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Vol.514「〈男系が伝統〉は刷り込みの強化」

(2024.9.24)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…鳥のヒナは、孵化直後に初めて見た動く存在を「親」と思い込んで追いかけるようになり、後でそれを修正することは不可能だという。これを「刷り込み(インプリンティング)」という。そして人間にも、鳥のヒナと大差ない頭脳しか持たない者がいる。人間はあるタイミングで、ある観念に触れて強烈な「インパクト」を受けると、それが絶対に正しいと刷り込まれてしまうことがある。そして最初の「インパクト」が強ければ強いほど、刷り込みはその後も「強化」されていって、なかなか修正が効かなくなってしまうのだ。皇統の「男系男子」に固執する者たちにも、まさにそのような「インパクト」と「強化」による刷り込みがあるのだ。男系固執派が「男系が伝統」という言葉に強烈なインパクトを感じている理由とは何か?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…日本の教科書で勉強すると、フランス革命は「悪い王様を倒して、自由と権利をつかんだ。なんかすごいやん」という印象にしかならない。加えて、フランスのお洒落なイメージに惑わされたり、フランス料理のスプーンとフォークの多さに動揺させられたりして、「フランスすごい。フランス革命かっこいい」という感覚に昇華。そのまま高学歴の道を歩み、気づけば「おフランスざんす病」を発症してしまう人もいる。しかし本当のフランス革命はそんなものではなく、恐怖とパニックに煽られた虐殺に次ぐ虐殺、狂乱そのものだった!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…選択的夫婦別姓となると、今後の苗字は何を意味するために存在するようになる?最近の男系派の言い分は「戸籍」?小泉進次郎の解雇規制の見直し案をどう思う?最旬女優・河合優実をどう見ている?ますます活躍する大谷翔平選手をどう思う?『SHOGUN 将軍』がエミー賞を総なめにしたことをどう感じた?中国の広東省で、日本人学校の男子児童が、登校中に中国人の男に刺されて死亡した事件についてどう思う?兵庫県の斎藤元彦知事を擁護する人が急増している?…等々、よしりんの回答や如何に!?



1. ゴーマニズム宣言・第543回「〈男系が伝統〉は刷り込みの強化」

 鳥のヒナは、孵化直後に初めて見た動く存在を「親」と思い込んで追いかけるようになり、後でそれを修正することは不可能だという。これを「刷り込み(インプリンティング)」という。
 そして人間にも、鳥のヒナと大差ない頭脳しか持たない者がいる。

 人間が「刷り込み」を受けるのは、出生直後というわけではない。もの心ついた後でも、成人してからでも、いつでもそれは起こりうる。
 人間はあるタイミングで、ある観念に触れて強烈な「インパクト」を受けると、それが絶対に正しいと刷り込まれてしまうことがある。
 そして最初の「インパクト」が強ければ強いほど、刷り込みはその後も「強化」されていって、なかなか修正が効かなくなってしまうのだ。
 皇統の「男系男子」に固執する者たちにも、そのような「インパクト」と「強化」による刷り込みがある。

 男系固執派は「男系が伝統」という言葉に、強烈なインパクトを感じている。
 なぜかといえば、単純な話だ。それはその男たちが、女性の社会進出が進むにつれて脅威を感じるようになっていた、弱い男だからである。
 そういう連中はよく「女は家庭にいるものだ」だの、「男女雇用機会均等法が諸悪の根源だ」だのと言うのだが、この主張が全てを物語っている。
この物言いには、社会の中で女性と対等に競争したら、自分の実力では必ず負けるということがわかっていて、だから女性の社会進出を何とか阻止したいという思いが露骨に表れている。そういう者がネトウヨであり、男系固執派なのだ。
 そんな奴らにとってみれば、「伝統とは男系だ!」と言われれば、それはそれは超うれしいだろう。「天皇は男系! それが伝統! 男の血は女の血よりも尊い!」ということにしてしまえば、どんなに自分がバカだろうと、ダメだろうと、自分が男であるというだけで偉いということになるのだから。

 伝統とは男系だと思い込むことで、ダメ男どもは救われた気持ちになる。ダメな自分の存在にどこまでも下駄を履かせて、男である俺の血は素晴らしいんだと思えるのだ。
 しかも、頭が悪すぎて伝統とは何かもわからず、考えたこともなかったのに、それがついにわかったような気になれるわけだし、そればかりか、歓喜で悦に入ることまでできるスバラシイものだから、「これが伝統だったのかー!!」と感激してしまうのだ。
 完全なるバカだとしか言いようがない。しかし、バカであればあるほど、これでものすごいインパクトを受けるのだ。そしてバカほどその刷り込みは強固なものとなり、それは決して変わらない。
 そういう者は自分に都合のいい「伝統とは男系だ!」という情報だけを仕入れ続け、これに反する意見は徹底して遮断する。そうやって、自ら刷り込みをどんどん強化していくのである。

 一方で、こんな男たちに同調する女もいるわけだが、それは、完全にこの世は男社会であり、男に媚を売らないと女は生きていけないものだと、諦めてしまっている女である。実際、今でも日本は至る所に男社会が残っていて、そんな社会で生きていくのは大変だったりもするわけだから、男に媚びて生きていった方が楽だという女も出て来てしまうのだ。
 また、仮に野心を持っている女であっても、実力がそれに付いてこなくて、ネトウヨみたいな奴らにでも担ぎ上げられない限り、自分に成り上がる手段がないとなれば、男尊女卑に同調することになる。
 さらに、多分にマゾ的気質を持っていて、それで男尊女卑を支えてしまう女もいる。どんなに時代が変わっても、女は男に楚々として従っていくのが美徳だという価値観もあることはあるわけで、それがいいと思う女もいなくなることはないのだろうから、それはそれでしょうがないと言うしかない。

 だが、男尊女卑なんてものはあくまでも「因習」であり、本当の伝統とは全然違う。
 何度も引き合いに出す言葉だが、上皇后・美智子さまが皇后時代におっしゃった、
「伝統と共に生きるということは、時に大変なことでもありますが、伝統があるために、国や社会や家がどれだけ力強く、豊かになれているかということに気づかされることがあります。
 一方で、型のみで残った伝統が社会の進展を阻んだり、伝統という名の下で古い慣習が人々を苦しめていることもあり、この言葉が安易に使われることは、好ましく思いません」
という言葉が、全く正しい。本物の伝統観とはこれに尽きている。よくこんなに優しい言葉で表現できるものだと、つくづく上皇后さまの頭の良さに感動する。

 ところが、こういう微妙な説明は、相当に感受性が強くないとわからない。
 バカにとっては、一神教のように単純に割り切ってしまえる考えの方がいいのだ。いちいちモノを考えずに済んで、とっても楽ちんだから。
 本来、多神教の日本に原理主義はないのだが、バカは原理主義が欲しいのだ。それさえ言っておけばよくて、何も考えなくて済んで、それでも自分が高級な人間になったかのような感覚になれるわけだから、これほど嬉しいことはないのである。
 だからそういう人間は「伝統とは男系である!」という言葉にインパクトを受け、それを刷り込まれて、他のことは考えたくないということになって、その観念を強化して、これを原理主義化していくのだ。

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