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都会のマナーのこと。

1974年に上京して、私は西武新宿線の井荻駅の近所に下宿しました。
もとは下宿館でまかないがついていたそうですが、私が下宿した時にはまかないはありませんでしたので、もっぱら駅前の中華屋などで外食でした。
上京してすぐにマナーの洗礼を受けました。
環状八号線沿いの銭湯「井草湯」をよく使っていたのですが、洗い場でお湯を流しながら顔をじゃぶじゃぶ洗っていると、となりのおじいさんから「ばしゃばしゃやるな。かかるじゃねえか」と怒鳴られました。以来、周りを気にしながら顔を洗ったり洗い桶の湯を流すようになりました。また、東京のお湯は私にはとても熱く、水を入れて冷ましていると、やはりとなりにつかっていたおじいさんが、「ぬるくなるからやめろ」と怒鳴ったので、以来、水を入れずに熱い湯に慣れるようにしました。刺青のあるおじいさんもいて、慣れるまでスリルがありました。
またある時、日比谷線の銀座駅で、傘を持ってエスカレーターを上がるとき、傘を横向きに持っていたので、うしろの乗客から「あぶねえだろ」と怒鳴られました。以来、エスカレーター及び街のどこでも傘を持つときは先端を人に向けないように気を付けています。
そしてまたある時は、丸ノ内線で新宿から銀座へ向かっているときだったでしょうか、雨の日でしたが急いで電車へとびこんで網棚へかばんをのせたときに、雨のしずくが落ちて、直下のおじさんにかかったときに、「つめてえだろ」と怒鳴られました。以来、電車の網棚に雨の日にかばんをのせるときは気を付けていますが、荷物を忘れてしまうといけないので、長いこと網棚を使っていません。そういえば最近は網棚を使っているお客さんを見ないようにも思うので、今や網棚はいらないのかもしれません。
というわけで上京して割と早く都会のマナーを学ぶことができてよかったです。当時はよく怒鳴るおじさんがいましたが、今、私にはマナーを注意する勇気は正直ないです。なぐられたら怖いので。いつだったか、埼京線に座っていたら、隣に若い女の人が乗ってきて座り、おもむろに化粧を始めたので、「やめろ」と注意したところ、即刻「うるせえ、じじい」と逆ギレされたことがありました。カチンときましたが怒りをしずめて「とがった道具で目のところとか化粧しているから、危ないので注意したんだよ」と静かに言いました。私もいきなり怒鳴ったのがいけなかったとあとで反省したのですが、注意の仕方も今は気をつけないといけないですね。つくづく。あーこわい。

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