チーム状態の変移についての整理

概要

タックマンモデルっていうのがあるんですが(詳しくはググって)、それをベースに自分の観測範囲でチームを成熟させるにはこうしたら良いんじゃね?を整理してみました。現場によっては「必要ない」とか「こんなことしてる時間はない」とかあると思いますが、それはそれで良いと思います。1つのパターンとして見てもらえたらと思います。

形成期/Forming(フォーミング)

状態

・チームを構成するメンバーが決まった状態
・相互理解ができているメンバーもいればできていないメンバーもいて、チームの共通認識はまだできておらず、個々の役割は杓子定規では決まっているが効率的に動ける状態にはなっていない
・チームというには脆く、ただ人が集まった状態に近い

特徴

・PM/PL等、責任を持つ人に説明や指示を求めようとする
・忖度や遠慮をして言いたいことが言えない
・チーム内に不安や緊張感が走っている
・不安や緊張感は無く穏やかに見えてチームとして醸成されていると勘違いしてしまう
・未来に対しての温度感の違いによるすれ違いが起こる

要約:メンバーが互いに牽制しあい緊張感がある状態。

必要なチームビルディング

・お互いを「知る」環境作り
・コミュニケーションの「量」を確保できる環境作り
・メンバーへのプロジェクト(目的、ミッション)の説明
・メンバーに対して明確で手戻りの少ない作業指示

要約:メンバー間の心理的距離が遠いところにあるのでラフな場やゲームを用いて距離を縮める。相手を「知る」段階で「理解」までは求めない。「明確で手戻りの少ない作業指示」は非常に難しいが、この段階で仕事を通じてメンバーからの信用を積み重ねていくことが後々の関係性構築に大きく影響する。

有効なアプローチ

・チームランチや飲み会等、堅くない場でテーマフリーでお互いに「話したことがある」「話すことに抵抗がない」状態に持っていく
・チャットツールの用意またはランチや定時後以外でラフなコミュニケーションが取れる場やチームの雰囲気を作る
・スタート段階なのでふわっとした指示やタスクを渡してしまいがちになるが、小さく明確なタスク(無駄にならないタスク)を渡して、「自分のやったことが無駄にならなかった」という実績を積み上げる

この段階では堅いミーティングは避けた方が良い(心理的な距離が遠ければ遠い程本音や思っていることが表面化されない)。1日2日はラフな雰囲気で距離を縮めつつ混乱期に移行するのが望ましい。

混乱期/Storming(ストーミング)

状態

・チームの目的・目標に対する意見の食い違いや温度感の違い、メンバーの関係性、プロジェクトの進め方について対立が生まれる
・主に価値観や期待、スキルレベルの違いから対立が生まれる
・このステージを経由せず統一期/Normingに到達しても問題は無いが、強烈なリーダーシップや一方的な正論でチームを統一すると後々プロジェクトが厳しい状態になった時に抑えられた価値観や考え方の違いから大きなダメージをチームが受ける可能性がある。

特徴

・個々がそれぞれの考え方・捉え方で課題解決を進める
・チームの課題に対して個々の考え・捉え方・価値観による衝突が生まれる
・チーム内のヒエラルキーを気にしだしヒエラルキーが暗黙的に生まれる
・メンバーのエネルギーがチーム内部の衝突や競争に向けられる
・衝突や競争で疲弊しチームのモチベーションや士気が低下する

要約:互いを理解できていない状態で仕事を進めないといけないというプレッシャーを受けて、攻撃・衝突・競争が生まれる状態。攻撃や競争をしてもかなわない相手がいる場合、自分を隠して攻撃や競争自体を避けるメンバーもいる。

必要なチームビルディング

・コミュニケーションの質を高める
・情報の透明化を図る
・価値観や得手不得手等、お互いを「理解する」環境作り
・決め事やルール、課題解決はメンバーの意見を表面化させ全員が「理解」「納得」して合意を得る
・リーダーはイベントやアクティビティ外でも日々メンバー同士が理解しあえるような動きを行う、リーダーの振る舞いがチームに大きく影響するステージ

要約:まだチームとしての結束力が弱く、リーダーの動きに合わせてチームの形ができてしまうステージ。リーダーはチームカルチャーを体現する人であってリーダーがチームを形成するのではなく、目的・ミッション、価値観によりチームが形成されるよう促す必要がある。

有効なアプローチ

・ドラッカー風エクササイズ等でリーダーを含めたプロジェクトメンバーの相互理解(価値観、得手不得手、期待)を表面化させ認識させる
・情報整理(一元化や情報確度によるツール切り分け等)を行い、誰もが情報にアクセスできる環境を作る
・メンバーそれぞれの価値観やミッションをベースにチーム憲章やWorking Agreement等、チームの約束事や目指す姿の定義を作る
・対話(コミュニケーション)では「知る」「理解する」「納得する」を意識し、互いの抽象度を合わせる

統一期/Norming(ノーミング)

状態

・チームの目指すべき目的やミッション、各メンバーの役割や特徴が共有され統一感が生まれはじめる。チームで動いている感を実感できる状態
・チーム内に変更(体制変更や新メンバーの参画)への適用もできつつある

特徴

・チームが規律を持ち、自治を始める
・目的やミッション、メンバーの役割、責任の範囲が明確になってくる
・一部のメンバーだけではなくチーム全体で意見の交換が発生する
・「私」から「私たち」「うちのチーム」と表現が変わり始める
・チームが一部のメンバーに合わせていくのではなく、メンバーがチームに合わせるようになる
・建設的な意見で議論を行い、チームの合意でチームが活性化してくる
・メンバー間で信頼感が生まれ始める

要約:俗に言う「チームらしさ」が生まれている状態。

必要なチームビルディング

・チームメンバーがお互いの理解を深化するための「対話」ができる環境作り
・チームの成長に伴うチームリファクタリング
・メンバー成長に伴う規律や相互理解のリファクタリング
・チームが合意したルール・役割・目的・ミッションの達成による成功体験の経験

要約:混乱期を超えて正しく衝突して理解し合いチームとして機能し始めてくるステージ。チーム・メンバーの成長に合わせて古い価値観や規律を適宜アップデートしていく必要がある。古いままだとチームの成長を阻害し、メンバーの「今」を理解できずに再度混乱期が訪れる可能性がある。また、新しい取り組みを行った際にも混乱期に戻る可能性はあるが、相互理解や正しく衝突ができるチームであれば統一期に戻ってくるのはそう難しくはない。チームはまだリーダーのリーダーシップに頼る面がある。

有効なアプローチ

・ドラッカー風エクササイズやWorking Agreementの見直し
・メンバーの成長や自立を促すための1on1
・短いスパンでの目標やゴールを設定・達成し、成功体験をチームで共有する

アクティビティとしては「ドラッカー風エクササイズとWorking Agreementの見直し」「1on1」ぐらいですが、短期間でメンバーが十分と感じる目標の設定・達成をして成功体験をさせることが非常に難しいです。
また、得手不得手・好き嫌い・仕事のスタンスは環境や成長により短期間で変わる可能性があります。ドラッカー風エクササイズの見直しをしても追い付かないケースも往々にしてあるので、アクティビティ外でもメンバーが「正しい相互理解」ができている状態を維持できる環境を整えておく必要があります。

機能期/Performing(パフォーミング)

状態

・チームに結束力や連動性が生まれ、相互理解による相互作用が働く。
・チームとして最もパフォーマンスを発揮できる状態。
・チーム内の体制変更や新しいメンバーの参画等の内部変更に対しても強く変更によるパフォーマンスの取り返しも早い。

特徴

・チームを体現する人が現れる
・相互理解が進みメンバー同士で相互作用が働く(能力の向上、モチベーションの向上)
・チームが一致団結して機能する
・メンバーが自ら意思決定し、率先して行動する
・個々のメンバーが個々のメンバーの能力を引き出し、相互でパフォーマンスとモチベーションを引き出し合う
・目的やミッションを達成することで、成功体験を共有する
・チームの課題はチームで解決し、成果を生み出せるようになっている
・「このチームだったら何が起きても大丈夫」という強い信頼関係が生まれる
・チームの想いと形にして成果に繋げられている

要約:メンバーが自立し個々がお互いに能力やパフォーマンスを引き出し合いチームとして成果を生み出せる状態。「俺たち最高!イヤッッホォォォオオォオウ!!」状態。

必要なチームビルディング

・マイクロマネジメントは極力控えてマクロマネジメントを行うようにする
・機能期が続くよう、チームの最適化、チーム構成の変更を行う
・仕事を離れたコミュニケーションやゲーム等で仕事外での一面を理解する

メンバーが主体性を持って自立しチームに貢献しているステージ。ここまで来るとリーダーとしてはチームを作るフェーズからチームのパフォーマンスを維持する方向に舵取りをする必要がある。仕事外の一面を知ることでその人が「仕事だから」と抑制している側面を理解できる。

有効なアプローチ

・メンバーの主体性や意思決定を尊重したタスクアサインや作業依頼
・メンバーの関係性を考慮したチーム構成変更
・ベロシティ測定(パフォーマンス測定と言うよりパフォーマンスの維持確認や取り組みの効果測定)

ここまで来ると「リーダー」としての役目はそう多くありません。メンバーを支える縁の下の力持ち役になるかと思います。時としてリーダー自身が動かなければならないこともありますが、その時も周りのメンバーの意見や考えを尊重して、リーダー自身もチームの一員であることを忘れずに動くことが重要になります。

散会期/Adjourning(アジャーニング)

状態

・目的・ミッションの達成、もしくは時間的な制約によるチームの解散。
・メンバーは別の目的やミッションに向けて動き出す状態。

特徴

・強い信頼関係が生まれ、場所やミッションが変わっても理解し合える関係が構築されている
・成長の証としてメンバーの思いや、やりたいことにズレが出てくる
・退職や異動を考えるメンバーが出てくる

要約:メンバーが次に向けてやりたいことや進みたい道が見えて、個々が次のステージを見据えて動き出す準備をしている状態。

必要なチームビルディング

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有効なアプローチ

チームの終わりの時です。メンバーが次のプロジェクトやチームへスムーズにジョインできるようにフォローをします。
また、このチームで成し遂げたかったことを成し遂げられたか、何が成長したと感じるか、他のメンバーの成長をどう感じたか、当人を含め周りの変化についても話を聞きましょう。
話を聞くことで自分と周囲の変化を理解して、改めてチームや他のメンバー、そして当人の成長を振り返ることができると思います。

リーダーとして最後の仕事です。

終わりに

一般的に形成期から衝突を避けて統一期に向かおうとするチームが多い印象がありますが、正しい衝突のしかたを知らないままチームを動かすことは結構なリスクを孕んでいます。正しくぶつかり理解して次のステージに進んでいきましょう。

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