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キャディに入るときに思い出していた言葉

キャディにJoinしてちょうど一年経ちました。
この一年の間に採用に携わる機会が結構あり、時々聞かれることがあります。

「なんでキャディに入ったんですか?」っていうやつです。
キャディを見極めたいという方が、少し前まで同じ立場であった自分にそういうことを聞きたいという心境は自然なことだなと思います。

自分としてはその答えはいくつか重要なポイントがあります。
その中の一つについて、聞かれたタイミングでは思い出せずうまく話せなかったのですが、最近そういえばそんなこと考えてたなという話、というか言葉があり、それについて書こうと思いました。

結構僕はソフトウェアとかインターネットの領域や、そこでどんどん新しいことが生まれていくというのが好きで、新卒で入った前職もそういうもののど真ん中だったりします。

そこであった課題感として、やっぱりそういったテクノロジー領域で日本発で世界に広がっているプロダクトが乏しい、ということがあり自分もそこに対して何かしら貢献したいという思いもありました。

構造的な問題

で、これっていくつか構造的な問題があって(まあ大体すでによく言われていることなのですが)、一つはマーケットの問題です。

ピュアテクノロジーの領域では、多くにおいて比較的国を超えて同じプロダクトを提供できるものがあります。逆にそういうプロダクトが世界に広げられるわけですが、初期のマーケットにおいて、英語圏全てがターゲットにできるのか、日本だけなのかは大きい問題です。
よく、ハリウッド映画と邦画の対比でも言われたりすることですが、そもそも想定できるユーザーの規模が違うのに、フォーマットが同じものの場合、単位あたりにかけられるコストがそのまま差になってきます。
映画なら、1秒あたりにかけられるコストだし、ソフトウェアならコード一行あたりにかけられるコストです。
100万人に見られることが想定できる映画と、1億人に見られることが想定できる映画では、1秒あたりで回収できる収益が違うので、ぶっ込める製作費がもちろん変わってきますよね。
それによってプロダクトの差がでやすいということです。

2つ目はリソースの問題です。
エンジニアの採用に携わるとき、CTOの小橋と一緒にやることが多いのですが、彼はシリコンバレーで長年働いており、向こうの採用についてももちろんよく知っています。
基本的にUSではソフトウェアエンジニアの採用要件にはコンピューターサイエンスの学位が入ってきます。
GAFAMの全てがあり、その他にも多くの世界的なソフトウェア企業が大規模に採用している中、その高い採用基準でも十分量採用できてしまう人的リソースは、やはり大きなさを付けられています。
そういった出口があるからこそ、多くの若者もその道を学びにいくし、世界からも集まってくるわけで、加速度的にエコシステムの差が広がってしまいます。

で、今やこれから世界でこういう領域で世界で戦おうっていうプロダクトをくさすつもりは全くありません。メルカリやスマートニュースにはまじで頑張って欲しいなと。

ただ、こういう戦いが難しいものであるのは事実です。
USや中国にどんどんプロダクトがでてきて、日本にも入ってきて、僕らもそういうのをやらなきゃっていうのは、ちょっと人が作ったエコシステムやルールに後から乗って勝負するっていう感じもあります。
特に、インターネット産業が成熟して、Big Playerがより強くなってきている中ではより顕著です。

キャディに入るときに考えていた言葉

僕は元サッカー日本代表監督だったイビチャ・オシムがめちゃくちゃ好きで、多分関係する本で日本語訳がでているものは大体読んでいると思います。

キャディに入るときに考えていた言葉は、そのオシムが日本代表監督に就任するときに発した

「わたしは日本サッカーを日本化するつもりだ」

という言葉です。

フランスがワールドカップで優勝するとフランス人の監督を招聘し、ブラジルが優勝するとブラジルの監督を連れてくる。その時々で「欧州化」しようとしたり「南米化」しようとしたりしたきた日本に対して、結局もともと持っている強み弱みが違うのだから、そろそろ自分たちのストロングポイントを生かせるサッカーを見出していく頃合いだということです。

これがとても重なるなと思ったんですね。
日本の製造業は、わかりやすい白モノ家電のような領域で近年衰退が激しいですが、一方で産業装置や重電領域ではまだまだその強さを保っています。

製造業 x テクノロジーの領域で勝負することは、そういう日本の強いアセットによってレバレッジされた日本らしいテクノロジー領域の戦い方なんだと思いました。

もちろん、一丁目一番地は、「誰のどんな課題を解決するか」であって、そういう勝ったとか負けたとかそんな話じゃないんですよね。キャディで言えば「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」が一番大事なことで、別に戦争してるわけじゃないので、それを忘れないことが何よりも大事です。

ただ、製造業における原体験を入社当時持たない僕が、エントリーの理由として、業界を救いたいんです!みたいなことをいうのも明らかに浅いというか嘘っぽいわけで。

別の観点で言えば、おそらく確実に「IT業界」みたいなものってなくなっていくんですよね。
すべての会社がIT企業になっていくからです。
経理や人事といった機能が、ほとんどすべての会社にあるように、テクノロジーはデフォルトのものとして溶け込んでいく。

そういう未来において、テクノロジー人材が乏しいということは国として致命的なわけです。そしてそういう人材を継続的に生み出していくにはエコシステムが回り続けないといけない。
エコシステムが回るためには「稼ぐ」ことが必要で、そのためにはテクノロジーを何かしらの産業で何かの「価値」にしっかり転化することが必要です。研究開発費的なものももちろん重要ですが、そういう助成的なものだけではなく、独立自尊として「稼ぐ」ことです。

そうして稼ぐことができ、それがエコシステムに還元されるからこそ回り始め、成長の源泉になっていく。より多くの優秀な人がそこにエントリーし、育って特定の産業だけでなく、他の産業に伝播していく。

そういうコンテキストの中で、製造業はとても大きく、まだまだ未開拓であり、何よりとても「日本的」な場所だと思っているという話です。


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