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【寄稿】地域とのつながりをつくる行政の活動~市民の声と職員の想いからできた施策~

この記事は、大学生ライターによる寄稿です。

<はじめに>
 私たちは岡山市役所岡山っ子育成局子育て支援部こども福祉課の武裕子さんにインタビューをさせていただきました。「市役所」の役割は、医療・福祉・教育・子育てなどをはじめとしたさまざまな分野で、市民が快適に生活できるようサポートをすることです。今回はインタビューを通して見えた、行政機関の職員ならではの視点や「市民とのつながりを大切に」という武さんの心がけや想い、そこからできた福祉施策などを紹介していきます!

<施策を考えるときの心掛け>
 市民から相談があった際、職員としては、必要な情報を「正確に」伝えたいという思いがあります。しかし、「正確な言葉」は市役所の中では当たり前に使う言葉でも、市民生活では馴染みのない言葉で「難しい」と感じる方も多く、両者で使う言葉や感覚にずれが生じていると感じたことがあったそうです。そういった経験から、市民目線に立つことの重要性を教えてくださいました!
 相手が何を求めているのかを考え、現実の市民の暮らしを把握できて初めて、市民の豊かな暮らしの基盤となる仕組みを作ることができます。困っている市民の声を受け取れるよう、市民の感覚とかけ離れないようにする心掛けのもとで施策の考案に携わっているそうです。

<市民の声を受けとめてできた施策>
 ひとり親家庭のニーズ調査の中で「どこに相談していいか分からない」「どんな支援があるのか分からない」という声がありました。子育てや仕事に追われ、自分から情報を集めることが困難な家庭の存在が見えてきました。一方で、子ども食堂を運営している団体の方から、「本当に必要な人はここに来られていないのではないか」という意見もありました。そこで、困難を抱える家庭に直接情報を届ける「おかやま親子応援メール」が生まれたのです。

◇おかやま親子応援メール◇

 おかやま親子応援メールは、情報を届けるツールに加え、市民の声を集めることができるツールでもあります。「コロナ禍で支出が増えて苦しい」「外出できなくてストレス」などの訴えから、登録者のリアルな声を知ることができ、間接的ではあっても困窮家庭の方と個々に向き合うことが可能なツールであるとも言えます。現状を知り、抱える困難に合わせた情報発信を行い、それを見た方が情報を得てサロンに参加したり、無償提供のサービスを受けたりと、豊かな暮らしの実現のための支援ツールとして役立っています。市民の声が岡山市に伝わることによって、施策が生まれる第一歩となるのです。

<行政と民間との協働>
 行政と民間が協働して社会課題の解決を目指す岡山市市民協働推進事業があります。今回はNPO法人オカヤマビューティサミットさんと協働して進められた、シングルマザーの経済的自立に向けた資格取得・就労支援事業の「結」について紹介します。
 
✿対象 子育て中のシングルマザー
✿目的 仕事と育児が両立できる環境整備、ひとり親家庭の経済的自立を図る
✿内容 短期間でのエステ技術習得のための講座及び就労支援の仕組みづくり

◇協働することで生まれた効果◇
・岡山市が持っている情報(児童扶養手当受給世帯)により、支援対象者全員に情報を届けることができます。
・市民団体のノウハウを生かして、資格取得のみならず、シングルマザーが自立・就労するまで伴走支援する講座が実現したことで、伴走支援する仕組みの必要性が明らかになりました。
・協働推進事業で明らかになったひとり親家庭の就労支援について必要な支援内容を盛り込んだ就労支援講座を公募して企画競争とする岡山市の施策が生まれました。

<まとめ>
 武さんは、市民とのつながりを常に意識し、地域の現状を把握し、市民と同じ目線に立つことを大事にされていました。私たちも福祉を学ぶなかで、届きづらい声に気づく力や相手の立場になって考え寄り添う力が大切だと感じています。常に知識をアップデートしながら、市役所と市民生活とのギャップを小さくする工夫を施策へと反映されている流れを伺うことで、相手に寄り添いながら支援を行う大切さを改めて学びました。
 また、困っている市民や取り巻く環境を把握し介入する直接的な支援も大切ですが、それだけでは市民の豊かな生活は実現しません。行政からの視点を知ることで、個人への対応で終わらせるのではなく、制度を創り、全ての人のより良い暮らしを実現できるような社会システムを考えていくこともソーシャルワークには必要不可欠であることを学びました。多角的な視点を持って対応できるソーシャルワーカーを目指したいと思います。


ノートルダム清心女子大学 人間生活学科 社会福祉士課程
大森まりあ 橘亜里紗 西谷遙香


インタビュー日時:2021年11月16日

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