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好きな服と似合う服

先日、友人と話していて、

「私、スキニーデニム似合わないから」

と言ったら、

「スキニーが似合わない人なんている?」

と言われた。

そう、私もずっとそう思っていた。スキニーデニムのような、シンプルで無難なアイテムは誰にでも似合うと。

しかし、30代になった頃から、気づけばスキニーが似合わなくなっていた。

単純に、「太った」というだけの理由でもないと思う。うまくいえないけど、もっと根本的に似合わない感じがする。

ふと思う。

もしかしたら、昔から似合っていなかったのかもしれない。

だけど、「シンプルで無難なものは誰にでも似合うはず」という思い込みがあり、似合わないという事実に気づかなかったのではないだろうか。

◇◇◇

29歳から30歳にかけて長旅を経験し、その前後に結婚や引越しを経験したことで、ライフスタイルが変わった。

どういう心境の変化か自分でもわからないけど、そのあたりから急に「好きな服よりも似合う服を着たい」と思うようになった。

それまでは、服を買うとき「これ好き!」というものだけを試着していた。だけどその頃からは、「好きな服」だけではなく、「そんなに好きではない服」も一緒に試着してみるようになった。

着てみると、意外なことに「そんなに好きではない服」を着た自分のほうがしっくりくることがある。

たぶん、そっちのほうが似合っているのだ。

たとえば、私はリネンのシャツが好きだが、リネンのシャツとシフォンブラウスの両方を試着してみると、ブラウスのほうがしっくりくる。

不本意だが、仕方ない。必ずしも、好きな服のほうが似合うわけではないと気づいた。

「好きかどうか」をいったん横に置いて、色々なものを試着してみるようになり、たくさんのことに気づいた。

白と黒が似合わないこと。Vネックが似合わないこと。スキニーに限らず、フルレングスのパンツが似合わないこと。(しゃらくさい、バカにされようと今後は長ズボンと表記してやる!)

はじめは、30代になって似合わなくなったのだと思った。だけど、若い頃の写真を見返してみると、昔から似合っていない。

……なぜ気づかなかったんだろう?

おそらく、「私はこういうタイプだから」という思い込みが、似合うものを気づきにくくさせていたのだと思う。

◇◇◇

二年くらい前にこの本を読んだ。

本に従って自己診断したら、私の骨格タイプは「ウェーブ」で、パーソナルカラーは「オータム」だった。

それで、モノトーンやVネックやスキニーが似合わない理由がわかった。骨格や、肌や瞳の色に合っていなかったのだ。理由がわかると、なんだかものすごく腑に落ちた。

この話を友人のトモヨ・メグミ・ミホと会ったときにしたら、みんな、プロにパーソナルカラー診断をしてもらったことがあると言う。

え、いいなぁ!

診断結果は、ミホとメグミがオータム、トモヨはスプリングだったそうだ。

しかし、トモヨはその結果に納得がいっていないようで、

「絶対、診断が間違ってると思うんだよね」

と言う。その根拠を聞くと、

「私、スプリングの色調嫌いなんだよ。オータムの色調が好きなのに!」

と言う。

いや、それを言ったら、私だってウィンターが良かったよ。

好きな色調と似合う色調は違うのだから、仕方ないじゃないか。

◇◇◇

トモヨはオシャレだが、「似合うかどうか」をあまり気にしない。

一緒に買い物に行っても、アイテムやコーデしか見ていないのだ。

だからたとえば、AとBで悩んだとき。トモヨは、「どちらがその人に似合うか」よりも、「どちらのアイテムがオシャレか」で判断する。

なので、「AとB、どっちが似合う?」と聞いたのが、私でもミホでもメグミでも、トモヨの答えは同じだ。コーデを見ているので、そのコーデの上に誰の顔があっても、同じことを答えるのだ。

別に、トモヨのそういうファッション観が悪いわけではない。「似合う服」よりも「好きな服」を着たっていいのだ。服を選ぶ基準は個人の自由で、ルールなんかない。

だけど、「私に似合う服」を探すときは、トモヨの意見は参考にならない。

参考になるのは、意外にも夫だ。

夫はファッションに疎く、全然オシャレじゃない。流行も、コーディネートもわからない。

だからこそ、まったく先入観のない意見をくれる。

試着してみて「これどう?」と聞くと、

「なんか顔色悪く見える」
「なんか太って見える」

などと、見たままを言うのだ。

たとえば試着したのがスカートだったとして、夫は、そのスカートが一般的にオシャレなのかどうかわからない。

着回しがきくのか、靴との相性はどうか、34歳として若すぎやしないか。そういったスカートに付随する「情報」を一切知らないのだ。

彼にわかるのは、自分の目に見えているものだけ。

その「情報に左右されない意見」はとても純度が高く、私に似合っているかどうかの判断材料になる。

だけど、「似合う?」と聞くと「わからない」と言われるので、あくまで「どう?」と聞くしかない。

夫が

「うん、違和感はないよ」

と言うなら、その服はたぶん、私に似合っている。


まぁ、だからなんだという話だけど、自分に似合うかどうかは、意外と自分では気づきにくかったりする。

自分でも思いがけないものが似合ったときは、(陳腐な表現だけど)「自分の知らない自分」を見つけたようで興味深い。

好きな服がわからなくなってきたファッション迷子の30代だからこそ、「似合う服」を開拓していけたらいいな。

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