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採用コピーのマンションポエム化について

Q.何社から内定をもらいましたか?
A.8〜10社くらいです。

Q.行きたかったけど、内定がもらえなかった会社はありますか?
A.ありません。

Q.就活は大変でしたか?
A.内定を断るのは大変でした。

先日、数名の学生に就活に関するインタビューを行った。これはその一コマ。超売り手市場と言われる学生たちの実態だ。

もちろん僕がインタビューした学生たちが優秀だったこともある。しかし旧帝大で、長期留学経験もあって、プログラミングスキルも〜、なんてハイスペックの学生ではない。いわゆるMARCH(GMARCH)で普通にサークル活動をしていた文系学生たちから出た言葉だった。

今、就職活動、採用活動が転機を迎えている。

●広告のやりかたで採用もやってみる

10年前、まだ就職難で買い手市場の時代。広告やマーケティングのスキルで弱い立場の学生の役に立てればと「広告のやりかたで就活をやってみた」という本を書いた。(おかげさまで改訂版も出るロングセラー)

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出版後は「私の自己PRを添削してほしい」など、学生からの問い合わせが相次いだ。

しかし昨今、売り手市場に移行するにつれて今度は企業から「うちの採用PRを考えてほしい」との問い合わせが増えはじめた。今はそれを採用クリエーティブとして企業に僭越ながらコンサルティングさせていただくことも多い。

市場への移行に合わせて、広告やマーケティングスキルの提供先も代わったのだ。

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そこで今日は広告やマーケティングの視点で採用領域に取り組んでわかったことをほんのさわりだけ書いてみる。

●企業の採用コピーがまるでマンションポエム

採用にはキャッチコピーがある。その会社の採用コンセプトにもなるので大事な採用PRの一部だ。

広告制作には市場・競合調査が欠かせない。そこで数年前、僕は各社の採用パンフを集めてその傾向を研究した。

そしてある法則に気づく。

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壮大な景観画像に、壮大な言葉。多くの企業がこのフォーマットで学生にコミュニケーションをしていた。

そして思った。

「これ、何か似ている」

そうだ、マンションポエムだ。

マンションポエムとは、電車内などで見かけるマンション広告のキャッチコピーがもはや詩的な領域に突入していることをイジった言葉。

多くの企業が掲げる採用キャッチコピーが、マンションポエムのように壮大すぎて現実味のない言葉になっていた。

確かに採用PRとは企業の未来を語ること。しかし耳障りのいい言葉だけを使っても、抽象的になり学生に伝わりにくい。結果的に印象に残らないものになってはコピーをつくった意味がなくなってしまう。

・今の若者はどんな思考か?
・どんな学生がほしいのか?
・自社にとって「優秀」とは何か?
・入社する学生が担うのはどんな自社の未来か?

競合の視点はもちろん、これらも踏まえて言葉をつくらないと、抽象度の高いポエムに近づいてしまうのだ。

●企業と学生、うわべ言葉のやりとりになっていないか?

ちなみにこのポエム化現象、企業に限ったことではない。学生の自己PRもまたポエム化・抽象化が進んでいる。

「積極的なコミュニケーション力で〜」
「人を笑顔にすることで好きで〜」

など、どこかで定型文のような自己PRをしてしまう学生は少なくないし、実際このような自己PRでも内定が取れることもある。

しかし他者と同じようなことを言うなら、企業は学歴や資格などのスペックで決めるしかないという側面があることも忘れてはいけない。

企業も学生も抽象的な言葉で採用PR・自己PRを行う。そんな状況が特にこの時期は散見される。

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何より危険なのは「本質的なつながりがない」という点だろう。

採用は企業も学生もお互いの未来を左右する大きな決断だ。
うわべ言葉だけのやりとりで付き合いはじめることのないよう、企業も学生も言葉に対する解像度を高める必要がある。

最後に宣伝。このテーマでもう少し詳しく話す企業向けセミナーが来週あります。別途、講演などもツイッターのDMでお問い合わせください。

サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。