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Vol.510「早田ひなは“特攻隊を賛美”したのか?」

(2024.8.20)

今週のお知らせ
※「ゴーマニズム宣言」…戦後79年の終戦の日が終わった。年々、規模は縮小しているような感じもするが、それでもテレビ等では戦争に関する番組は放送され、そしてそれが相変わらずの「反戦平和」一色だったので、今年もうんざりした。そんな中、パリ五輪の卓球で女子シングルス銅メダル、団体銀メダルを獲得した早田ひなが帰国後、鹿児島県の知覧特攻平和会館に行きたいと発言し、物議をかもしている。中国・韓国は猛反発、パリ五輪の会場における微笑ましいやりとりが話題を呼んだ中国選手がSNSのフォローを外すなど、国境を超えた友情もたちまち破綻。日本国内のメディアも賛否両論で大騒ぎになってしまった。果たして、この件、何が大問題だったのか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…祖母の新盆のために三重県に帰省したら、母が、テレビでオリンピック総集編を見ながら、しこたまパリの悪口を言っていた。世界各国を旅行してきた母にとって、なんだか「フランスがいちばん最悪」らしい。フランスに抱いていた憧れが、「思ってたんと違う」ことの連続で破壊され、その怒りが爆発した先は“カチカチのパン”!パンの硬さ、小麦の種類1つとっても、欧米人と日本人の違いがあるが、小麦などの農作物がどのように生産されてきたのかという、農耕の歴史を振り返ると、もっと大きな違いが見えてくる。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…『戦争論』の悪意ある切り抜きの拡散をどうにかすべきでは?フワちゃんの炎上をどう思う?長崎市の平和祈念式典にイスラエルを招待しなかったことで、G7をはじめとした欧米各国が出席しなかったことをどう思う?食欲を衰えさせないための、夏ならではの良いおかずは何?先生がフランスを旅行した時の印象はどうだった?和田アキ子がオリンピック選手を「トドみたいw」と言って炎上した件をどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?



1. ゴーマニズム宣言・第539回「早田ひなは“特攻隊を賛美”したのか?」

 戦後79年の終戦の日が終わった。
 年々、規模は縮小しているような感じもするが、それでもテレビ等では戦争に関する番組は放送され、そしてそれが相変わらずの「反戦平和」一色だったので、今年もうんざりした。
 この論調は、未来永劫、決して変わることはないのだろうか?

 パリ五輪の卓球で女子シングルス銅メダル、団体銀メダルを獲得した早田ひなが帰国後、鹿児島県の知覧特攻平和会館に行きたいと発言し、物議をかもしている
 中国・韓国は猛反発、パリ五輪の会場における微笑ましいやりとりが話題を呼んだ中国選手がSNSのフォローを外すなど、国境を超えた友情もたちまち破綻。日本国内のメディアも賛否両論で大騒ぎになってしまった。
 そもそも早田ひなの発言は、「アンパンマンミュージアムに行きたいのと、鹿児島(知覧)の特攻平和会館に行って、自分が生きているのと卓球ができているのが当たり前じゃないことを感じたい」というものだった。
 アンパンマンミュージアムと知覧特攻平和会館を同列に並べている。いかにも23歳の卓球選手らしいというか、何もイデオロギー性のない無邪気な発言だったことは明らかであり、こんなことで大騒ぎして、特攻平和会館に行けなくしてしまうような圧をかけるというのは大問題である。

 それにしても、なぜ早田ひなは突然、特攻平和会館に行きたいなんて言ったのだろう?
 全くの推測だが、おそらく昨年末に公開された映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を見たのではないだろうか。
 わしはその映画については、気にはなっていたものの見ておらず、予告編などの情報しかないのだが、原作は少女向けジュニア小説で、戦争末期の時代にタイムスリップした現代の女子高生と、特攻隊員のラブロマンスらしい。
 見てないから決めつけるようなことも、批判めいたことも書けないのだが、ものすごくロマンチックな感覚で特攻を捉えていて、愛する人が特攻で散らなければならないということで最後は泣かせて、そうして平和は尊いものだよ、今の自分は有難いものだよ、昔は恋愛してもこんな悲劇が待ち受けていたんだよと思わせるような感じの映画だったんだろうなあということは、容易に想像がつく。

 もしそうだとしたら、早田ひながそれを見て、今の自分の幸せを噛み締めたいというような気持ちになって、あんな発言をしたのだろうということは十分理解できる。
 もっとも、そういう感覚は現代における「反戦平和」の特攻の見方そのものであって、わしから見ればさっぱりダメじゃないかと思ってしまう。
 それは百田尚樹が『永遠の0』で書いていたのと同じで、ああ、戦時中にはそんなに不幸な人がいたんだなあ、それに比べれば今の自分は幸せだなあ、といったような実に幼稚な感覚であり、だからこそ広くヒットするのだろうが、そんなのは危険でも何でもない。
 別にそういう幼稚な反応でも、それはそれで仕方がないのだが、とはいえ実際に知覧の特攻記念館に行って見たら、何か別のことを感じるかもしれない。だから、予断を与えてはいけないのだ。誰が知覧に行こうが、靖國に行こうが、どこに行って何を見てきたっていいのだ。
 それに対してマスコミが騒ぎ立てて、知覧に行くことがとんでもないことであるかのようにバイアスをかけるなんてことは、やってはいけないことなのである。

 社会学者の古市憲寿は8月15日、フジテレビのワイドショー「めざまし8(エイト)」で早田ひなの発言について、
「意外でしたよね、その言葉がポーンと出てくるのは」
「特攻があったから今の日本が幸せで平和だっていうのはちょっと違うなと思っていて、むしろ特攻みたいなことをさせない社会にしていく必要があると思う」
「もちろん特攻の記憶を受け継ぐことは凄い大事なんですけど、それにただ感動して泣いて終わりにするんじゃなくて、特攻みたいなものがもう2度とこの国に現れないようにするにはどうしたらいいんだろうって、そういったきっかけになるような、そういうふうに平和を考えることが凄い大事かなって思います」
 などと発言。番組出演後には自身のXで、この発言は早田ひなを批判したものではなく、「特攻隊の話題が出てくるたび、都合よくその歴史を美化する馬鹿な人を批判してるんです」と弁明した。

 しかしどう言おうが、古市が早田の「特攻平和会館に行きたい」という発言に過剰に反応したことに変わりはなく、こんな発言をいちいち気にかけるということ自体、古市が「反戦平和」というイデオロギーに洗脳されている証明に他ならない。
 ましてや、「特攻があったから今の日本がある」という程度の素朴な感覚すら許さず、特攻は全面的に否定しなければならないと思っているのだから、イデオロギーが脳髄にまで達しているようだ。
 古市は「反戦平和」がイデオロギーだということすらわかっておらず、特攻隊に対しては絶対的に否定することだけが「正解」であり、それ以外の見方をする者は「都合よく歴史を美化する馬鹿な人」と決めつけている。
 あまりにもシンプルな、バカサヨクのもの言いである。完全に思考停止している。自分が戦後サヨクのイデオロギーに完全に嵌っているということを、一切自覚していないのである。

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