「え?そんなところから教えるのですか?」「いえ、もっと手前から教えましょう。」


「教え方」の教科書』著:古川祐倫(すばる舎、2012/7/14)

7月になりましたが4月に入社した新人さんはいかが過ごされていますか、
皆さんも多くの「新人エピソード」を持っていると思います。

また、この時期には新人教育も一旦落ち着き、残っている人、辞めてしまった人など、来年の新人教育のために、多くのことを振り返るのにも良いのかもしれません。

そこで、今回、紹介する本は『「教え方」の教科書』という本になります。

新人教育の目標が「自分で考え、行動できる人間」であることは言うまでもありません。
ですが、どういう方法でそういった人間が形成されるのでしょうか?

「やる気のある人間」だけであり、「やる気のない人間」はもうすでにダメなんでしょうか……?

やはり、本人のやる気の有無ではなく、「どんな新人でも自立できるような教育プログラム」が必要ではないかと思います。

本書は、新人を「やる気がない」のではなく「わからない」だけという風に捉えることから出発しています。
その前提の新人に「自分で考えろ」、「自分で気づけ」と願っても、知識や経験が乏しい新人にはちょっと難しいと考えます。

「まずは部下に意見を求めてから……」、「一方的に教えずに自分で考えて……」というコーチングではなく、まずはとことん「教えること」から始める。

何もわからない部下だからこそ、手取り足取り教える。
仕事の基本をイチから教える。

誤解がないように伝えますが、いつまでも一方的に教えるということではなく、ある一定の立場になったら手綱を放して、よき相談相手として意見を求め、リスペクトすべきであり、その前段階で「教える」ということが必要ということです。

仕事の基本が分からない部下に対して「君ならどうする?」と聞いても「わかりません」で返ってきます。
こんな押し問答していても、ディスカッションが恐怖になるだけです。

部下は教えられることで学び、失敗して悩んだりする中で、仕事の基本を身に着け、それを繰り返すことで自分の考えを持てるようになります。

教えられる中で習得した様々な選択肢をもとに、はじめて「わたしなら……」と意見を言うことができます。

相互のためにも、まず「教えること」を重要視している著者の「教える」テクニックがしっかり詰まった良書です。

新人教育に困った読者がいるようであれば、一読し、著者の教育方法を参考にすることをお勧めします。
選択肢が広がり、問題解決につながると思われます。