保険や障害年金等も同じです。健康保険と同じく、そのぶん税金が上がるので基本的に財源の心配はありません。

 もう一つの懸念は子どもを育てていくお金です。これについては教育を無償化を目指すのがいいでしょう。子どもの進学にかかるお金は将来の大きな不安となるだけでなく、貧困や格差の固定化にもつながっています。
 できれば、ランドセルを買うお金や修学旅行に行くお金等、教育にかかるお金を全て無償化するような仕組みがいいでしょう。小中学校、高校の完全無償化です。
 幼児教育(保育)の無償化は将来を考えた経済的効率が高いと言われています。
 大学の無償化は、貧しい人は大学に行かないので返って格差が広がるという指摘もあります。これについては、2章で述べたとおり大学に行かないとやっていけないという不安による部分が大きいことが関係しています。累進課税で高卒と大卒の収入差を多少縮めることも効果があるでしょうし、今私がここに書いているような社会保障の充実によって高卒でも生活していけるようになれば多少変わっていくはずです。

 これらも決して荒唐無稽なものではありません。
 国民年金こそ税金に一元化すべき制度でしょう。これなら未払いを気にする必要はありません。国民年金は既に半分が国庫不安です。健康保険と同じく段階的に国庫負担金を増やしていけばいいでしょう。
 子ども手当ては既に一度実現した制度です。現在は大学生の奨学金が大きな問題となって、無償の奨学金が少しずつ形になろうとしています。幼児教育や大学教育の無償化も政治の現場で既に議論されています。
 様々な形から少しずつ教育の無償化を目指していってほしいものです。

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