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屋台ラジオ 12日 OA 鶴元怜一郎さん

鶴元怜一郎さん
屋台を始めたら武蔵野美術大学とか関係を持つようになったのですが、そこの生徒さんが鶴元さんでした。しかしお話をしてみると根津を中心になにやら活動をしていることで驚きましたし、わたしが出店をさせてもらった「あおぞら市」にも関わっていたのだとか。今回はどういった活動をしているのかを中心にお話を聞いてみました。

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ねづくりやってどんなところ

武蔵野美術大学では建築を勉強していて、新築でどんどん立てる設計の勉強よりは今ある建物を生かすとかリノベーションとかの方に関心があります。大学3年生くらいのときに、別の暮らし方をしてみたいなと思って出会ったのが物件が根津にある古民家でした。そこを美大の友達とかいろいろな人たちと一緒に改修をして住める状態にしようということで始まったんですけど、結構ボロボロだったので住めるわけないとか言われながら改修していきました。
泊まり込みで作業をやっていくと近くの飲食店に食べに行く機会が多くなるんですけど、そういったことを繰り返していくうちに「いいまちだなぁ」というのが直感として生れてきて、ただ自分たちが住む家というよりは、今後まちと溶け込みあうキッカケになるような家づくりをしていきたいなということを考えるようになってねづくりやっていう屋号みたいなものを考えました。

— 最初から地域を絞って物件を探していたの ―
いや、自分が現場でもっといろいろいじってみたいなっていうのを知り合いの大人とかに相談していて偶然そこの物件を紹介してもらったという感じなので、根津にも始めていきましたね。当初はリノベーションをすることには熱意はあったんですけど、まちというアンテナもたっていなかったです。物件として面白そうなのでやってみたいなぁのがキッカケです。

― 今はシェアハウスなんだよね —
そうですね。4人で住んでいます。今はコロナで人を呼んだりはしずらいので場所貸しのサービスももそんなにはできていないですけど、以前は毎日のように誰かが泊りに来たり、コロナの状況でも近所の人とかは散歩圏内なのでスーパーとかの帰り際にウチに寄ってくれたりとかしています。
でも、この物件は立て壊して旅館にするという計画があるので、壊すまでの短期間利用として借りているので物件はいずれ無くなってしまうんですけどね。

― 改修費用はどうしたのですか ―
この物件を紹介してくれた大人の方々と改修したのですが、その方々の会社が賃貸物件などをリノベーションして貸すという事業を行っているので、初期費用とかはその会社と一緒にやってもらってらいました。

— リノベーションをしていくなかで作りたかった空間はどういったものですか —
元々たばこ屋さんの物件だったので、人が土足で入ってこれてるような土間が残っているんですよね。その土間が地域の人たちが気軽に来れる空間としてはすごくいい余白だなと思っていてほとんど手はくわえなかったですね。普通だったら床を上げてしまって部屋の面積を広げるとか、そういう使い方をしてしまうかもしれないですけど、逆に使い方を決めてしまわない空間があった方がいいなと思っていたのでそこはすごくおススメです。
夏の涼しい時はそこにプロジェクターをだして映画観賞会をしたりだとか、能とか落語をできる人を呼んで落語会を開いたりとか。地域の興味があるという人にはタダで場所を貸すことがるので自由にやってみてくださいみたいな。

— 地域の人から苦情は来ませんか —
地域の巻き込み方の手順としては最初に隣近所の物件の人には挨拶をして仲良くなって、最初はキッズたち一緒にといろいろなことをしたのでお絵描きをやるとか映画を流すとかみんなで畑を作ろうとかそういうことをやって子どもたちのお迎えにきてくれるお母さんたちとも楽しんでもらえるような企画をやり、ちょっとずつ最初は警戒をしていたお父さんたちが来てという手順でやっていったのですごく理解をしてくれましたね。
お酒を飲んだりというイベントは場所貸しのお客さんがするんですよね。友達のなんとか会で借りたいですとか。そういう時は20時以降は騒がないでとかやっていますね。

— シェアハウスに不特定多数の人が来るのはストレスじゃないですか —自分は高校からずっと共同生活をしているので一緒に住むとか、どうやればコミュニティを揉めずにやっていくかみたいなのはちょっと経験があって、ただ単純に住むことがベース、目標になるシェアハウスだと揉める例が多くて、4人で一つの場所に住んでいるんですけど、場所貸しということで第三者の目線を入れるとか他の人が時々くる環境にするとみんなでお出迎えをするという現象が起こってなにかバランスがとりやすいんです。土間も油断をしたらすぐに物置みたいになってしまいますね。笑
ルームメイトという一つの組織と会社の間くらいのゆるい関係を作っています。こんな感じの生活ができたらいいよねって理想がしっかりとあるとなんかこう落ちたりしてしまうじゃないですか、それがラインが低いと多少転んでも何とかなるんです。

— 場所貸しにするとただのレンタルスペースになってしまいませんか —ねづくりやというタイトルは付けたもののどうやって地域に根付いていくかのアイデアはあまり出ていなかったので、もっといろいろな人に物件を見にきてもらってどういう風に使うのかも調査したかったんですよね。なので可能性を見出すためにもいろいろな人に来てもらえるのはありがたかったです。調査というスタンスでお客さんを招き入れていたので、いいことも悪いこともデータになっていくというか結構前向きでしたね。
基本的には一時間3000円という料金設定で初見の人には貸すんですよね。それで一回やってもらってこの企画すごいねづくりやとマッチしてるじゃんって思ったら次回からお金をいただかないようにしたりとか、安く貸したりとかしてしまいます。あと、地域の人とか面白そうな人がいたらスカウトというかこちらから声をかけます。自分たちと合わないなと思っても使いたいと思ってくれるのはありがたいし、お金を払ってもらえるのはうれしいので、金額設定でグラデーションを出すようにしていますね。

— 思い出に残っているイベントはありますか —
近所のラーメン屋さんによく食べに言っていたんですけど、ねづくりやで個展を開いているときに主催者の方と食事にいって「良ければ見にきてください」とお話したらお店の人がすぐその日に遊びにきてくれて、それから仲良くなって始まったのがジェラート屋さんだったんですよね。
ラーメン屋さんが元々ジェラートをしたいというのがあったので、
「子どもたちが結構くるのでアイスクリーム屋さんをしたらいい雰囲気になると思うので、場所代は結構ですのでぜひ、やりませんか」
って提案をしたら
「え、タダでいいの!?」
みたいな感じで始まりました。
誰でもお金を取るんだと最初から線引きを作っていたらできていなかった嬉しいかけ合わせでした。何にもしきりを作らなかったからこそ生まれた独特な出会いでした。

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ぐるぐるジェラート

同級生の方が北海道で牧場をやっているからそこの牧場で牛乳とかを使ったアイスクリームを売りたいんだみたいな話で、ラーメン屋さんに土間を貸したのが2019年の7月の終わりくらいでした。土間の中心にジェラートマシーンをドーンと置いてゆるーくやったという感じですね。20万円するジェラートマシーンをラーメン屋さんの方が買ってくれました。

— ねづくりやとジェラート —
一か月くらいやったんですけど、どんなコラボレーションも上手くいきました。もちろん近所の子たちが遊びにきて食べてくれるし、キッザニアみたいに子どもたちにジェラートを販売してもらって儲かったお金を何に使うかというのもみんなで考えました。夏は映画の撮影とかでねづくりやを使ってくださることが多くて、そういう時にスタッフ20人とかにケータリングとしてジェラートを出したりもして、既存で活動をしていたことと掛け合わせたら可能性が広がつて、なんかこの感じいいなぁと思っていました。
今、私は喫茶許可をとって西日暮里でジェラート屋さんを開業しているのですが、出店している西日暮里スクランブルのオーナーさんみたいな人が偶然子どもと一緒に通りすがって、「なんでこんなことをやっているの」って声をかけてくれたんです。それで、ウチも新しく拠点を作るからそこに入らないかみたいな感じで「ぐるぐるジェラート」が始まりました。

— ジェラート屋さんになることに対しての葛藤はなかったのですか —
建築を勉強していたんですけど、自分は一歩引いて空間だけを作るというよりは空間で何かをするプレイヤーになることがどうしようもないくらい好きだったので、実践的なことをすることが我慢できなかったです。本当の店舗になったらどうなるんだろうっていうワクワクしかなかったのであまり考えていませんでした。場所を借りてやるぞとなったタイミングで株式会社を作ったので流れに身を任せた部分もあったんですけど、覚悟は決めましたね。

— 2020年1月に完成しましたがコロナの影響はどうですか —
店舗は大きなわけではなくて駅前のテイクアウト専門店みたいな業態なのでコロナのダメージは受けずらのではと思います。イートインができる場所もなかったので、営業自体は夜の時間を少し狭めたくらいですね。

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谷根千宅配便

加盟している店舗の宅配便サービスなんですけど、最初の自粛要請が出たくらいに、自分たちが場所を構えているのが西日暮里スクランブルを運営をしている設計事務所の人と一緒にみんなで集まって考えて、二日後にはローチングしました。その後、テレビなどで取材をしていただけたので、その時はすごい忙しかったです。
でも、今月末でサービスは辞めようと思っています。必要としているときに必要としている分の注文がきて、必要でなくなったらなくなるというサービスは嫌いではないので、自主期間が終わってからも盛り上げていく感じではないです。

— 話題になったのになぜ辞めてしまうんですか —
コロナの中でテイクアウトとかデリバリーに切り替えますといっても物件が二階や五階にあったりするとお客さんはもう来ないんですけど、全部のお弁当をウチが代わりに販売するよって10軒くらいのお弁当を販売しているお店があったんですね。お客さんを奪い合うのではなくて一緒に仕組みを作って盛り上げていく下町ならではの考え方だなとすごい共感ができました。その時につどつど必要になったときに必要な時だけ仕組みを考えるということをやっていった方がおもしろいなと思ったんです。なのであえて枠をガチガチに固めていく作業というのはいらないんじゃないかなという感じですね。
みんなそうなんですけどベースでやっている商売があって、コロナで余った時間をなにに使うってなったときにはじまった仕組みなので、これからも半分は自分たちの城を守るために頑張ってもう半分くらいは別の仕組みをやっていくみたいなバランスでいいかなって思っています。
今、自分たちが話しているのは別の地域にも行ってみたいよねって。月の半分は活動して月の半分はお店をしなくて別のことをやるみたいな。

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空き家活用の展望

コロナの影響でお店も閉まってしまいますし、これからは都内に住まなくてもいいんじゃないかってみんな地方に移動する人も増えていくと思います。でも、みんなが分散をして住むようになったとしてもハードとしては残り続けてしまうんです。今空き家率は38%くらいなんですけど、このままだと、40%、50%になってもおかしくなくて、そうなったときにまちの余白といわれるものを地域に対してどういう活用できるのかなと。西日暮里スクランブルも駅前にある空きテナントでそこで何かをやると聞いたので面白そうだなと思いました。
今後、二店舗目三店舗目とジェラートをやっていくことも考えていますが、飲食がテーマじゃなくても空き家をつかってやっていければいいかなって思っています。谷根千宅配便をやってみてお店のリーダーは違うのに、同じテーマがあれば仕組みが生まれるんだって思って、自分たち主導のお店をやるというのもアリですし、そうではなく連盟のように商店の人たちと一緒に何かをするということも面白い。

— なぜ、空き家なんですか —
日本の不動産って一時流通(新築)がすごく人気で、一回人が住んでしまうと価値がとても下がるんです。でも、むしろ人が住めば住むほど価値が上がっていくような流れが生まれる物件にしたくて、どんどん立ててどんどん壊してという流れよりは大切に使って行くということをしたいです。
今いくつか物件の話があるんですけど前に火事が起こったとか警察沙汰になったとか何かあった物件は次のテナントがほとんど入らない。なので自分たちがちょっとブラックだった物件に入って面白おかしいことを三か月くらいやって、僕たちが抜けた後に「前に面白おかしいことをやっていた物件なら借りてみたい!」っていうような、短期的に不動産を借りることによって価値を上げるみたいな活動をしていきたいですね。

— 空き家を探すときに立地も重視するのですか —
自分たちのやっている商売というのは駅から近いというよりはポイントを中心として半径3kmとか5kmの人が楽しいと思ってくれる店舗づくりが多いので、八百屋さんをやろうかとか本屋さんをやろうかとか考えています。どちらかというと市の人が考えている拠点づくりに近いですよね。公園がなければ公園のようなカフェをやろうとか。なので立地は何とかなる感じがしています。


スピード感をもって様々サービスを生み出していますがやってみたいことはありますか

自分がねづくりやという物件や古民家に出会って一番学んだのはこれを何につかってやろうとかとワクワクすることに出会えたのがすごい幸せでした。なので、みんなにも何かを活用して自分を表現するみたいな、空間を使った表現に関わるキッカケ作りをどんどんしたい。なのでこれからもリアルな場を作りますけど、全部自分がリーダーで面白い企画を立ててみんなが消費をする側というより、みんなも作る側の空間に入ってもらいたいなっていうのはありますね。
空間として今の時点で美味しいものが食べられるとかすごい人がいるとか様々な価値があると思うんですけど、今ないものを未来に発信するんじゃないかというワクワク感、期待値みたいなことを上げていくことが好きですね。だからねづくりやとかぐるぐるジェラートもそうですけど、「あいつらがまたなんかやらかしそうだぞ」みたいなのはこれからもやりたいですね。

編集後記

谷根千宅配便の話や立地の話を伺ったときに、自粛期間が終われば辞めてもいいなど棲み分けをしっかりと意識をしているという印象をお話の中から私はすごく感じました。旧来的な企業の場合は以下に規模を拡大させて、より多くの売上を常に目指していくというイメージがあるのですが、そういった企業の考えとは一線を画して、自分たちの立ち位置をしっかりと意識をしたなかで共存を目指していくことが、成長至上主義からの脱却に繋がるのかもしれません。
共存を考えた方が、フットワーク軽く、自分たちがやりたいことにチャレンジできるということなんでしょうかね。

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