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異年齢のつながりを作る屋外の日本語教室「あおぞら教室」【Aflevering.25】

 今回は、子どもたちの交流の場づくりとして教室外で活動する「あおぞら教室」について紹介したいと思います。

 「あおぞら教室」とは、日本語を使う機会が限られている子どもたちに集まってもらい、レクリエーションやミニゲーム、日本の小学校の体育で行われているような活動をする場所です。子どもたちは、日頃学校で英語や現地の言語を使って生活していることが多いため、日本語を話す異年齢の子どもたちが集まり、外で体を動かしながら日本語でのつながりを感じる場を提供したいと思って活動を始めました。

異年齢での交流

 あおぞら教室では、異年齢での活動をしております。
 参加人数の関係もありますが、年齢が同じだからといって日本語のスキルが同じとは限りません。それならば年齢もスキルも違う子どもたちが同じ場所に集まって、互いにいろんな交流をしてくれたらという思いで活動しています。

 もちろん、異年齢の活動には難しい点もあります。年齢が幼いほど、ゲームのルールを理解することが難しくなりますが、年上の子どもたちが年下の子どもに説明したり、ゲームの途中で指示を出してくれたりなど、いろいろ面倒を見てくれる場面を見ると、異年齢での交流に魅力を感じます。
 また面白いことに、年齢に関係なく活動の内容が理解できた子が、まだ理解できていない子に説明する場面を見たりもするので、子どもたちの社会性を育む意味でもメリットがあると思っています。


勝ち負けではなく、活動そのものを楽しむ子どもたち

 私が小学生の時、誰が何点取った、どのチームの勝ちなど、何かの活動には白黒はっきりさせる活動が多く、私もいつの間にかそれが当たり前だと感じるようになっていました。しかし、あおぞら教室に参加する子どもたちは、点数や勝ち負けにこだわることはあまりありません。活動そのものを楽しんでいるという感じです。まさに、「今この瞬間を楽しんでいる」のです。

 これは私個人の考えですが、幼い頃から勝ち負けの競争にさらされ過ぎてしまうと、結果ばかりにこだわってしまいます。もちろん勝負が大事な時もありますが、勝ち負けばかりにこだわらせてしまうと、その過程をみんなと楽しむことができなくなってしまいます。また、戦った相手への感謝・敬意なども感じられないかもしれません。

 過度な競争は、子どもの情緒的幸福度にも影響するとされています。高度に競争的な学校環境から生まれるイライラ・ストレス・不安・自己否定感は子どもを疲弊させ、攻撃性や暴力性を生むと言われています。(※1)
 これは、クラスメイトを競争相手とするか、共に支え合う仲間と捉えるかは、かなり大きな違いです。

 私が高校生の面接・小論文などを指導していた時は、とにかく先を急ぐ感じがありました。自分ならどう答えるかを見つける作業の時に、あれこれと考えをめぐらせるのを面倒くさがって、「結局、面接官に高い評価を得られる回答はどれですか?」と答えを欲しがってしまう生徒が多かったです。その時に私はとても勿体ないと思いました。

 あおぞら教室では、あまり勝ち負けにこだわるようなことはさせず、ゲームを楽しんで、勝っても負けても、相手がいなければゲーム自体することができなかったことから、勝ち負けに関係なく相手への敬意を示すことを大切にしています。

失敗を学ぶ場所〜「うまく伝わらない」という経験も大切に

 初めて参加してくれた子どもの中には、うまく日本語が伝わらず戸惑ったり、泣いてしまう子も出てきます。初めはサポートしている大人が少しだけ助けますが、その後はチームメイトに助けてもらうようにしています。

 初めは少し不安を感じている子どもでも、ゲームの最中に他の友達から応援してもらうと安心してゲームに挑むことができます。それをきっかけに、チームのメンバーの一員だという気持ちが生まれ、子どもたちは自ら進んでゲームに参加してくれるようになります。

 子どもたちは初めみんな緊張しているので、少し大人が応援している姿を見せたり、みんなが応援できるように促してあげるとみんな声を出すようになります。
 さらに、子どもたちの素晴らしいと思うところは、敵味方関係なくエールを送るところです。子どもたちは、ただ頑張っている人を応援したいという気持ちになるのだと思います。この姿を見て、私はとても感動しました。

 また、チームの中でもゲームについて何か話し合いをしているところを聞いたりしていると、ついつい大人が口出ししたくなるような話し合いが行われています。しかし、大人が入ってしまうと子どもは大人に頼ろうとするので、子どもにとって大切な学びの時間だと思ってじっと見守るようにしています。

 ゲームでもコミュニケーションでも、失敗することは大切なことだよ、と伝えておくことで、失敗を恐れずチャレンジする姿勢を持ってくれるかもしれません。

子どもの日本語の世界を、教室からどんどん広げる

 教室の中では、勉強するメンバーも固定されているため、他の曜日や時間帯に通っている生徒とのやりとりはありません。あおぞら教室は、そういった生徒同士のつながりを作る役割も担っています。
 また、教室に通っていない子どもたちも参加してくれるので、日本語教室の生徒だけのつながりだけでなく、日本語を話す子どものつながりを持つことができます。

「日本語教室」の授業で楽しかったことを振り返る

 先日、あおぞら教室に参加してくれた子どもに感想文を書いてもらいました。「文章の書き方や、文字の間違いをあまり気にせず思ったことを書いてみてね」と言ったので、誤字や意味が分かりにくいところもあるのですが、率直な感想が書かれていました。

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 特に私が喜びを感じたのは、
「日本語をたくさん使うのがうきうきする」というところです。

 海外で暮らし、複数言語の中で生活する子どもたちはそこでしかできない経験をたくさんしています。それと同時に、日本では経験しないであろう多くの苦労を学校ではたくさんしていることと思います。しかし、子どもが複数の言語で育つことのメリット(言語感覚の鋭さや異文化理解など ※2)もあります。それらを活かすためにも、子どもたちには日本語に対する肯定的なイメージや自信を持っていてほしいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました!

※1
金森俊朗・辻直人『学び合う教室-金森学級と日本の世界教育遺産』(KADOKAWA、2017)

※2
「バイリンガルに育つことは、知的な発達をより刺激し、思考の柔軟性や創造力を高め、言語感覚を鋭くし、異文化理解を深め、第2・3のことばの習得に役立つ」とされています。
中島和子『バイリンガル教育の方法』電子書籍版(アルク選書シリーズ、2020)より

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