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子どもの日本語学習が「やらなければならないもの」から「やりたいもの」になるまで - ある生徒の成長記録①【Aflevering.201】

 今日は、最近心の変化が起きた日本語教室の生徒の話をご紹介させていただきます。まずは保護者の方からいただいたメッセージをご覧ください。

保護者からいただいたコメント(掲載の承諾済)

 この生徒は、元々は日本語学習を嫌っている傾向があり、学習に集中するのが苦手な子でした。しかし、それから1年と4ヶ月が経過した現在は、自ら学習スケジュールを立て学校の勉強も日本語の勉強も両立して日々頑張ってくれているようです。一体この生徒にどんな変化があったのでしょうか?私の日本語学習の関わりも含めて記録しておきたいと思います。

 誰にとっても「勉強」というものは、楽しいことばかりではなく、辛く感じたりやめたくなることも多々あります。それは、子どもだけでなく大人にとっても同じです。それでは、学習を続けられる人の特徴はどんなところにあるのでしょうか?そのことについて考えてみたいと思います。

学習を続けるためには

 自身の学習に対して「できるようになった」という成長に注目するか、「ここがまだできていない」という欠点に注目するかどうかで、学習意識が大きく変わってくるということだと考えています。

 それは、私が現在学んでいるオランダ語の勉強でよく分かりました。オランダに住んで2年、なかなか思ったようにオランダ語は上達しません。しかし、オランダ語の先生が褒めてくれたり、現地の人との会話が少しずつできるようになってきた自分を感じて「もっと頑張ってみよう!」という気持ちが支えになっています。それと同じようなことが今生徒の中で起きているのです。

とても思いやりのある、勉強が大嫌いなAさん(12歳)

 日本語が家庭で使用する言語ではあるものの、海外で生まれ日本での生活経験がほとんどないAさんは日本語の勉強が大嫌いでした。日本語だけを見ると、年齢不相応で学習意欲もかなり低い子でした。しかし、Aさんはとても面倒見がよく、困っている人がいたら勝手に体が動くような、人への助けを惜しまない素晴らしい心を持った子でした。

大切な日本語学習の一歩目

 日本語の学習サポートする立場としては、日本語の能力云々の前に日本語に対する気持ちを変えてあげなくてはいけません。そのため、これまでの国語に偏りがちだった自分の授業スタイルを変えて挑んだのが1年4ヶ月前です。授業をする時は、教える科目だけにとらわれず、その子の人間性なども含めた全体像をイメージしながら授業をするようになりました。

 それからは教科書を使った音読を中心に、Aさんがその時に興味があることを一緒に調べたり、今読んでいる本を一緒に読んでみたり、日本語を使って現地の学校で学んだことや今考えていることなどをたくさん話してもらうようにしました。授業の捉え方は人それぞれですが、講師と子どもの信頼関係を作らないことには継続的な学習はできないと私は考えているので、その子との関係づくりを一生懸命に取り組みました。その子が授業を気に入ってくれるかどうかは相性の問題もありますが、いろんな話をお互いにしているうちに、Aさんはその時間を楽しんでくれるようになっていったと私は感じます。

良いところも悪いところも「小さな変化」を見逃さない

 授業を継続していると必ず何かしらの日本語スキルが向上してきます。私はその都度「振り返り」を行い、Aさんが日本語の成長を自分で感じられるように、過剰でもなく過小でもないありのまま私が感じたことを伝えました。すると、本当に少しずつですがAさんの気持ちも変化してきたようです。文字を追うのも苦手でじっと座っていることすら苦痛だったAさんは、いつしか音読や宿題の漢字練習を自ら取り組むようになり、主体的に学習する姿勢が現れ始めたのです。

大切なのは保護者の「見守る」姿勢

 とはいっても私が関わるのは週1回の90分だけです。その時間だけの関わりで子どもが劇的に変化するわけがありません。Aさんの変化は私の関わりも少しはあると思いますが、家庭の環境が一番大きいのは間違いありません。私からみたそのご家庭は、子どもの意思を尊重し、その子が考えていることをご両親が受け止めてあげるような雰囲気があります。子どもにとっては、放任でも過干渉でもない「適度な距離で見守ってくれる」ような安心感があるのではないかと思います。
 そこに日本語を教える私が関わったことがきっかけで変化していったのでしょう。

 次回は、Aさんを成長させた要因についてまとめていきたいと思います。その子の日本語の成長を支えたのは主に「算数」でした。それについても次に詳しく書き留めています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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