仕事に慣れてきた後の提案のコツ
このnoteの概要
こんにちは、村井庸介です。
就職・転職における内定取り消し、自宅待機が増え今後のキャリアについて悩む方の話を聞く中、僕が世の中に貢献出来ることは何かと考え、働き方・キャリアについて、出版した2冊の著書をもとに、このnoteを始めました。
転職や異動ののち、ひとつの仕事、プロジェクトが一段階して、「信頼残高」が貯まったら、いよいよ仕込んでいた提案のタイミングです。
ここでは、新規の取り組み・挑戦や、会社全体の方向性にも関わるような「大きな提案」をする際の注意点をお話しします。
出来てるようで出来ていない何か
Gを見つけるコツ:全体を見て、何のピースが足りないのかを考える
仕事が1サイクル終わるくらいになると、会社になじんできます。人間関係はもちろん、会社の仕組みや仕事の進め方、風土・文化、取引先の様子などが、だんだんわかってくるでしょう。
どんな会社にも必ずゴールがあります。言葉になっていないこともありますが、必ずあるものなのです。
「そもそも会社のゴール設定がおかしい」「部署のゴール設定がおかしい」という大幅な見直しを無理に見つける必要はありません。
それよりも、
・この部署は、実はさらに上を目指せるんじゃないか
・この工程はもっと合理化できるんじゃないか
・こういう方向にも手を出す余地があるんじゃないか
といった、会社全体を見渡して、「本当は達成したいとみんなが思っているのに、まだできていないこと」を見つけることをおすすめします。
例えば、1か月かかっていた分析が1週間でできるようになっていると、その組織では、十分ゴール達成できたように見えますが、マクロを使える人からみると1時間で出来るといった、こともあります。これを達成すれば、会社は目指すゴールに対して、より多くの時間を投資に回すことが出来ます。
その他、ゴールに向けて余裕のある戦いを続けている会社は、ほとんどありません。数字の達成などに精いっぱいで、「本当はこんなこともやりたいのはやまやまなんだけど、いまは余裕がなくて……」という手つかずの業務が、社内にいくつも落ちているはずなのです。あるはずだと思ってアンテナを張っていると、見えてきます。
いま走っているものに、プラスαでできるともっとよくなること。
会社や部署のゴールに近づくことが、ちょっと楽になるような「ゴールの手前のゴール」。現場で必要とされている提案とは、案外そういう視点から見つかることが多いものなのです。
分かっていてもやれてないこともある
G及びI設定のコツ:「やったほうがいい」けれど「やれていない」こと
このことを踏まえると、イシューは「やったほうがいいなとみんなが思っているけど、やれていないこと」が大半だということです。
理由としては、人が足りない、お金が足りない(ほかのことにお金を優先的に使いたい)、知識・経験がない、やっても成功する確率が低い、あるいは責任が取れない……といったことでしょう。
たとえば、メガネチェーンにおいて、
・宣伝費がかけられない
・でも、なんとか新規顧客を獲得、拡大したい
というイシューは、会社の中に潜在的にあったわけです。ゴールとも合致しています。
しかし、「じゃあ、どうすればいい?」「経験がある人はいないけど、誰がやる?」というところで止まっていました。イシューが埋もれてしまっていたわけです。
たまたま私には、カードとの提携という具体的なソリューションが見えており、人脈や知識も持っていました。「これだったらできるな」と思った段階で、「じゃあ、私がそれをやります」と手を挙げたのです。
これは結果論になりますが、私が転職していきなり「○○カードと提携しましょう」という提案をしても、却下されるか、仮に承認されたとしても、うまくいかなかったかもしれません。
ポイントは「信頼の残高」です。転職して、ひと通り与えられたタスクをこなし、さらに現場応援に参加するといった行動をとることによって、私に対しての会社の「信頼の残高」が積み上がっていました。だからこそ「やらせてみようか」となったのでしょう。
「信頼の残高」が貯まっていると、ひとつ上のステップの提案にチャレンジすることができます。つまり、仮に失敗したとしても、それだけで自分の評価が大きく下がるわけではないという保険が効いているのです。より正確にいえば、評価が下がったとしても、まだ「信頼」の貯金があるわけです。
「やったほうがいいけれど、やれていないこと」を提案することは、自分にとっても会社にとってもチャレンジです。チャレンジの地盤を固めて、用意周到に成功確率を上げる工夫をした上でやってみる。そこに提案の価値があります。
もう一点、注意してもらいたいことがあります。目に見えていない大きなイシューは、そもそも存在しないこともあるということです。
これは、会社全体がすでに共有しているゴールやイシューが、まだまだ解決の途上にある場合です。あらためて提案をするまでもなく、いま取り組むべきイシューに、すでに着手しており、なおかつそのイシューが最優先事項である場合です。
言い換えれば、「いまやっていることを継続すれば、共有している問題は解決できる」「目新しいことに取り組むフェーズではない」状態です。
その場合には、新規の提案を持ち出す必要はありません。むしろ視点をミクロにして、目の前のイシューを分解してみて、より速く、より効果的に解決できる方法を考えたほうがいいでしょう。仕事にはそういう段階もあるのです。
既存の仕組みを変えることは怖さを伴うから
Sのコツ:上司の「やらない理由」を徹底的につぶす
「やったほうがいいけれど、やっていない」ことがある場合、、上司・マネジャーが、「うーん」と二の足を踏んでいることもあります。彼等には、彼等なりの日々役員等から降りてくる課題を優先順位をつけながら対処しているので、その優先順位をなかなか変えることは難しいでしょう。
なので、ソリューションを考えるにあたっては、上司の立場になって「やらない理由」を考えます。それを徹底的につぶし、なくしてしまうのです。
その際は、「何をやるか」も大事ですが、有効なのは、「何をやるとどれだけ成果が出るのか」を必ず数字で示すこと。具体的には、そのソリューションを実行することによって、次の点がどうなるかを試算します。
・どれだけ売上が上がるのか
・社員の労働時間がどれだけ減るのか
・コストをいくら下げられるのか
・納期がどれだけ早くなるのか
提案とは、既存の仕組みを変えることです。しかし、変化にはリスクがあります。上司が恐れるのは
「現状でもそこそこできているのに、変えることによっていまよりも悪くなる可能性があるのではないか」
「コストをかけて変えた結果、いまと同じ結果が出ない可能性があるのではないか」
ということなのです。
そうした危惧を解消する際にいちばん信憑性があるのは、数字による試算結果です。だからこそ、試算に必要な数字は自分で調べ、とくに重要な数値は徹底的に集めます。関連部署に聞きに行ったり、あらかじめ取引先にヒアリングしたりします。
もうひとつ、上司の「やらない理由」をつぶす方法があります。それは、仮にうまくいかなかった場合の「逃げ道(バックアップ)」も用意しておくこと。具体的には、提携先との契約解消の条件を、自社の負担が少なくなるように交渉しておくといったことです。
上司が石橋をたたいて渡りたくなるのは当然です。一歩踏み出して、新しいことに挑戦する際、リスクを考慮するのは上司の役割ですから、慎重にならざるを得ません。それならば、たたいても簡単には壊れない石橋をつくっておく、あるいは壊れたとしてもすぐに代替できる石橋を用意しておくことで、不安を可能な限り安心に変えればいいのです。
納期説得も重要な仕事
Oのコツ:「これくらいは時間がかかる」ことを社内で納得させる
新しいプロジェクトの立ち上げといった、誰も経験していない新しいチャレンジを提案する場合、いちばん予測が難しいのは納期です。
ざっくりいうと、3カ月以上くらいのプロジェクトの場合、思いがけず納期が1~2カ月程度の範囲でずれることは、実はよく起きるのです(本来はあってはいけないですが)。
当然、ある程度のバッファを見込んだ納期を設定することになるわけですが、3カ月以上かかる場合は、あらかじめ「3カ月が5カ月になることもあります。それくらい大きなプロジェクトなのです」ということは伝えておく必要があります。
もちろん、3カ月と見積もっていたのに、2カ月で結果を出すことができたのなら、誰にも不満はありません。
これは、提案の相手となる社内の上司に対するエクスキューズという意味だけではありません。ともに働くメンバーたちにも理解しておいてもらう必要があるのです。
時間はモチベーションに大きく影響します。「3カ月で終わる」と聞いていたからがんばったのに、予定の時期が来ても終わる気配がない。ずるずると4カ月目、5カ月目に入っていくと「どうなってるの?」「そろそろ限界……」と感じ始めてしまうものです。
本来、新規のチャレンジとは、とくに納期に関しては計画通りに進まないことが多いのですが、そのことを事前に納得してもらえているかどうかが重要だということです。
いままで誰も手をつけなかったイシューを解決することには大きな意義があります。その意義を十分に理解してもらい、「その代わり、想定外に時間がかかることはありえます」ということも提案の時点で納得してもらう。
場合によっては正直に、
「これは誰も経験したことがないチャレンジですので、時間がどれくらいかかるのか、私にも正確には予想ができません。3カ月で成果が得られるだろうと予測はしていますが、場合によってはそれ以上かかる可能性もあります」
と表現したほうが、結果的に提案の重要性も伝わることになるのでベストなケースもあるでしょう。大きな提案ほど、納期の予測は慎重に行うべきなのです。
Vのコツ:「なぜこの課題に取り組みたいのか」を表現する
「社内で一個人として実務に関わってきた中で、このイシューが見えたからこそ、自分はこれを提案するのです」という、提案の背景になる想いは、必ず何らかの形で伝えます。それがバリューです。より細かく言えば、
・入社以来、一緒に働く中で「これはやらなきゃいけない」と思った
・肌感覚でも感じたし、さらに論理的にも説明がつく
・自分の経験を活かせば、解決できるはずだ
という論理です。
なぜ自分がこの課題に取り組みたいのか、この会社にどうなってもらいたいのか、なぜ自分ならこの課題を克服できると思うのか―その理由を自分の中で掘り下げていくわけです。
すると、それがそのまま、上司があなたの提案を承認する理由にもなるのです。たとえば、従来になかった新しいことを提案する場合、当然、「いままでやらずにすんでいたのに、そもそもなぜそれをやる必要があるの?」という意見は出てきます。
そのときの説得材料は、「その結果、この会社全体にこういうふうに役に立ち、よくなっていくはずだ」という根本的な仕事に対する姿勢であり、想いです。
これは理屈やスキルではありません。提案を通すための方便であってはなりません。日ごろから、「もっとよくしよう」「みんなでよくなろう」「喜んでもらいたい」と考えていなければ言葉にできないことです。
このnoteでも繰り返し言ってますが、バリューは自らの経験の賜物であり、仕事観です。他社の真似などせず、その仕事観を素直に表現すれば大丈夫です。
出展:どんな会社でも結果を出せる!最強の「仕事の型」
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