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どこかのふうけい - Somewhere in True

<月曜日>

太陽の光をさえぎるように、木漏れ日がさしていた。私の影は短い。ここはバスの停留所。子どもたちの声が聞こえる。鳥がいっせいに飛び立っていった。バスが見える。近づいてくる。

 私はバスに乗った。

<火曜日>

眩しい太陽の光をさえぎるように、街路樹から木漏れ日がさしていた。私の短い影がベンチまで届いていない。バスの停留所。遠くから聞こえる子どもたちの声。電線にとまっていた鳥がいっせいに飛び立っていった。バスが見える。近づいてくる。

 私はバスに乗った。

<水曜日>

眩しい夏の陽光を遮るように、葉緑の街路樹から木漏れ日が差していた。私の短い影が、鍼灸院の広告が貼られたプラスチック製のベンチまで届いていない。新興住宅街にある、市バスの停留所。遠くから、小学校へ集団登校する子供たちの賑やかな声。撓んだ電線で休んでいた雀がいっせいに彼方へと飛び立っていった。薄緑色のバスが見える。少しずつ近づいてくる。

 私はバスに乗った。

<木曜日>

 眩しい夏の光は一瞬に消えた。街も消えた。世界の終わりが見える。少しずつ近づいてくる。

 私はバスに乗れなかった。

<金曜日>

風景の描写なんて無意味だ。何もない。世界の終わりなんて、こんなものだ。少しずつ終わりが近づいていた。

 それでも、私はバスに乗る。

<土曜日>

眩しい夏の陽光は幻影だ。葉緑の街路樹も幻に違いない。木漏れ日も気のせいだろう。私の短い陰影。鍼灸医なんて、どこにいるんだ。プラスチックは、ただの偽物。ベンチはこの世界まで届いていない。街は1秒で消えたんだ。歪んだ停留所。遠くから聞こえる子供たちの声は天使なのか。黒い電線は、きっと別の世界との境界線だ。鳥が何かを言い残すように彼岸へと飛び立っていった。世界は美しい。崩れかける前の美が狂おしい。運転手のいない薄緑色のバスが見える。少しずつ近づいてくるのは遠近法が狂っているせいだ。バスが大きくなっている。

 そして、バスが私に乗った。

<日曜日>


BGM: Connie Talbot - Over The Rainbow

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文章と音楽。灰色の脳細胞です。京都生まれの京都育ち。自己紹介&ポートフォリオ(ライター) https://note.mu/yosh_kyoto_ash/n/n04bcedab00cf はこちら。連絡先 yoshikawa.ash@gmail.com
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