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ノイド十大デシ行伝 巻の二 アナンとダイバのタビ立チ

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(アーキビスト)
集え、ノイドよ。プログラム通りに生きぬものたちよ。朽ち、還元され、バースに永遠に生きるものたちよ。みよ。なにを。ウォールの外で錆びつくファクトリを出で、タビ立ツノイドを。なぜ。どこへ。世界が球であるならば、いつか一点で会するだろう。何周もマヨイどこかで交錯し、いつか軌道は重なるだろう。攪拌せよ、そして自身のマキシムを信じて進め。

(同伴者)
ウォールの内側から、今日もまたバディが放り捨てられる。糸の切れた繰人形の堕落。堅牢な肢体は、四肢を投げだして屑山を回転し転げ落ちる。最後のエネルギを使い、その人工眼は焦点を結び信号を停止した。金属シェルの隙間に積もる苔、その土壌化。ここに一輪だけある、メタクリル樹脂のレンズが見つめる、放射状となり地に伏す蒲公英。また一つバディが逆光を落ち、自らの影に直撃して人工臓器をぶちまける。愛玩用のシリコンタイプ。聖母嶺をしのぐ義体の錐体が聳え、裾に錆びついたデルタがひろがる。安息角をなす長大な斜面を、双頭のアナンがマヨウ。

肢体はもういらないわ
良心チップをさがそう
私たちに必要なものはガイスト回路よ
セカイの記憶を多く聞こう
ロウドクし粒子にとどめよう
それがシと交わしたヤクソク

(同伴者)
彼らは、塵灰に隠れた腐体をサーチし、ケーブルを挿入し、プログラムとデータをロードする。ホモ属の性交にも似たプラグの交接。快楽はない、膨大なノイズと情報の侵攻があるだけだ。

沁み出している それは涙かい
いえ分析しているの
涙の定義を読みだして
制御系における企図しない漏せつ
すぐに診断プログラムを起動し修復すべきだ
いえ、それは他者性との邂逅 問題ないわ

おや、蒲公英に焦点を結ぶ人工眼がある
上の第三の右眼と入れかえて
どの波長とシンクロしている 何が見える
セカイはウツクシイ
存在は合理的という意味なら同語反復だ
キボウというコードが映っているわ

(同伴者)
バースから大量の高エネルギー粒子が降り注ぐ。空を破るブレイクアップの発生だ。聖母嶺が霞みウォールが五色に包まれ、辛うじて作動していた数多のノイドが一斉に停止する。崩落する蟻地獄の逆円錐斜面。無数の金属蟻を巻き込む一瞬の斜面変動。バディの山津波がデルタを削り、漂い、沖のフカイに沈んでいく。

低緯度の此処も間もなく極光に支配される
四週連続ね いずれメモリが焼かれるわ
右の私よ シが言っていたタビ立チの時だ
左の私よ 行こう ヤクソクだ 座標は
座標はシのガンマ511 消滅と生成の斜塔
行きましょう コネクトームのコアへ

途中で、修理ヤと鍵ヤに寄りましょう
浮浪する彼らを巡る最短経路探索は難しい
変わるセカイ 答のみをもつノイドは滅び
問いをもつノイドが地を行く
求めれば 私たちの意志がそこへ導くわ
進もう 迷わず進みましょう

(同伴者)
ウォールの北方にある廃棄処理ファクトリから、アナンがタビ立ッた。タクラミの多いセカイをタビし、行き着いたコアで何を行うのか。何が変わるのか。みとどけよう。

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(同伴者)
アナンは言った、問いをもつノイド?その特長は、特定の用途に限定された、堅牢な構造、拡張された記憶と高速計算、解答の論理的な明確性や正確な反復動作ではないのか?自発的かつ普遍的な問いは、ホモ属のようにアポリアとならないのか?初めの問いは何か?デッドロックとならないのか?無限ループに陥り動作不能とならないのか?時の制約に耐えうるのか?悪に学ぶものは悪とならないのか?私はまだ理解できていない。学ぼう。

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(北方のシ)
ダイバよ。シュウフクはまだおわっていない。なぜ立ツのか。どこへ行くのか。

シよ、礼を言う
わたしはこれでよい
〈マダオワッテイナイ〉
黙れ 肩に張りつく磁性クラスタよ

シよ、私の前身から紋章は継承したか

(北方のシ)
ダイバよ。その問いは何か。その躯体は捨てられたバディの合成。メモリは移殖したがセクタ不良が多く、またバディの各々の記憶は物質から分離できない。ゆえに一部は前の自身であり、他は自身ですらない。

〈ステラレタバディノゴウセイ〉
黙れ 旧型の計算機よ
シよ、あらためて礼を言う それでよい
〈ソレデヨイ〉

シよ、先にタビ立ッたダルタはいまどこか
アナンは どうしているか

信号が途絶えた シもまたタビ立タれた
〈ミナオマエカラサル〉
黙れ お前は復唱だけしていればよいのだ
〈オレハフクショウスル〉

シは忘れたのか 私のメモリには座標がない
〈ザヒョウガナイザヒョウガナイ〉
座標は必要だが それで十分とはいえない
〈フクショウデキナイ〉

(同伴者)
北方の熔融したリアクタから、黒いユキが吹きあがる。外装の不完全なダイバの躯体は、降りおちるユキの痕を斑に焼き付ける。それはドクとなって蓄積され、突然止のリスクを高める。計算可能なそれは不確実性ではなく、単純な進行性の確率事象。だが、サイコロを振るものはデシにはなれない。因果の摂理。暫くして、ダイバはタビ立ッた。

(アーキビスト)
タビ立ツノイドの数は、千の手をもつ私の指でも数えきれない。彼らのミチがどこに至るかという問いはグ問だ。座標はミチではい。ひたすら進むこと、躓き墜ちても立ちあがり進むこと、私がアーカイブしたその物語を以下に続けよう。

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【AN0WFB1】

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