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百歳まで頑張ろうって、言ってしまったこと

 96歳の祖父に「おじいちゃん、100歳まで頑張ろうね!」と何気なく言ってしまったことがあります。何気なくというより、元気を出してもらうために意識して言ったと思います。

 すると祖父は私の方を向いてじーっと顔を近寄らせてこう言いました。

 百までしかだめか?
 その後はどうしたらいいんじゃ?

 あぁ。確かに。やってしまった。優しくことばをかけたつもりだったのに。言われた人にとってどういう意味になるかを考えてはいなかった。

 何も言えず、おそらく表情も固まっていた私を見て祖父は、ニヤリと笑った。


 そんな祖父は99歳の時に結核菌が見つかり、指定された病院に隔離されることになりました。その年での宿替えはかなりのストレスだから、もう帰ってこれないと思い、面会ではこれが最後かもなぁと思っていました。

 が、退院してきました。そして退院祝いに一緒に食事に行った時

 あの病院の味噌汁は、本当に味噌汁じゃった。
 何も入っとらんじゃった。味噌だけの汁じゃった。

 と言いました。

 世の中の出来事や、仕事上のことなどで、ムキムキしたり、理不尽だと思うことがあって祖父にはなしをすると、いつもこう言いました。

 いろんな人がおる。いろんなことがある。

 このことばは、いろいろと納得できない出来事があった時に、心を穏やかにしてくれます。

 結局、105歳まで生きて、ちょっと出かけてくるという感じで旅立っていきました。今日はそんな祖父の誕生日です。


 

 

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