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2年目社員が他社の倍の金額で受注するまで

このnoteの概要

こんにちは、村井庸介です。
就職や転職における内定取り消し、自宅待機が増え今後のキャリアについて悩む方の話を聞く中、僕が世の中に貢献出来ることは何かと考え、働き方・キャリアについて、出版した2冊の著書をもとに、このnoteを始めました。

前回に続き、GISOVという仕事の「型」の活用事例を今回もお届けします。今回は僕の新人に近しい時代の話です。若かりし社会人でもできた事例なので、どの世代の皆様にとってもお届けしやすい内容かもしれません

社会人2年目で、初の営業提案

外資系のコンサルティング会社と異なり、野村総研では、競合と比べると小さな規模のプロジェクトも受注する社風がありました。プロジェクトリーダーとして、顧客と折衝する経験を若かりしときから積んで、上司や更にそのうえのリーダーの感触を少しでもつかんでもらいたいという、教育的視点もありました。

そして、僕が初めて営業提案する相手は大手通信会社でした。テーマとしては、非常に焦点が絞られたため、小さなプロジェクトでしたが、相手は上場会社の中でも上位に位置する大企業です。

当時としては画期的な新技術、簡単にいえば携帯端末を遠隔操作でロックする技術を、海外企業との共同研究で開発していました。

IT系の会社ではよくあることなのですが、新技術ができたのはいいけれど、それをどんなビジネスとして展開していいのかよくわからない。

それを提案してほしいという案件で、3、4社のコンサルティング会社によるコンペになりました。要するに、新規事業プロジェクトを、競合他社に競り勝って受注するという案件です。

通信会社の窓口は、マーケティング、営業企画部門になります。背景として、この会社は当時、対法人営業があまり強くはありませんでした。新技術を使って、できれば法人顧客を攻めていきたいという意向があったのです。

私は上司と2人でこの案件に携わることになりました。まだ2年目になって間もないため、新人とあまり変わりありませんが、プロジェクトの実行責任者として提案活動に関わりました。

しかし、初めての顧客訪問の時に、聞いた予算を踏まえて上司との帰り道の話でたのが「このプロジェクト、うちだったら倍の値段じゃないと提案できないな」でした。

ただでさえ社会人経験豊富な他社の提案担当者に2年目のペーペーが単価倍の値段で受注を取りに行くコンペプロジェクトが始まったのです。
(上司が先方担当者と以前別プロジェクトで関係性があったなど、当然ゲタははかせてもらっていましたが)

提案までの短期決戦。決め手はゴールとイシュー

コンペの競合の提案の骨子は、ある程度、先方の担当者から途中経過を聞いていました。それは他社も同様です。したがって、お互いに競争相手といかに差別化できるか、そして顧客の実現したい姿にどうすれば最も近づくかが受注のポイントになったのです。

この事例では、ゴールとイシューの見直しが勝負を分けました。

「目的達成する上で、この視点が欠けていませんか? すると、課題も変わってきますよね」という提案が、相手に驚きを与えました。
(お客様の前では、ゴールやイシューといったカタカナ語は使わず、あえて日本語で話をする。こうした気配りもGISOVの活用には大事なTipsだったりします。)

「なるほど、その発想はなかったけれど、野村総研さんの言う通りだ」と、いわば盲点を指摘したことが受け入れてもらえ、当初上司の予言の話にあった「他社の2倍の金額」であっても受注できたのです。
先方の担当は当初の予算を超える金額となったので、社内承認を再度とっても、我々に発注してくださりました。

新技術サービス検討の提案で使った「型」

このプロジェクトの特徴は、「先に技術がある」ということでした。
よくあるのは、先に市場調査を行い、顧客ニーズを把握して、その市場に合わせた商品を開発するものです。
しかし、この当時の状況は、売る商品の候補が先にあって、どこでどうやったら本当に

売れるか、という順番なのです。

私は、その違いを踏まえることこそ、受注のカギと考えました。

G:ゴール 
新技術を使って、国内のお客さんに新たなサービスを展開する

技術はすでに完成しています。類似サービスが存在しない、独自の技術ですから新鮮味はあります。
なお、海外企業との共同技術開発でしたが、想定顧客は国内です。

正確に言えば、先方の担当者が上司から新規プロジェクト案の承認をもらい、そのプロジェクトをやりきるところまでがゴールでした。


I:イシュー 
そのサービスに対するニーズは本当にあるのか。あるとしたら、どこにあるのか。市場や想定顧客に対する仮説が未検証であり、正しいかどうかが不明

この案件で、競合他社に勝つことができたカギが、イシューでした。

技術ありきの話であるため、ビジネス化したいというゴールがそもそも正しいのか、根拠があるのかどうかが明確ではなかったのです。
つまり、顧客ニーズの調査・検証という視点が欠けていました。

もちろんクライアントには、「たぶん、○○できたら、会社で使っている端末を安全に管理できるよね」という漠然とした見込みがありました。
だからこそビジネス化しようとしているわけですが、そこに落とし穴があることに気がついたのです。

そこで「まずはお客さんの中に、今回の技術に対してどのようなニーズ、利用シーンがあるのかをきちんと調査をして、科学的に明らかにしましょう」というのが私の提案の骨子でした。

調査結果によって、ターゲットとなる市場の大きさも当然変わってきます。ビジネスそのものの性格が変わってくるわけです。

S:ソリューション 
定量的なアンケート、市場成長性のシミュレーション、消費者に対する定性的なヒアリング、商材と販売代理店との相性などの調査を行う

そこで私たちが提案したソリューションが、定性・定量両面からの徹底的な市場調査です。調査は、野村総研が得意とする分野でしたから、そこに特化すれば強い、勝てるという目論見もありました。

まず、アンケートや独自資料などにもとづいた定量的な検証です。このビジネスの市場規模は将来どれくらいに膨れ上がると予想されるのか。

そこに競合が参入してきた場合には、どれだけ市場が拡大して、クライアントのシェアは何%になると予想されるのか。競合が入って来るまでに、どれだけ市場を広げられるのか。

先方は、「なんか、そんなサービスがあったらぜひ導入したいと言っている顧客がいるよ」という感じで、定性的に市場をとらえていました。

そこに「きちんと定量的な面(精度の高いアンケートや調査の結果)も見ましょう」という提案したことが、受注につながった要因のひとつです。

同時に、見込み顧客の会社に行って、先方の事業部長さんに「こんなサービスがあったら、どのようなシーンで利用しますか? それに支払うことのできる対価の値段レンジの考えを教えてください」という定性と定量を兼ねたヒアリングも同時に行います。

さらに、今回の通信会社は、端末やサービスの販売の多くを代理店に委託していました。今回の新サービスは、代理店が売りやすいものなのかどうか、つまり販売ルートの調査を行うことも提案に盛り込みました。

O:オペレーション 
各種調査の実行計画、ヒアリング先のリストアップなど

この場合は、調査の具体的な実行計画です。
とくに重視したのはスケジュールです。アンケートの設定とヒアリングは同時平行で行うなど、プロジェクトの時間軸を明確にしました。要するに、調査結果が明らかになるまでのスケジュール、アウトプットが得られるまでの期間の裏づけです。

クライアントは最終的な解決を待っていますから、「こうやったら、いつまでにできます」という内容と納期を明確にしたのです。

V:バリュー 
独自の調査を行っていること、ヒアリング先をすでに持っているなど、信頼性の高い調査が可能である

ここでアピールしたのは、野村総研が「調査のプロ」であるということです。もちろん、競合する他社をにらんでのことでもありました。

過去の調査案件の実績を並べて、「とくに先進かつニッチな分野における調査に関しては、他社と比べて野村総研が強い」ことを示しました。

ふたを開けてみると、他のコンサルティング会社は、クライアントから言われた通りの作業内容に基づいて提案してきていました。
いわば、ゴールとイシューに、何の驚きもなかったわけです。

野村総研の提案には、想定していなかった視点が盛り込まれていて「驚き」があった。それが、2倍の値段でも受注できた決め手となったのです。

出展:どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」

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