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うしろめたさの人類学【読書のきろく】

一週間前に投稿した『ゆっくり、いそげ』と、似た空気感に包まれる本。
知るきっかけは、こちらも同じく書くンジャーズ仲間の西嶋さん。主催するオンライン読書会で、いつも興味深い本を選定されています。なかなか参加ができないので、僕はこっそり本だけ読んでいる状態です。

内容があってこそだとは思いますが、本は紹介者の空気感を一緒にまとって読み手の中に入ってくる。
本からにじみ出てくるやさしさに、そんなことを強く感じました。

世の中どこかおかしい。なんだか窮屈だ。そう感じる人は多いと思う。でも、どうしたらなにか変わるのか、どこから手をつけたらいいのか、さっぱりわからない。

>『うしろめたさの人類学』 p.8 「はじめに」より抜粋

こんな書き出しからはじまる本書。
本の中では、2行。ここに「なにか」を感じる人には、オススメです。その「もやもや」に向き合って、自分の身の回りのことから考えてみることができます。

人と人との関係、人と社会との関係は、どんな行為とつながりで読み解くことができるのか。その手法は、学問の分野や分析する人によって、いろんな角度がありそうです。この本では、「贈与」と「交換」がひとつのキーワードになっていました。

贈り物(贈与)なのか、市場価値で計算できる経済活動(交換)なのか。その違いが、感情や共感をどこまで織り込むかの違いをもたらす。
どちらがいいとか、悪いとかいう考えではなく、そのやり取りを周りの人と繰り返しながら生きていることを認識することが、第一歩なんだと思います。無意識のやり取りもあれば、意図的に選択することもできるから。

本を読むときは、その時の関心ごとにも意識が飛ぶのがおもしろさのひとつ。今は、やはり地域のことを考えてしまいます。
地域に対しては、お世話になっているから、知っている人が困っているから、誰かがやらなきゃ困る人がいるから、そんな気持ちで関わることもできます。ボランティア的な感覚と言えそうです。
対照的に、事務的に割り切った付き合いや、お金を払って業務委託で物事を進めることもできる。効率がよく、その場だけで完結し、後腐れない感覚の付き合いです。
どちらもバランスよく、その時にいる人のありようをその都度考えながら、選んでいくことが理想的でしょう。

書かれていた事例でおもしろかったのは、関係と行為の話。親しい間柄とか、仕事上の関係とか、相手との関係の性質によって、僕たちは振る舞いを選択しています。話す内容をどこまで自己開示できるか、メールにつける呼称を「様」にするか「さま」にするか「さん」にするか、みたいに。
このとき、「関係が先にあるから行為が決まる」という部分もあるし、「行為が変わる(行為を変える)ことによって関係が変化していく」部分もある。その選択の余地があることを知ると、そこに可能性が生まれます。

そんな積み重ねが、人と人の関係をつくり、人と社会の関係ができる。まずは身近なところから、自分の行動を振り返りたくなる一冊でした。

『贈与』は、しばらく僕の中で重要なキーワードになりそうです。

読書のきろく 2021年7冊目
「うしろめたさの人類学」
#松村圭一郎
#ミシマ社

#読書のきろく2021

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