チャットノベルはもうかるのか? 4 ほぼもうかってないけど

タイトルでいきなりばらしたけど、まずそう見て間違いない。プラットフォーム側は。

5月に運営会社taskeyが2.7億円資金調達した日本でチャットノベルプラットフォーム業界2位(というか、2社しか具体的なダウンロード数・ユーザー数公表していないのだけど)のpeepが全70万ユーザーで課金ユーザーが1万人と書いてる(その後80万ユーザーとしているので同様に課金ユーザーが14%増えたとして1万4000人。)。
ここで1ヶ月の売上を計算する。

peepの課金で1番高いのが1ヶ月読み放題960円、他に1週間読み放題360円などで全課金ユーザーが1ヶ月読み放題契約しても1400万円程度。実際には半分が1ヶ月読み放題で後は1週間読み放題とすると約920万円
appleとgoogleに30%払うと約650万円。
これが純粋な収入になる。

次に支出。
peepの場合5月で1000本以上、6月で1300本以上と公表している。
つまり1ヶ月で300本掲載していることになる。

以前執筆料12600円、イラスト6万円(合計72600円)と算出した。
これでざっと2200万円かかる。
これのうち週3本、月12本はシネマ小説(実写動画入り小説)とする。
シネマ小説は出演者平均3人でそれぞれ1日、撮影クルー(カメラマン+アシスタント2人)で1本撮影に1日、編集が1人で2日、いずれも日当2万円とすると16万円。
これで200万円。
小説の編集や営業、アプリやサーバの開発運営等を社内スタッフ(公式サイトで掲載されているチームのところに9名掲載)でやるとして1人平均月40万円の人件費とすると360万円。

サーバ費用が80万ユーザーで1部作品は動画を使っているのでそこそこかかるとして30万円、
オフィスの家賃と光熱費で20万円程度。

次にプロモーション費。

1ヶ月10万人の新規ユーザーをすべてWeb広告で獲得していると仮定する。
Web広告でユーザーを1人獲得するコスト(CPI)はだいたい100円なので1000万円かかる。

なお、peepは6月からテレビCMを流している(下記参照)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000012747.html

CMのURLは下記で、15秒のもの。
https://youtu.be/d2Q4vMGO0Kg

熊本でテレビCM料金は下記サイトによると熊本の民放4局ともスポット15秒で15000円から。
https://www.tvad.jp/cat/adcharge
テレビCMを1日3回、1ヶ月90回放送すると135万円。
テレビCM自体を社内スタッフ制作で上記人件費に織り込んで作っているとしても135万円はかかるのである。
Web広告と合わせてプロモーション費は1135万円。
支出合計は3945万円。

差し引き約3300万円の赤字である。

業界No.2でも構造的に赤字になっているのは作品制作費とプロモーション費が莫大なのが分かる。というか、このプロモーション費だけで赤字になっている。


もちろん、今は先行投資で後で回収すると考えているのだろう。
では何で回収するのか?
まず課金ユーザーが増えることで黒字にできるのか計算してみる。
上記のテレビCMでの増加ユーザー数だが4年前のデータでCPI1000円(アカツキのゲーム)とのことなので135万/1000で1350人となる(下記URL参照)。
http://thestartup.jp/?p=14328

101350人増加させて課金率が1%なので1013人が課金ユーザーになる。
課金ユーザーの1人あたり単価(ARPPU)apple/googleの手数料差し引き後で考えると660万/1.4万=462円。
何ヶ月課金し続けるかはまだデータが出ていないが仮に12ヶ月とすると
顧客生涯価値(LTV)は5544円。
1013*5544で約560万円が1ヶ月のプロモーション費で期待できる売上である。
1135万円のプロモーション費で560万円の売上が帰ってくるのだからこれだけでは赤字。

もっと言えば上記のLTVは課金ユーザーのもので全ユーザーだと55.44円。100円のコストを掛けて獲得しても半月経つと赤字になってしまうのである。
つまり課金だけではどうやっても回収できない。

ではどこで回収しようとしているのか?
おそらくpeepは映画化やゲーム化などのメディア化、あるいは事業自体の売却などで回収しようとしているのだと思われる。
予算的には映画化orドラマ化が手っ取り早い。peepの場合、すでに実写映像入れた小説があるのでそれをベースに映画・ドラマ化してNetflixあたりで配信だろう。
実写映画や1クール程度の実写ドラマなら安いものだと1億円程度で可能。そのうち1000万円程度出資して製作委員会入りする。こうすれば売上の10%程度が収入として入ってくる。もしくは各種メディア化権を100~500万円程度で売る。仮に100万円でも毎月の新作300本の1割をメディア化で売れば3000万円、上記の赤字が消える程度の金額になる。


あるいは事業自体の売却。peepの場合はすべて自社製作作品なので映像化権・ゲーム化権など各種ライセンスを握っていると思われる。また社長の大石氏自身の執筆作品もある。なのでライセンスホルダーとして事業を買う会社を探している可能性がある。事業単体では赤字でも、原作300本の制作費+コアファン創出維持費と考えれば月3300万円の赤字は安いだろう。

とはいえ、プラットフォームとしてのリスクは高い。そもそもチャットノベルをどう映画やゲームにするのかなどの前例がまだ日本ではないし、海外でもほぼ聞こえてこないからだ。
おそらく出版社や既存のWeb小説延長型のサービスもちょっと流行りだした形式で原作を集めたい、位のノリで赤字(投稿オンリーのところだと執筆料かからないしあまりプロモーション費もかけていないから赤字幅少ない)を許容しているのだろう。
実はプラットフォーム以外ではもうける方法がある。それは次回以降で。

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