『おかしな人間の夢』フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー著 太田正一訳【ワンマンビブリオバトル】

 今回ご紹介する本は、ロシアの世界的な文豪、フョードル・ドストエフスキー著『おかしな人間の夢』です。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ドストエフスキーと言えば『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』が有名です。このどちらも長編で文庫本でも2〜3冊に及びます。ところが今回ご紹介する『おかしな人間の夢』は短編です。恐らく1〜2時間あれば読了できるかと思います。ですから、ページ数は少ないけれど人生を揺るがすような読み応えのある本を気軽な気分で読んでみたい、という方には絶対お薦めです。また気軽に読めるのに、この本には人類の歴史が凝縮されています。人間と宇宙や魂に関する指南書です。それからドストエフスキーは、大雑把に言って今から150年程前に活躍した作家ですが、この本の内容は全く古さを感じさせません。むしろ漸く時代が本に追いついたと言えます。また言わずもがなドストエフスキーの筆力も大変素晴らしく、鋭い観察眼で的確に簡潔に、まるで目の前で話してくれているかのような臨場感をもってストーリーが展開していきます。清濁併せ呑んで最後は少しだけ光の方へ踏みだす、といったドフトエフスキーのエッセンスがつまっています。
 では、読む方に影響のないように簡単にあらすじをお伝えします。主人公、恐らくドストエフスキーと思われる人物"おれ"が語り部です。この人は冒頭から「おれはおかしな人間だ」と宣言し、滔々と自分の見た夢について語り始めます。"おれ"が夢の中である謎の存在に連れられて理想の世界を垣間見てきます。そしてそこで"おれ"はあることをしてしまいます。ここがまたドストエフスキーらしいところなのですが、何をしたかは読んでからのお楽しみです。ですからこれ以上はここでストーリーについてお伝えするのをやめておきます。でもとにかく読み終わるとなぜか深い癒しと不思議な勇気に包まれ、そして大きな愛に基づいた小さな行動をおこしたくなります。人を助けたくなります。
 さて、先程申しましたように、漸く時代が本に追いつきました。今でこそ読むべき本です。なぜ今の時代にふさわしのかと申しますと、この本は、解釈のしようによっては"おれ"であるドストエフスキーが未来、もしくは過去の地球を見てきたとも、また他の次元に存在すると言われるパラレルワールドの別の地球を見てきたとも、さらには他の惑星を見てきたとも言えるからです。ドストエフスキーを導いたのは何らかの精霊かもしれませし、宇宙人だったかもしれません。様々な解釈が楽しめるところもこの本の魅力です。
 少し前に『君の名は』という映画がヒットしました。あの映画でも夢がとても重要な要素になっています。過去と未来、パラレルワールド、他者の世界を行き来します。夢のなかでは実に様々なことが起こり得ます。夢なのか現実なのかわからなくなります。夢は時空を簡単に超えてしまうようです。また『アバター』という映画では眠ることで人工の異星人の肉体に入り自由に動きまわりました。
 一方最近のもうひとつの傾向として、他の惑星の知的生命体や、過去世、未来世といった話題について臆することなく公に語る人が増えてきたとも言えます。もし今の時代にドストエフスキーが生きていたら、UFOに乗り他の惑星へ行った体験記を『カラマーゾフの兄弟』のような壮大なスケールとドラマで描いていたかもしれません。その本のタイトルは『カラマーゾフ星人』といった感じになるかもしれません。こういう宇宙人が実際にすでに存在している気すらしてきます。実はわたしがそのカラマーゾフ星人です、と言ってみたいところです。
 UFOや宇宙人と言いだしたわたしのことを皆さんは少し"おかしな人間"と思うかもしれません。この本をそんな他の"おかしな人間"にも心からお薦めしたいと思います。もしみなさんがまだおかしな人間でなければ、ぜひ読んでみて"おかしな人間"の仲間入りをしてみてください。

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記録によれば1973年に搭乗していた紙飛行機が地球に不時着。その後の漂泊の日々のなかで文学に傾倒していく。お気に入りの一冊はメアリー・シェリー著『フランケンシュタイン』。サージェント・ペーパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドのメンバー。