採用面接マスター #16 読書の力(2)
皆さんは「学生時代に力を入れたこと」を「学チカ」のように訳しますよね。
ビジネスの世界も同様に、
「顧客がその会社の商品やサービスをどの程度満足しているか?」
これは
「CS」(Cvstomer Satisfaction)の一言で表現します。
「企業の投資に対するリターン」は「ROI」(Return On Investment)で片付けます。
このような簡略化を抽象化と言います。記号に置き換える作業のようなものです。
例えば、
「お客様の満足度を上げることで、会社の投資に対するリターンを最大化を図ります。」
これは
「CSの向上によりROIを最大化を図る。」
と抽象化出来ます。どうでしょう?
メッセージは同じでも文字数は半分になりましたね。
抽象化を出来れば出来るほど、話の中身が濃くなり、賢い話し方になります。
薄い水割りよりもウイスキーの原酒のような表現の方が何倍もスマートに受取られる訳です。
この本は抽象化を理解する良書で、
「抽象化を制するものは思考を制す」
と言い切ります。
受験の時に読んだ現代文のようですが、まさにあの記号だらけの文章を理解し、使いこなせるようになることが、頭の良さをアピールし、他の学生との差を生み出すのです。
例えば、志望理由の比較をしてみましょう。
【普通編】
貴社は言うまでもなく自動車業界でトップシェアです。それにも関わらず、この先の未来を魅力的に想像し、ビジョンを描いて公開されています。そして、会社の資金を大量に投下し、多くの社員がこのビジョン実現に関わっていらっしゃる。そのために着実にビジョン実現に向かっており、このようにチャレンジしている企業は他社にはいないと感じるので、自分もそんな環境で成長したいと考えて志望している。
【抽象編】
貴社は業界のリーダーにも関わらず、より高次で難易度の高い次世代ビジョンを描き、大胆に経営リソースを投下することで実現性を高めており、これは他社に無いチャレンジングな環境であることを感じるため志望した。
どうでしょう?半分の量で同じメッセージを伝えると、表現が締まるのが分かると思います。
半分の時間で自分の思いを伝えられる、ということは、面接というコミュニケーションの量を実質、倍に出来るということです。
これが抽象化の力です。
ビジネスにおいて時間は最も重要なリソースの一つです。抽象化は経営者にとっては必須のスキルです。
そしてこれは、時間はかかりますが、良質なビジネス書を読むことで、身に付けることは可能です。
ネットの文章は、残念ながら質的には玉石混交で、抽象化の訓練には向きません。
書籍は推敲に推敲を重ねた作品ですので、
抽象化の訓練には書籍一択です。
採用活動のためでなく、入社後も読書の習慣の有無が、社内での昇格を大きく左右しますので、今からでも読書の習慣をつけてください。