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幅広い視野で考える力を鍛える「哲学」の魅力〜考える力のない人が増えることへの危機感【262】

 かつては、偏差値の高い学校に進学し、大企業に正規雇用で勤めること、マイホームやマイカーを持っていること、というような「経済面での幸せ」が先行してきた現在、日本の精神的幸福度は満たされにくい状態にあります。

 今は自分が幸せだと思った生き方を考えて選択する時代です。他者の評価軸で「幸せ」を手に入れたとしても、何か満たされない状態になってしまいます。
 ただ、物事の本質を捉えようとする学びはまだ日本の教育現場には根付いていないのが現状です。

 もちろん、生活の中で早く答えを出すとか、急いで結論を出さざるを得ない時もあります。しかし、現代では「考える」ことそのものを楽しむような時間も必要なのです。

戦争状態を脱するための「民主主義」は哲学から生まれた

 ちくまweb苫野一徳さんのコラムによると、現在機能している「民主主義」やそれを支えている「自由の相互承認」も哲学者が考えたものと紹介されています。それ以前は、戦争や殺し合いがただひたすらに続けられていたのです。

 もちろん、完璧な社会制度なんて存在しませんが、民主主義の成立について深く考えていくことでこれからの社会に必要なことも考えられるのかもしれませんよね。

 そういった「質の高い」考える力を付けられるように、私自身も学び続け、子ども達に考える面白さと重要性を伝えていきたいと思います。

ちくまwebのコラムはとても読みやすく、初心者の人にも哲学の重要性がとても丁寧に書かれています。いろんな人が哲学的な思考を持って、家庭での家族や子どもたちとの会話もより深めていってほしいと思います。

・ちくまweb「苫野一徳『はじめての哲学的思考』第1回哲学ってなんだ?」

・studyLABO「人類の根源的な問題と向き合う【哲学】 SDGs社会には必須の『考える力』を鍛える学問!」

・週刊ダイヤモンド「日本人が知らない哲学の力 なぜ哲学がビジネスに必要なのか」(2019)

私が感じる「哲学」のない危機感

 先日、初めて担当した日本にいる中学生の授業(オンライン)で、関係づくりのために色々と質問していました。

「今何か将来にやってみたいなとか興味のあることとかある?」
と聞いたら、その生徒は
「特にないけど、良い学校に入って、良い大学にいって、公務員になりたい」
と答えたのです。私は思わず、
「良い学校っていうのは◯◯さんにとって何だと思う?」
「公務員って言っても職種が色々あるけど、どういう職種に興味があるの?」
など、その生徒が発言したことに対して疑問が浮かんだので、掘り下げようとするととても困った様子でした。

まだ中学生とはいえ、安定そのものを将来の目標にすることに対して大きな疑問を私は抱きました。経済的な側面ももちろん生活の上では大切なことなので、安定した収入を考えることは悪いことではありません。しかし、安定した収入を得ることが第一目標になっていて、そこには「私の好きなこと」が入っていませんでした。

 少なくともオランダで生活する子たち(私が関わるのは日本語話者の子どもばかりですが)、つまりオランダ現地の学校やインターナショナルスクールに通っている子たちは、「自分の好きなもの」をしっかりと持っています。
 中学生ぐらいになると、それが基盤としてあって、その後に働き方や収入の安定性などを考えます。

 オランダで暮らす子と日本在住の子どもの両方に接している私にとっては、日本で暮らしている子たちは、「何かについて深く考えたり話したりすることに本当に慣れていない」といつも感じます。
 そのため、授業の中でも自分自身の意見を持てなかったり、視点を切り替えた議論ができないのです。ただ、これは能力が低いのではなく、そういった「機会が十分に整っていない」ということを示しています。

考えることの大切さに気づけなかった学生時代

 かくいう私も学生の頃は、「哲学」や「考え抜く」ことの価値なんて全く理解できておらず、自分の意志などはないまま、世間に流されるままに生きてきました。
 しかし、かつて公立高校の教員をしていた時に、週刊ダイヤモンドの記事を読み、改めて実社会の中で「哲学」が重視されていることを知ったのがきっかけで、「考える」ことの大切さを学んでいきました。

 自分で疑ったり考えることなどせず、正解とされるものを探し続けてしまっていた私にとって、今となってはこれからの正解のない社会を生きていく上で、自分で考えて行動できる力は何よりも必要だと強く感じています。またそういった生き方はとても刺激があり、いつも好奇心にあふれた気持ちで生活することができるのです。

再び戦争の世界に戻らないために

 これは私自身の漠然とした不安ですが、考える力のない子たちを育ててしまうと、再び「戦争が起こる世の中に戻ってしまうのではないか」という不安があります。
 考えるというのは同時に視野の広さも持つことができます。しかし、いろんなことに無関心な人が増えてしまうことで、政治の暴走に繋がってしまわないかという危機感があります。

 これからも、子どもたちに考えることの面白さと奥深さを授業の中で共有していきたいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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