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各国の気候データの信憑性やいかん!


ワシントンポスト紙の調査によると、多くの国が国連に温室効果ガスの排出量を過少報告していることがわかったということです。

https://www.washingtonpost.com/climate-environment/interactive/2021/greenhouse-gas-emissions-pledges-data/?tid=ptv_rellink

合計196カ国から報告があり、世界のギャップ(過少報告の度合い)は85億から133億トン/年に及び、このギャップは、低くくは米国の年間排出量より大きく、高いところでは世界全体の23%を占めていると報道しています。

UNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)では各国の報告書を集め、パリ協定をモニターリングしています。国連機関は、ワシントンポストが特定したギャップの原因を、「異なる報告形式の適用と(先進国と途上国間/ 途上国間での)報告範囲と適時性の不一致」と捉えています。プロトコールの確立と運用が必要でしょう。

ギャップの59%は、各国が土地由来の排出量をどのように計上しているかによるものだと、ワシントンポストは分析しています。

土地は、植物が成長する過程でCO2を吸収し、それを土壌が蓄えています。一方、森林が焼失したり伐採されたりするとCO2は大気に戻っていきます。また、泥炭の多い湿地から排水されたりすることでも戻ります。

ワシントンポストは、さらなる問題点として、国連のルールは、各国の排出量から領土が吸収するCO2を相殺することを認めている事を指摘しています。このルールによって、中国、ロシア、アメリカなどの国々は、年間排出量の半分以上を相殺しているというのです。

将来、多くの国がこのルールを適用し、大量のCO2を排出しながら、一方で「ネットゼロ」を主張するという事態が起きる可能性があります。

例えば、マレーシアは、2016年に 4.22 億トンの温室効果ガスを排出し、排出量上位25カ国に入っていましたが、自国の森林からの吸収量 3.41億トンの相殺を主張し、0.8億トンしか報告しなかったと説明しています。

また、最近注目を集めているメタンですが、CO2に次いで二番目に過少申告が多くなっています。メタンは、石油・ガス部門、農業、人間の排泄物などから排出されています。

空調、冷蔵、電力産業で使用されるフッ素系ガスは、全く報告されていないことが多いということです。因みにフッ素系ガスはフロンと呼ばれており、温暖化係数は、一般的に非常に大きく、数千から1~2万にまで及びます。塩素などが含まれているフッ素系ガスは、オゾン層を破壊するという理由で代替物質に変えられています。

一般的な話ですが、ある対策の効果を検証する場合には、MRVが基本であるといわれます。MRVとは、Measurement、Reporting、Verification、即ち、測定、報告、検証という適正なプロセスを踏むという事です。

温室効果ガスの場合も、建前上は、MRV(測定・報告・検証)により各国の排出削減行動の透明性・正確性を確保しようとしています。実際は、色々問題があるようです。

EICネットによれば、

COP16で採択されたカンクン合意において、先進国は、削減目標の達成状況について強化された指針に沿って排出削減量等を報告し、比較可能性の促進と信頼性の向上のために国際的な評価プロセスを行うこと、発展途上国は、国際的な支援を受けずに行った削減行動に関し一般的な指針に沿った国内でのMRVを経て、国際的な協議及び分析(International Consultation and Analysis, ICA)を行うとともに、国際的な支援を受けた削減行動に関しては指針に沿って国際的なMRVを行うこととされている。



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