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「ハッとしない言葉」に励まされることだってある

先日、Twitterで交流のあるマサキマサユキさんとお会いした。私も書かせていただいているSPOTというメディアの先輩ライターだ。

マサキさんは広島在住で、イベントのため東京に来る。そのときに、マサキさんがやっていたある活動について取材させてもらう予定だったのだけれど、媒体の都合により企画が流れてしまった。

取材を抜きにしてもマサキさんに会ってみたかった。けれどマサキさんにしてみれば、わざわざ時間をとって私と会うメリットはないだろう。

と思っていたら、取材じゃなくてもお茶しましょうという話になった。しかも「サキさんのエッセイに出してください!」と言われる。

出たい人いるんだ……!

嬉しい。「出してください」と言える素直さも、すごくいいな。私ならきっと自意識が邪魔をして言えない。


池袋駅は広く、待ち合わせは難航した。マサキさんはメトロポリタン口にいて、赤いパーカーを着ているらしい。メトロポリタン口に行くもそれらしき人が見当たらず、ルミネの周りを一周して探す。

その間、マサキさんからは、今いる場所から見える風景の写真が送られてくる。謎解きゲームかよ。金田一少年やサイコメトラーEIJIの、手強い犯人に「さあ、私を見つけてごらん」とか言われる展開を連想し、ちょっと笑ってしまった。

元いた場所に戻ると、吹き抜けの下を覗き込んでいる赤いパーカーの男性がいる。

あの人かな……。

何度もネットで顔を見たことがあるのに、いまいち確信を持てない(私は異常に人の顔を覚えられない)。人違いをするのが恥ずかしくて声をかけられず、メッセージで「エスカレーターのところにいますか?」と確認してから、近づいていった。

ある程度近づくと、マサキさんも私を認識したようで、お互いに「ですよね?」と表情で探り合う、例の数秒間があった。インターネットで知り合った人と初めて会うとき、必ずあるやつ。

「どーも~」とにこやかに挨拶をするマサキさんの声に、「あ、意外と声が低いんだな」と思う。そう思ってはじめて、自分の中に「マサキさんの声のイメージ」があったことに気づいた。

赤いパーカーはチャンピオンで、デニムっぽく見えるストレッチパンツはくるぶしが見える丈。オニツカタイガーのスニーカーを履いている。

ぴったり同い年だな。

同い年の男の人はだいたい年上に感じるのだけれど、マサキさんは「ぴったり同い年」の感じがした。

駅のそばにミスタードーナツを見つける。生活圏内のミスドがどんどん減っていて、食べたいと思っていた。他県から来た人に全国チェーンの店を提案するの、我ながら気が利かない。

ショウケースの前に並んで立ったとき、見上げる首の角度で「背が高い人だな」と気づく。

それぞれお会計をするつもりでいたら「出します!」と言われ、「いやいや、いいですよ!」と言ったものの、笑顔で押し切られてしまった。なんだか申し訳ない。「こういうとき、どこまで強く断っていいかわかんないですね」と言ったら、笑っていた。

ミスドの小さなテーブルでいろいろな話をした。とは言え初対面だし、そこまで込み入った話をするわけでもない。

印象的だったのは、話したことよりも「話さなかったこと」。

マサキさんはあまり積極的にnoteを読んだり書いたりしていない。だからか、noteの話題がほとんど出なかった。私はnoteをきっかけにライターになったので、ネットで知り合った人に会うとnoteの話題になることが多い。正直言って飽きているので、マサキさんがそういう話を一切してこなかったことが印象的だったし、なんだかほっとした。

話の流れで、「webメディア業界では末席も末席、無名の新人ライターでほとんどの人が吉玉サキなんて知らないのに、noteの一部界隈では売れっ子だと誤解されることがあって、なんだか違和感がある」という話をする。

マサキさんはうんうんと頷き、「サキさんは誤解されると居心地悪く感じちゃうだろうけど、思わせておけばいいんですよ。売れてると思われてるほうが仕事も来るし」と言った。

なんていうか、普通だ。全然いいこと言ってない(ごめん)。

だけど、励まされた。

友人の「ハッとした言葉」についてのエッセイをよく書くのだけれど、こういう「ハッとしない言葉」に励まされることだってある。気づきとか考えさせられるとか、そういうのが特にない、でも心地いい言葉。

悩みというほどでもない小さな違和感を、この人に聞いてもらえてよかった。

友達になれそうだな、と思う。というか、私の中ではもう友達になってしまった。

2時間ほどお茶をして別れた。

改札の前でマサキさんを見送ってから30分ほどルミネを見て、山手線に乗ってTwitterを開く。

マサキさんのツイートはやっぱり「イメージの声」で再生されて、本当の声がどんなだったか、もう思い出せなかった。

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ただ存在するだけでけっこう大変ですよねぇ
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ライター・エッセイスト/著書『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』http://urx2.nu/Vmkr web媒体や雑誌で執筆中/有料記事は知人に読まれたくないだけで有益な情報とかじゃないです/お仕事のご相談はsaki.yoshidama@gmail.com