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欧文「姓・名」順の、姓の大文字表記は再検討すべき

「日本人のローマ字表記 来年1月から「姓・名」の順」
というニュースがありました。

公文書における日本人名のローマ字表記について、来年1月1日から原則「姓-名」の順とすることを決めた。関係する中央省庁で申し合わせた。姓を明確にしたい場合は、全て大文字にする方針も確認。

https://www.sankei.com/smp/life/news/191025/lif1910250022-s1.html

とのこと。

「姓・名」の順というのは、考え方が分かれる部分だと思いますが、問題なのは、「姓を明確にしたい場合は、全て大文字にする」という部分です。こうした表記の仕方は英文でもよく行われるものですが、これはアクセシビリティ的には問題があるように思います。

文字による表記というのは、これからはデジタルデータのほうが多くなります。デジタルの文字情報は、視覚的に読まれるだけでなく、音声リーダーで読み上げられることも少なくありません。これまで音声リーダーを使うのは、視覚的な障害を持っている場合が多かったですが、これからはもっと多様な場面で、音声による機器とのコミュニケーションが行われるようになるでしょう。そうした場合に、読み上げに問題のあるデータというのは、大きなマイナスになります。

グーグル翻訳の読み上げ機能で試してみましょう。

SATOのような人数の多い姓の場合は、スピーカーアイコンをクリックすると、正しく読み上げてくれます。
https://translate.google.com/?hl=ja#view=home&op=translate&sl=en&tl=ja&text=SATO

ところが、綾小路のような姓を大文字で表記すると、アルファベットを一文字ずつ読んでしまいます。
https://translate.google.com/?hl=ja#view=home&op=translate&sl=en&tl=ja&text=AYANOKOJI

大文字の繋がりは、基本的にはNHKのような略号として扱われるので、アルファベットとして読んでしまうのです。

小文字で表記をすれば、ほぼ問題なく読み上げてくれます。
https://translate.google.com/?hl=ja#view=home&op=translate&sl=en&tl=ja&text=ayanokoji

一般的な姓かどうかの閾値がどのあたりなのかはわかりませんが、姓を大文字で表記することが、音声読み上げという面ではマイナスになることは確かといえるでしょう。

これからの時代に、紙による利用だけを考えて表記を決めるのは問題です。名前の表記は、今後膨大にデータが蓄積されていきます。導入前の段階で、今後の利用の仕方も含めて、きちんと考えるべきです。


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