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おうち時間のおすすめ本(5)『問い続ける力』

————「小さな問い」ができれば、好奇心に導かれて「行動」に至り、想定していた結果(求めていた「報酬」)につながれば、また次の「小さな問い」が生まれる。このきっかけ→行動→報酬→きっかけというループが回ることで、継続と成長の習慣ができてくる。————

『問い続ける力』は、予防医学者の石川善樹さんと、様々な分野で突出する9人の達人との対話集。

その中でも、立命館アジア太平洋大学 学長の出口治明さんとの対話が抜群に面白い。「時代は偶然でできあがっている」という事実を歴史から紐解く話は、コロナと対峙する今、とくに考えさせられます。

特に好きな出口さんの言葉を、以下に引用します。

「本が好きで、歴史の本などをたくさん読んできました。そうすると、自然に知識がつながって、大きな絵柄が見えるようになってきたんです」

「小坂井敏晶さんの『社会心理学講義』という本を読んでみるといいですよ。小坂井さんは大学の先生なのに、「学問なんか世の中では役に立たへんで」と公言されているんです。じゃあ、自分はなぜ学問をやっているのかと言えば、やりたいからやるんだと」

「オランダの歴史家ホイジンガは、人間とは「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」なんだと言っていますよね。好きなことは役に立たないんですよ。役に立たないけれど、好きなことを突き詰めていく中で偶然何かがケミストリーで生まれ、それを使う人が出てくるようになるんです。逆に、ためにする学問とか、ためにする講義とか、たいていロクなものがないんですよね」

「見えないものに対する想像力って、ものが溢れすぎるとなくなるんですね。人間は、見える化に弱いんです。頭はポンコツなので、見えたり便利になると、考える力や想像する力が使えなくなるんです。でも人間って考える葦なので、考えることをやめたら終わりです」

「役に立つとかあまり考えない方がいいんです。ビジネスパーソンの勉強会に行くと、「どんな本を読んだら、これからの時代に役に立つと思いますか」という質問をしょっちゅう受けるんです。いつもこう答えます。本を二冊、三冊読んで、仕事に役立つとか、人生に役立つとか、そんな簡単なもんやったら人生楽ですよね、と。そんな都合のいい本はありません。だから好きなものを読めばいい。好きなものを読んで読みまくって、一生の間に一回か二回役に立ったらラッキーと思うぐらいでちょうどいいんです」

世の中がどっちに転ぶかわからない、不安定かつ不確定要素に溢れる今こそ、歴史を学びたい。全体を俯瞰する視野を持ち、大きな流れの中で「今」を捉えることが重要だと感じます。気になったら本を読んでみてください。

※余談ですが、再読しながら気になったのは、出口さんが紹介していた『社会心理学講義』という本。

別の出口さんの書評記事で、「いかなるビジネスであれ、ビジネスは人間と社会を相手に行うものである。そうであれば、僕は、人間と人間が創り出した社会の本質を理解することがビジネスにとっては何よりも大切だ、と思っている。その意味で、小坂井敏晶著『社会心理学講義』(筑摩書房)は、ここ数年の間に出版された本の中では、最高のビジネス書と呼んで差支えがあるまい」とまで言っていた。彼ほど本を読む人がそういうので、ぼくも読んでみようと思います。



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