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物理学と四柱推命

Amazonが量子コンピュータを使えるサービス を出したとかニュースになっていますが、因果律の世界とまた違う量子の世界ってなんなんだろう、と本を読んでみたりするのですが、読んでも益々ピンと来ない…という状態です。ニュートンの物理学が「古典」と呼ばれたりするように、我々が今触っているコンピュータの仕組みも、じきに「古典」と呼ばれるようになってしまうのでしょう。実際、Amazon Bracket の紹介ページに「classical computers」という表現があります(^^;

クライアントとそんな話題で盛り上がったりする一方、別の依頼で、中国起源の「四柱推命」という占いに必要なロジックをウェブアプリに実装するという仕事をさせて頂いたりしています。…何の関係が?って思われるかもしれないのですが、古典物理学の原則である「因果律」を極めようとした軌跡に面白い共通性があるような気がしています。

物体の自由落下や運動量保存則のように「初期状態が定まれば、結果も一つに決まる」と考えるのが(高校で習う)物理学、「産まれた日時によってその人の運命が決まる」と考えるのが四柱推命です。正直に言うと、ちょっと前までの自分は、前者は信じてたけれど、後者はいかがわしい、と感じていました。


しかし、不確定性原理の文献の中で「ラプラスの悪魔」に出会って、どちらも同じことなのだと認識を改めています。物理の法則通りに物体が動かないのは、初期状態に考慮されていない空気の抵抗や大地の微細な振動、もっと言えば地球の自転や月の引力などが存在するからであって、物体の最小単位である原子レベルで、かつ、宇宙単位での周辺の影響を全て記述すれば、物体の運動は全て一意に決まります。人間の思考と行動も電気信号やタンパク質という原子の集合の反応の結果であり例外ではありません。物理学を極めると、宇宙の全ての動きは既に当初から決まっていることになります(これを全て知っている超越的存在(悪魔)が「ラプラスの悪魔」)。

人間の意志は別物だ!とかって言うと、かえってそちらの方がオカルトっぽく聞こえてしまいます。太陽と地球、そして月の位置関係から暦を作り、その時間と人との因果を記述しきってしまおうとした「四柱推命」の方が、不思議なことに科学的に見えてきてしまいます(これが暦法や天文学の礎になのか、と思えるところがあります)。

かといって、古典物理が役に立たないかというと、そんなことは全然なくて、実用上問題のないレベルで物体の動きが予測出来れば十分なわけです。要は「そういうこと」にしておくとそこそこうまくいく、っていう部分かと思います。占いも同じで、実際の人間には色々複雑なとこあるんですけど、まあ「そういうこと」か、としちゃうことで前向きなベクトルを作り出してくれる機能があるのかな、と考えています。

- 国立天文台 暦計算室

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