フレイム
10min
フレイム
A:父
B:母
<○:編集点、1秒間以上間を空ける>
<BGM>しんみり
A まだ、
気が早いんじゃないか?
B 大丈夫、大丈夫。
これ、
すごいロウソクなの
A すごいロウソクって、
なに?
B なんかね~、
えっと~
A うん
B 長持ちで~
A うん
B ロウが垂れなくて~
A うん
B おいしいの
A 嘘でしょ
B 嘘なんかつかないよ~
イチゴ味なんだって
A へー、
最近のロウソクはすごいね
B じゃあ、
火、
つけま~す
A ほんとにつけるんだ、、、
<SE>シュポ(ライターの音)
B 電気消して~
<SE>電灯スイッチ切る音
A まだ早いと思うけどなー
あの子が帰ってくるの、
まだ1時間くらいかかる気がする
B 大丈夫だってば~
なんか、今日は去年よりも早く帰る気がするんだ
A そっか、、、。
ロウソクの火を見ると、
やっぱり、思い出しちゃうなー、、、
あの子はケーキのロウソクが好きだった
B ロウソクの火を消すのは嫌いだったけどね。
A ああ、そうだった。
きれいだから、消したくないって言ってな。
いつまでも、火を消さないから
ケーキの上にロウがボトボト落ちちゃってな。
B うん。
それであなたが我慢できずに息を吹き消したら
大泣きしてね。
A ああ。
「パパのばかぁ~」
って言って、二階に逃げちゃってな。
B うん。
あなた、せっかちだから、
あの子とよくケンカしてたね。
A ああ。
○今だったら、
○もっと優しくできるのにな
B あ、
今、火が揺れたんじゃない?
A ほんとか?
○ああ、
見逃しちゃったな
B きっと、
もう、怒ってないよ、
って、あの子が言ってるのよ
A そうかなぁ
○そうだと、
いいけどなぁ
B あの子も、
もう17歳なんだから、
きっともう大丈夫よ
A いや、
わからんぞ。
17歳なんて反抗期真っ盛りじゃないか?
B うーん。
あの子、割とおっとりしてたから
そんなことないんじゃない?
A そうかなぁー。
ロウソクの火でいじけるやつだぞ。
B そんな風に言わないの。
○きっと、あの子、恥ずかしかったのよ
それで、過剰に反応しちゃったんじゃない?
A 恥ずかしい?
なんで?
B だって
あなたは
あの子の初恋の人だし
A えぇ?
父親だぞ
B ふふふ、
火がすごく揺れてる、、、
女の子って、
そういう子多いよ?
まあ、小学校の1年生くらいまでだけど
A そうだったのか、、、
いやぁ、
嬉しいような、むず痒いような、
変な感じだな
B ふふふふふふ、、、
くっくっく、、、
まだ火が揺れてる、、、
A お前が真菜をからかうからだろう。
かわいそうに。
B ごめんごめん。
はーーーー。
あの子が、まだ、ウチにいたら、
毎日、こんな感じなのかな
A どうだろうな。
○一年に一回だから、
こんな風にできるのかもしれないけどな。
B もー。
やだねー。
妙に達観しちゃって。
○真菜もそう思うでしょ。
<SE>ピンポーン
A 、、、誰かな。こんな時間に。
B 真菜が帰ってきたんじゃない?
A おい
B 大丈夫よ。
○もう、5年も経ってるんだもん。
私だってわかってる。
○でも、ちょっとだけ期待しちゃってもいいでしょ?
A そうやって期待すると、
○後で辛いぞ
B その時は、あなたが慰めてくれるんでしょ?
<SE>駆け足
A 、、、ああ。
B はーい。
<SE>ドアを開ける音
了
最後まで読んでくれてありがとー