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出向者給与負担における損金算入の条件と留意点

Q1: 出向元法人が負担する出向者の給与は、全額損金に算入できますか?

A1: 原則として、出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填する形で支払った給与については、損金算入が認められます。ただし、給与負担額が曖昧で具体的な較差額を算出していない場合、寄附金と認定される可能性があります。


Q2: なぜ給与負担額が曖昧だと寄附金とみなされるのですか?

A2: 単に給与負担を折半(例: 50%)するなどの内容の協定書では、経済的合理性がないと判断される可能性があるからです。これにより、出向先法人(子会社)への利益供与とみなされ、税務上の寄附金認定を受けるリスクがあります。


Q3: 寄附金認定を受けた場合、どのような問題が発生しますか?

A3: 寄附金として認定された場合、その支出は損金に算入できなくなります。さらに、過去の裁判例では、子会社支援を目的とした給与負担が寄附金とされ、損金算入が否認された事例があります。


Q4: 損金算入を確実にするためには何が必要ですか?

A4: 損金算入を確実にするためには、以下の対応が必要です。

  1. 具体的な較差額の算出: 出向社員ごとに、出向元と出向先の給与規程を比較して明確な較差額を計算する。

  2. 協定書の内容を明確化: 単なる折半ではなく、A社が負担する較差額を明記した協定書を作成する。

  3. 合理性の確保: 協定書が、子会社支援ではなく、出向社員の待遇調整を目的としたものであることを示す。


Q5: 経営不振の子会社に対して給与負担を行った場合でも損金算入は可能ですか?

A5: 一部可能です。法基通9-2-47の注釈によれば、経営不振による賞与の補填など合理性が認められる場合は損金算入が可能とされています。ただし、給与負担額が具体的かつ合理的であることが前提となります。


Q6: 具体的な事例を教えてください。

A6: 過去の裁判例では、以下の理由で寄附金認定がされました。

  • 子会社の給与規程や較差額が明確ではなかった。

  • 子会社にプロパー社員が存在せず、給与規程もない状態で、給与負担が合理性に欠けていると判断された。

  • 子会社支援を目的とした給与負担であったと認定された。


Q7: 損金算入を確保するために出向元法人が取るべき対応は?

A7: 出向元法人は以下を実施すべきです。

  • 出向社員ごとの具体的な較差額を明確に計算する。

  • その較差額を基に協定書を作成し、負担額を明記する。

  • 経済的合理性を担保した取り決めを行い、寄附金とみなされないようにする。




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