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ポールの新譜McCartneyⅢレビュー 全曲楽曲紹介「M3. Pretty Boys」。(連載その3)

 ポールのNEWアルバム「McCartneyⅢ」レビュー! 第3回は、M3「Pretty Boys」です。 ここでは、「ポール・マッカートニー作曲術」作者として、曲作りを中心に楽曲解説をしていきたいと思います。
 作詞や作曲、プロデュースにフォーカスした、レビューです。
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M2. Pretty Boys

■ポールらしさのパターンから生まれた名曲

 M1に引き続き、アコギが楽曲を引っ張っていきます。今度は、This is ポール・マッカートニーとも言える、ツーフィンガー奏法(親指と人差し指のみで演奏)です。
 使っているコードも数種類、頑張れば初心者でも弾けそうなパターンです。まずは、オフィシャルの動画(歌詞付き版)を観てみましょうか?


 ポールは確かに天才中の天才だと思います。しかし、これまでに、何の苦労もなく膨大な数の美メロディーを作り出してきた訳ではありません。
 天才なりの葛藤や苦しみの中での創作もありました。ビートルズの初期、「先輩たちの音楽からアイデアやフレーズを盗みながら、学んできた」というポールの発言があったのも事実です。
 そんな中でポールを支えてきたのは、彼の作詞作曲における定番スキルや独自のパターンでした。
 作曲家なら誰しも得意なパターンを持っています。そんなポールならではパターンを沢山紹介したのが「ポール・マッカートニー作曲術」です。
 ファンたちは、そういったポールらしさを直感的に感じ取り、そこに魅力を感じ、ますますポールが好きになっていくのですね。

■たった2音から作曲するポール

 そんなポールならではの作曲パターンの一つが、ギター弦を2本だけ使う作曲法です。つまり、たった2音から作曲するのです。
 弊著でも解説しましたが、「You Won't See Me」などは2本弦作曲法の代表といえます。下の図をご覧ください、1弦と2弦のみでメロディーが完成しているのです(弊著「ポール・マッカートニー作曲術」より引用)

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 なぜこの話をしたかといいますと、「Pretty Boys」のアコースティックギタープレイは、曲を通して、5弦と6弦しか押さえていないのです。
 ギター演奏を多少される方なら、「そんなのパワーコードなら普通だろ」とおっしゃるかもしれませんが、この曲の5弦と6弦には驚きました。パワーコードとはまったく違うアプローチをしているのです。
 図をご覧ください。この通り演奏すると実に美しいのです。感動すら覚えました。5弦と6弦の同じ色の丸を押えます。2~4弦は開放弦です。
 6弦→5弦→4弦→3弦(→2弦)の順に弾けば、ポールの音がします。

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 ギター初心者の方でも、案外簡単に弾くことができると思います。ここにも、ポールのこだわりを感じます。得意の2本の弦で作曲をして、なおかつ新鮮なサウンドを模索するこだわり!! このこだわりから、「Blackbird」「Here Today」「Some People Never Know」などが生まれたのですね。

■油絵や鉛筆デッサンのような作曲

 さて、YouTubeで、鉛筆画や油絵などの下書きから完成までをコマ送りで全部見せる動画をご覧になったことがあるでしょうか。
 大きく当たりをつけながら、何本も何本も線を重ねて引いて、だんだん確かな輪郭にしていくのは、画家さんの心情そのものを見ているようで、下書きのプロセス自体が芸術だと思えてきます。
 今回、「Pretty Boys」で感じたのは、サウンドの構築が、まるで画家さんの下書きのプロセスに似ているということでした。
 具体的には、イントロからアコースティックギターの5弦6弦サウンドがソロで始まります。それに乗って歌が始まり、ハイハットがリズムを刻み、アコギとフレーズをエレキギターがなぞります。さらにベースとドラムキットも重なる頃、全体サウンドが完成します。その後も、歌詞の流れで、ギターやベースなどが出たり入ったりしながら、最後まで大きく色合いを変えることなくサウンドが流れ続けます。
 ヘッドフォンでこの曲を聞きながら、ボクの脳裏には、ポールが楽器やコーラスという絵筆を持ちながら、ここにエレキを置いて……などと楽しんで、サウンドを組み立てている様子が手に取るように見えたのです。

■歌詞の流れと連動するアレンジ

 あらためて「Pretty Boys」のLyricVideoを観ると、歌詞の流れと共にサウンドが変化していく流れも、見えてきます。
 この歌詞には、①②やABなどの構成の記号が聞き入れてありますね。だから、①から②になった途端(0:40~)にエレキギターが始まるなど、分かりやすいですね。
 ボクが、作詞の勉強をしている方に、構成の記号を書き入れるようにアドバイスするのも、こういう意味からなのです。
 記号があることで、構成を視覚的に把握できるのです。それは、歌詞の読み手や音楽の聞き手、もちろん、歌詞を書いている人にも、視覚的な理解は重要なのです。
 このビデオは、そんな基本的なことも教えてくれています。ポールありがとう!
 ぜひ、歌詞の流れ、構成の記号、サウンドの変化などを意識して、つまり、歌詞の記号に注目して、最後までもう一度聴いてみて下さい。

■長くなりすぎるので……

ちょっと、まだまだ解説したこともあるので、次回も、「Pretty Boys」の続きを解説いたします。どうぞお楽しみに!!!

■「ポール・マッカートニー作曲術」

 こんな感じで、ポールの作曲ノウハウをまとめた弊著が、「ポール・マッカートニー作曲術」(ヤマハ刊)です。
 ご興味のある方は、ぜひ、お手にとってご覧くださいね!
 なんと、Amazonでは、レビューが100を越えました。ビートルズ本では、ダントツのレビュー数を頂きました。ありがとうございました。
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次回は M3「Pretty Boys」その2を解説します。
M1「M1. LONG TAILED WINTER BIRD」はこちらをクリックしてくださいね。
M2「M2.Find My Way」はこちらをクリックしてくださいね。

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