バレンタイン泥棒


<○:編集点、1秒間以上間を空ける>
<SE・BGM・セリフ変更などアレンジはご自由に>
                                                                                                                                                                            
以下、全文が探偵役です。(一人芝居)

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 みなさん、
ここに集まってもらったのは他でもありません。
今朝方にこのクラスで発生した、
チョコレート盗難事件、
そして、その犯人である
「バレンタイン泥棒」。
全ての謎が解けたのです。

○皆さんが驚くのも無理はありません。
この事件は、
衆人環視の元で起こりました。
その巧妙なトリック!
クラス全員の完璧なアリバイ!
そして不可解な動機!

全て、深い謎に包まれていましたから、、、。

○2月14日、
バレンタインの今日。
分厚い謎のフィルムを剥がし、真実という甘美なチョコレイトを
皆さんと共に味わいたいと思います。

被害者は、
田中マナさん、
彼女は、今朝、
チョコレイトをかばんに忍ばせて登校しました。
そして、登校後、
教科書をかばんから取り出す際に
チョコレイトの存在を確認した。
○、、、間違いありませんね?
○、、、よろしい。
○そして、4時限目の移動教室が終わった後に
かばんの中を確認すると、
チョコレイトはなくなっていた、、、。


4時限目、
授業中に抜け出した生徒はいませんでした。
また、分散登校の実施期間である現在、
犯行が可能である生徒はかなり限られています。
しかも、5分間の小休憩では、
違う校舎から移動してくるのは、
まず、不可能でしょう。

そうなると、このクラス以外で、
田中さんに恨みをもっている人物が犯人だ、
と、考えるのが自然でしょうか。

田中さん、
最近、誰かに恨まれるようなことをしましたか?

、、、はっはっは!
そんなに困った顔をしないでください。
冗談です。

このように、田中さんの控えめな性格では、
なかなか他人の恨みを買うことも少ないでしょう。
ならば、
犯人は誰なのか?

簡単な話です。
皆さん、
この事件を振り返ってみてください。

果たして、

盗まれる前のチョコレイトを見た人はいますか?
田中さん以外に。

○非常に残念ですが、、、
犯人は、
あなたですね?
田中さん、、、


解答はシンプルです。
最初からチョコレイトなんて存在していなかった。

田中さんは、
存在していないチョコレイトを
もってきたと言い、
存在していないチョコレイトを
盗まれたと証言しているのです。

これで、衆人環視下での犯行は説明がつきます。

残るは動機、ですが、

おそらく、
田中さんは、何らかの理由で、
チョコレイトを準備することができなかった。
そのために、誰かに
チョコレイトを盗まれたことにして、
この場を凌(しの)ごうとしたのでしょう。

、、、きっと、
田中さんの優しい性格、、、
その側面の、気が弱い部分が出てしまったのでしょう。
相手が彼氏なのか友達なのか、
あるいは好意を抱いている人物なのか、
それはわかりませんが、、、
その人物に、チョコレイトを準備できなかったと、
正直にいう勇気が出なかったのですね?

些細(ささい)なものでしょうが、
あまり人騒がせなことは控えた方がいいですよ?

ああ、泣かないでください。
弱ったな、、、

ん? 今、何か言いました?
、、、え? 違う?
違うって何が、、、?

その推理が、、、って、
そんなバカな、、、!
僕の完璧な推理が、、、!

え、ちょっと、
その手に持ってるのは、
まさか、チョコレイト、、、ですか?

そうか、
チョコレイトは、準備、できていたのですね、、、。
じゃあ、なんで盗まれた、なんて嘘をついたんですか?

ああ、友達に
バレンタインに、好きな人にチョコ渡す宣言をしたものの、
いざ、渡すとなると勇気が出なくて、、、ですか、、、なるほど、、、

○まあまあ、、、動機は読み違えてしまいましたが、
大筋は僕の推理で間違ってない、、、
え?、、、まだ、何かあるんですか、、、?

ちょ、ちょっと、、、泣いてないで、、、
もう少しはっきりお願いします、、、

なぜ、、、?
なぜ、、、僕にチョコレイトを差し出すのですか?

え? このチョコレイト、僕に渡すために用意したんですか?
あ、じゃあ、、、ありがとうございます、、、。

あ、ちょっと!
待って!
行かないで!

あ〜、、、
行っちゃったぁ、、、。

どうしよう、、、。
誰か、田中さんと仲直りする方法を、
考えてもらえませんか、、、?


以上

最後まで読んでくれてありがとー