無常

 幼い頃、私は一度に多くのことを覚えることができなかった。あの人は「同じことを何度も言うのは嫌いだ」と私を叱り、一度言ったことは二度と言わなかった。

 その人は今、難聴になり私が言った言葉を一度で聞き取ることができない。

 否でも応でも、歳をとるのは定めだ。
昔できたことが今できるとは限らない。
今できないことが未来できないとも限らない。今だけを基準に振る舞うことの危うさを知らないのだろうか。

「人の立場になって考えろ」

 その立場になる可能性をあなたもまた持っている。

「人がされて嫌なことはしない」

 あなたがされる可能性もあるのだから。

 自分が人にしたことを、人が自分にして怒るなんて、いやまさか、そんなことしないでしょう?と言いたいところだけれど。
そう言う人に限って逆上するから手に負えない。

 そんな人にはなりたくない。なりたくないと、思いながら。

「同じことを何度も言うのは嫌いだ」と言いそうになる私がいつも、どこかにいる。


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手舞足踏
葦の髄から . その日考えたことなどを書く。これは未来の私へ捧げるエンターテインメントだ。
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