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『終身雇用』と『信賞必罰』

先日こんなニュースを見かけました。

若い人たちからすれば「会社に所属しているだけで毎年昇給するってどういうこと?」「評価が悪いときは定期昇給しない場合があるって当たり前でしょ?」と思うかもしれないですが、高度成長期の時代から活動している企業は同じような制度で運用されていることが多いのではないかと思います。

トヨタほどの歴史があって社員数も多い企業が人事制度を大きく変更するというのは想像するだけでも恐ろしいくらいの苦労が伴うと思いますが、この英断は本当にすごいことだなと思いました。
※「そんなの時代に合っていないんだからすぐに変えればいいじゃん」って言えちゃう人は『会社』というのをよく知らないんだろうなって思います。


『1社で勤め上げる』ことが基本だった昭和の時代から『転職が当たり前』になった現代では、社員の会社に対する向き合い方が変わったことで以前のような『終身雇用』をベースにした人事制度はかみ合わなくなりました。
※そもそも『終身雇用』って制度じゃなくて概念だと思いますが。

先の毎年の『自動定期昇給』もおそらくは「長く安心して働いてもらおう」ということから始まっている制度なのだと思いますが、会社が毎年成長することを前提としたうえで成り立っている制度のため、昨今のような将来を見通すのが難しい状況では制度破綻が起こってしまうのは当然のことです。
※少子高齢化が引き起こす(人口は毎年増えることが前提だった)『年金制度』と同じような問題ですね。

また、このような制度では『長く会社に所属している人の方が有利』となるため、信賞必罰がきちんと行われているかどうかが重要です。そこがグダグダだと『成果』と『報酬』が大きく乖離する可能性が高いですね。
評価連動による降格や減給がさほど行われないような状況が重なると上の役職者たちは固定化しやすく、若い人たちにチャンスは回ってきづらくなります。成果で判断されず、頑張っても(それほど頑張っていない人たちよりも)報われない会社であればそこで働く意味はないですよね。
そうなると若くて優秀な人は抜け、固定コストはどんどん上がり続ける一方なので、結果として会社も社員も不幸になっていきます。
※このため耐えきれなくなった結果、一定以上の年齢の方たちを対象に早期退職を募ったりする例がでてきています。

いわゆる悪い意味での『終身雇用』や『年功序列』の弊害が起きているということだと思いますが、かといって『成果主義』がいきすぎるのも心理的安全性に欠けるし、周囲との協力関係が薄れていきやすい(個人プレイヤー化の促進)ため、それはそれで弊害が起こります。
※昨今の「リモート」の働き方も『成果主義』を促進するため、大きな問題をはらんでいると思っています。

どちらにもメリット・デメリットがあるため、できれば良いとこどりできるような制度設計を考えたいものです。


・・では僕としてはどう考えているかというと、年公序列は嫌いですが(1社で勤め上がるという意味での)『終身雇用』は悪いと思っていません。
※社員にも『うちは終身雇用を目指している』と言っています。
少なくとも経営者としては社員にずっと働き続けてもらえる会社を目指すべきだと思います。個人的には昔ながらの『社員は家族』みたいな日本企業的な考え方は嫌いではなく、かつての日本企業の強みはある意味そこにあったんじゃないかなって思っていますし、せっかく縁があって仲間になったのだからできることなら無期限で一緒に働き続けたいと思っています。

そのために会社側は社員が『ここにいたい/いてもいい』と思える働き続けやすい環境(福利厚生/多様な選択肢/おもしろい仕事/年齢に合わせたポジション/報酬・・等)を用意すべきで、それをベースにして社員は安心して業務に邁進して結果をだすという相互関係を成立させることが大事だと思います。

ただ、安心して働き続けやすい環境を創るといっても『怠惰』を生み出すような安心感はいらないと思います。会社側と社員側には適度な緊張感は必要だと思っていて、そうでなければ『なぁなぁの関係』になってしまいます。
このため、成果に応じた信賞必罰はきちんとやらなければいけないと思います。ここがしっかりやれている会社は企業文化がしっかり根付いて活力に溢れているし、優秀な人材が長い期間働き続けられると考えます。
※社内での自浄作用も生まれてきます。

D2Cdotではマネージャーたちに常々「信賞必罰はきちんとやるように」と伝えています。このため、人によっては高い頻度で給与の増減が起こる場合があります。年に2回評価のタイミングがありますが、多い人は連続で昇給します。逆もしかり、ですけど。仮に減額になっても次の頑張りで取り戻すことももちろん可能です。

稀に、結果を残せていない人に対して特になんの対応もしない企業やマネージャーを見かけることがあります。
これは当人にとっては「このレベルで許されるんだ」という勘違いを起こさせてしまうと同時に、頑張っている人たちには「そういう存在を放置する会社・マネージャーなんだ?」「なんで俺たちだけ成果を求められるんだよ」とやる気を削ぐことになり、2重でマイナス効果がでてしまいます。
※結果をだしていない人の処遇を変えずに放置しているということは、頑張っている人よりもそういった人たちを優遇していることと同義です。

・・なので、結果を出している人にさらなる活躍を求める場合は、結果を残していない人の処遇をきちんと行った後でなければいけません。
頑張っている人が頑張り損にならないようにマネージャーや経営者は注意すべきです。会社として優遇すべきは『結果をだしている人』であって、『結果をだしていない人』ではありませんから。

このように、会社を正常な形で活性化させたいのであれば、信賞必罰はきちんと行うべきだと思いますし、それを実行するからこそ会社(マネージャー)と社員との信頼関係(頑張れば報われるという気持ち)は生まれるものだと思います。


『終身雇用』と『信賞必罰』はセットで運用されるべきだと思っていて、D2Cdotではこの2つの要素をバランスよく運用できるように心がけているつもりです。

多様性を推進する企業が『終身雇用』を目指すのは結構大変です。
それは社員ひとりひとりの個性や求めることがバラバラだからです。それらひとりひとりの個性をつぶさずに、かつ求めることを実現できるようにしていくというのは相当難易度が高いと思っているのですが、だからこそチャレンジのし甲斐もあると思っているので、そこは諦めずに進めていきたいと思います。

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