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人を呼ぶ木 -伐られたウルシ-

先月、鳥栖漆の木が伐採されました。
記録としてここにひっそり(?)記します。

正確に言うと、
切り株になったもの、上半分が無くなっているもの、無傷が3本(うち2本は日陰で細身)です。

上半分が無くなっている
倒された木
枝などが隅に積んである


様々な事情で伐採されるかもしれない話は聞いていましたが、突然のことで呆然としました。
2月23日、数名で分根の準備に行き、木が伐られていることを知りました。

3月7日の分根には20名弱のお申込みを頂いており、それまでは伐らないお約束でした。また、伐採する際は立ち会う話にもなっていたようです。

思うことは色々ありますが、鳥栖漆と関わって日が浅い私は当事者の方と直接お話ししたことがなく、仔細については正直分からないことが多い為これ以上の言及は控えます。


漆は掻き終えたら伐採するものだと思いますが、鳥栖漆は20年前に鳥栖漆会会長 渡邉正美さん(道具の多く美や)らの手によって植えられ、所謂 養生掻き というかたちで漆を掻きながら育ってきました。
多くの漆掻き体験者を受け入れてくれた木肌は傷だらけで掻ける隙間も僅かな状態ですが、なんとなく鳥栖漆はずっとそこにいてくれるものだと思っていました。

鳥栖漆は長い間 人知れず育ち、一昨年たまたまSNSを通じて僅かに認知されたのをきっかけに関心のある人が集まるようになりました。
木が人を呼び、静かな山頂に九州内外から人が訪れ、沢山のご縁を繋いでくれています。



木が伐られていたことに衝撃を覚えつつ、この日は朝からの分根の準備作業を終え、夕方暗くなる頃帰路に着きました。

皆と別れて一人になると、急に悲しさが襲ってきます。
とうとう運転出来なくなり、暫く路肩で休みました。


家を建てる時に地鎮祭をするように、木を伐る時もご神事があるようです。ウルシノキが通常その様にするかは分かりませんが、現在生えている鳥栖漆(特に美ま勢の元の木)はシンボルツリー的な存在で、私達もこの木を大切に感じていました。
樹皮を無理やり剥がした様な箇所もあり、素人目にも綺麗な伐り方ではなく、涙もろいのも手伝って痛々しい姿に平常心が保てません。

分根を控える「美ま勢」の元の木


鳥栖漆との付き合いは僅か1年半ですが、この木には不思議な力がある様な、大げさにいうと何か大きな力に動かされているような気がしていました。


渡邉さんの言葉を借りれば、

「漆がそうさせている」

と、本当にそうに感じることもあります。

2月の休眠期間だったので、恐らく木はまだ枯れていないと思います。
でも、次に行ったらブルドーザーでも入って土ごとひっくり返ってるかもしれないな…と身構えています。

20年ひっそり育った木が、伐られる一年前に俄かに人が集う場となり、分根したり葉でお茶を作ったり(鳥栖市のカフェおおきな樹さん特製!)、人の輪を繋げ楽しませてくれました。

伐られることを察知して人々を呼んだ…?
そんな風に感じてしまいます。



余談

漆の種はそら豆の様な形だと思っていましたが、この日メンバーのMさんが拾った種は全部ハート形でした。

「美ま勢」元の木から採れた種


分根も無事に終え、この鳥栖漆の木は近い将来根こそぎ無くなるかもしれません。

改めて、

今までお疲れ様でした。

沢山の人を漆の輪で繋いでくれて有難う。

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