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デタラメな科学に騙されない。「批判的に視る力」を養う。

嘘の科学的根拠に騙されやすい日本人

「発掘あるある大辞典Ⅱ」というテレビ番組が起こした騒動を覚えているだろうか?

「納豆でみるみる痩せる!納豆ダイエット!」

番組で紹介されていたのは、納豆に含まれるイソフラボンを摂取すれば、副腎皮質から分泌されるDHEAというホルモン物質が増加して、ダイエット効果があると謳ったものだ。

放送終了後にスーパーやコンビニから、納豆が売り切れ続出し、空前の納豆フィーバーが起こった。私は納豆が大好物であったため、しばらく手に入らなかったのは残念でならなかった。

ブームが起きた直後だった。番組側の検査データの捏造専門家の吹き替えの捏造無関係な写真資料の表示が判明した。他にもこうした余罪が10件ほどあることが判明し、番組は当然打ち切りとなった。

そんな捏造特集を放送する方も放送する方だが、それに釣られて買う方も買う方である。

ちなみにイソフラボンとは、フラボノイドの一種であり、腸内環境を整えて便秘予防の効果はあるようですが、ダイエット効果には直結しないようです。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は性ホルモンの合成前のホルモンであり、アンチエイジング効果は期待されるようです。

科学リテラシーとは?

科学リテラシーとは、科学的根拠に基づいた情報を適切に理解する力である。

CM、YouTubeの広告で紹介されているサプリメントや健康食品をみて思わず買っていないだろうか。

実は、ほとんどのサプリメントや健康食品の、科学的エビデンスは不明なのである。こちらの記事を読んでいただきたい。

実は、サプリメントを口腔から摂取したとしても、体内でタンパク質やペプチドに分解されて吸収されないことが濃厚である。

というのもマウスなどの動物実験では、脳内に直接投与や静脈などの血中から投与するケースが多い。従って実際に口から入れて吸収し、本当に該当器官に作用するのか、その根拠はない。

仮に臨床試験を行っていたとしても、データのばらつきや統計学的分析を伏せて、都合の良いように表示していることが多い。

データに騙されるな!

たとえばこちらをご覧いただきたい。

こちらは2017年にお菓子メーカーの明治と、内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の共同研究チームが1月18日に発表した、チョコレートで脳が若返るという共同研究である。

45~68歳の成人男女(男性15人、女性15人)に、高カカオチョコレート(カカオ分70%以上のチョコレート)を4週間食べてもらい、実験の前後で大脳皮質の量(GM-BHQ)の変化を調べた。

GM-BHQとは、大脳皮質の量を示した指標のことであり、大脳皮質の量が増えれば、脳が若返る可能性があるという。SDとは標準偏差の意味で、平均値とのばらつきを示した値である。

このグラフをよーくみていただきたい。

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このグラフの結果では、有意性があることが示されているが、いくつかの疑いの余地がある。

一つ目はグラフの縦軸。下の値が94で、上の値が96。確かにこれなら、事前・事後で差があるように見える。しかし、0から100であれば差は全然差がないことがわかる。

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二つ目は被験者の数。男女15人ずつの統計結果で果たして、全ての人に適用できるかどうかだ。男女15人と言っても、年齢が45~68歳と最高年齢差は23歳。それぞれの身体機能も違ってくるはずなので、カカオ成分の吸収もされて、大脳皮質をふやすかどうかは不明。調査を行うなら、年齢差をなくす等、人体差をなるべく等しくすることが懸念される。

それに対照実験がない。カカオに若返りの成分があるのであれば、カカオ成分の少ないチョコレートを食べてもらって、GM-BHQの量が変化しないかどうか確かめるべきだ。

三つ目は、GM-BHQが若返りの指標としてふさわしいかどうかだ。確かに大脳皮質は知覚・思考などの高次機能を司る脳部位である。しかしそれだけで若返りを判断できるだろうか。本当に若返りしたかを確かめるのであれば、判断力や記憶力を問う試験を実施するべきではなかろうか。

このように、いくつか疑ってみればチョコレートの若返り効果あるとは言い難いことがわかる。驚くことに、デタラメに近いようなプロジェクトに対して、日本政府は550億円の補正予算を計上しようとしていたのだ

幸いなことに、このプロジェクトは終了に終わったが、今後もこういったデタラメ研究に対して、予算を計上することは予想されることだろう。

科学リテラシーを養うには、「疑う力」が必要

デタラメな科学に騙されないためには、批判的に視ることが必要である。つまり懐疑的な目で視るのだ。たとえばTVやYouTubeの誇大広告。商品の有効性を裏付けるために、成分を一つ取り上げることが多い。たとえばこんな広告があるとする。

・コラーゲンがたっぷり!これを飲めば美肌効果のドリンク!
・水素水を飲めば体内がきれいになる!

コラーゲンは腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質のひとつ。残念ながらコラーゲンを含む食品に美肌効果はない。なぜならば体内で分解されるので美肌効果はない。

水素水とは、水素分子を溶解させた水のことを指す。確かに抗酸化作用などが叫ばれているが、飲用して効果があるかは不明である。

上記の方法は僕が元々知っていたものではなく、そのまま鵜呑みせずに、一旦自分で調べて考えて述べたものだ。今はスマホがあれば誰でもサクサクと調べられる。もちろん情報の取捨選択を求められるが。

思考停止にならずに、まずは調べる癖をつけることが批判的に視る第一歩となる。

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